止まない雷雨
家に辿り着くと、自分の部屋にこもり、私は1人、渦巻く感情と闘った。
(さっきのこと、嘘よね…、)
「誰か、――誰か、嘘だと言ってよ!」
無意識に部屋のドアを叩いていた。涙が止まらない。
秋子ちゃんが、中学でいじめられた?親の離婚?整形?
「嘘だ、嘘だ――!」
信じたくないし、それが真実であるかどうかも分からない。けれども、嘘をついているようには見えなかった。
自分を助けてくれた秋子ちゃんが、そんなにも辛い目に遭ったのに、私は何も知らず、"性悪女"だなんて思っていた。それに、悪口を言う周りの人達を、止めることなく見ていた。
『かすみちゃんは、優しすぎるとこが、たまにキズやで。』
脳裏に蘇る、"ふふっ"と優しく微笑む秋子ちゃんの姿。
「うわぁぁ!」
すると、凄い勢いでドアが開いた。
「うっさいぞ!黙らんかい!!」
そこにドンと立っていたのは、私の家に住んでいるおじさん――元父。
「誰か、嘘だと言って…。」
無視して泣き続ける私。すると、突如としておじさんに胸倉を掴まれた。
「うっさい言うとるやろがゴルァ!
はよ、家出て行け!」
叫ぶおじさんの目は、血走っている。いつもそう、怒鳴る時は決まって真っ赤な目をしているのだ。
そして、次の瞬間、バシッと思い切り頬を叩かれた。
「うっ、うっ…。」
「お前なんていらん、死ね、死んでくれ!」
叫ぶおじさんの後ろに、重そうなフライパンを持ち、息を切らしたお母さんが立っている。
「やめて下さい!
離婚してもなお、家に居候し続けているだけのあなたに、子供を叱る権利はありません!」
「ア?何ぬかしとんじゃこのボケ!」
「2人とも、やめてーーっ!!」
これは、私が小さい頃からよく起きる騒動。
仕事が休みの時、隙あらばストレス発散に私を怒鳴りつけるおじさんによる暴力と、それを必死に止めようとするお母さん。
何もかもがぐちゃぐちゃだ。いつしか、外は嵐で風がビュウビュウ吹き荒れている。激しい豪雨と雷なのに、それにも負けない両親の喧嘩の声。
私は耳を塞ぎ、ただ嵐が通り過ぎるのを待った。




