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あの頃のメロディ  作者: 星利
2.<青い春の日>
14/19

夏の終わりは黄昏を運んで


「い、生きてる…?!」


ゆっくりと目を開けると、細身だがしっかりした筋肉質の腕に抱えられ、私は歩道に倒れ込んでいた。


――そこでまた、期待してしまった私は最低だ。


そこにいたのは、速水君だった。


「やぁ、…無事で良かった…。立てる?」


彼は、命がけで私を救ってくれたのだ。それなのに、私の口から出た言葉は絶対零度のもの。


「な~んだ…。(さわしたくん)じゃなかった。」


私の言葉を聞くなり、速水君の目が少し冷たさを帯びた気がした。しかし次の瞬間には、顔をクシャっとさせて笑う。


「ごめんね、沢下じゃなくて。…もう、帰ろっか。僕は、ここで。」


返事を待たず、よろめきながら、速水君は闇夜の向こうへと消えていってしまった。



「私の、バカ…。普通、そこは"ありがとう"でしょ…。」


何故、速水君がそれほど私に優しくしてくれるのか未だに分からない。けれども、今までずっと親切にしてくれたのに、私はいつだって冷たくあしらってきた。



「ごめん、なさい…。」



そうして、今年の花火大会は終わった。花火大会が終わると、急速に夏の終わりへと向かっていくように感じる。


あれだけ暑かった毎日が、少し涼しさを帯びていく。蝉の声から、だんだん鈴虫の声へと変わっていく。


「今年の夏は、花火大会以外ほとんど1人だったな…。」


私は図書館の窓際で頬杖をつきながら、沈んでいく夕日をぼんやりと眺めていた。



あれは、何だったのだろう。


――「ケガとかない?」と微笑んで、手を差し出してくれた沢下君。


私の席にたむろいているヤンキーグループを追い払い、「野崎さん、おはよう。」と爽やかに挨拶してくれた姿。


「試合とか出るから、また観に来いよ!」と言いながらニコッとしていたこと。


それから、…「の~ざきさん♪」と、おせっかいだけれど優しく接してくれた速水君――。



一体、何だったのか。全ての出来事は、私の妄想に過ぎず、泡沫の夢だったのだろうか?


いや、でも…。速水君が私の髪飾りにそっと触れた時の感触と、残る微熱。そして、黒田さんと沢下君を見かけた時の心のざわめきは、痛いほど残っている。…ずっと、消えない――。



速水君に関しては自分のせいだし、沢下君に関しては()()()()()の幸せだと考えると…。


「あぁ…。」


窓の外では、沈んでいく夕日を背景に、田んぼ道を電車が走っていく。


――そんな、懺悔と虚無感に溢れた、夏の終わり。



季節の移ろいに心を痛める日々を越え、やがて2学期の始業式を迎える。


そして、事件は起こった。


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