青天の霹靂
翌日、私は自分の最寄り駅の近くにあるという、真由ちゃんの家へと向かった。
梅雨上がりの雫に濡れた夏草が、青空の下、線路で揺れている。
家に着いたので、少し緊張しながら、インターホンを押す。ピンポーンと軽やかな音が響く。
「あ、花澄ちゃん!
玄関入って階段上がってきて!他の2人ももう来てるしなぁ~!」
タッタッと階段を駆け上がると、"♡まゆ♡"というボードの掛かった白い木のドアを発見した。
ドアを開けると、そこはいかにも"女の子"って感じの部屋。
白を基調とした壁に、ピンク色で揃えられた小物の数々。ピンクのふわふわしたテディベアもたくさん置かれている。
「花澄ちゃん、おはよー!」
丸い白テーブルを囲んだ3人が、こちらを見て笑っている。学校とはまた違った、和やかな雰囲気だと思った。
「おはよう。」
「じゃあ、期末テストの勉強会ということで、まずは勉強しよー!
お菓子とジュースは好きなだけもらってなぁ!」
真由ちゃんが、元気そうに大きな声で言った。
カリカリカリ…
1時間が経過した時、「あー、疲れた!」と伸びをした真由ちゃんを筆頭に、皆シャーペンを机に置いていく。
「じゃあ、本題といこ!
見てびっくりしんときや?
黒田さんの中学時代。」
そして真由ちゃんは、おもむろに本棚から卒業アルバムを取り出してきた。
「あ、これこれ!」
彼女が指さした、"黒田 秋子"の文字。
その顔写真を見た途端、私の頭は真っ白になった。
(え、…?!)
苗字は"黒田"なのに、それはまさに、小学生の時に私をいじめから救ってくれた優しい少女――田中 秋子ちゃんだった。
「エェー、めっちゃ普通。しかも黒髪やし!」
「素朴だねぇ~。」
他の3人の会話は、2割ほどしか頭に入ってこない。頭が思考停止状態だ。
「真由もあんま知らんけど、ここだけの話、親の離婚で苗字が変わったらしいんよ。
それに、いじめられたのもあって、高校入る前に整形したとか。」
「えぇー、闇深~!」
「整形してたんだ~。」
ショックすぎてその場にいられなくなった私は、バッと立ち上がった。
「どうした花澄ちゃん?」
「ちょ、ちょっとごめん!
急用を思い出しちゃったから、帰るね!お邪魔しました!」
私の挙動不審な態度に目を丸くしている3人をよそに、真由ちゃんの家から飛び出した。
◇◆◇◆
外に出ると、空は青いのに、さっきまでの穏やかさは微塵も感じられず、土砂降りの雨と雷で荒れ狂っている。
私は、その中を、傘も持たず走って、走った。
ただ、考える時間が欲しかった。…1人に、なりたかった。




