8つめ
「か、神柳を 殺して。」
1.
いつも通りの学校。
いつも通りの日々。
そして、相変わらず怖い女子。
何か、気に入らないことがあればすぐいじめる。
まぁ、男子にはあまり関係はないけど。
いつも通りじゃなくなったのは、君が転校してきてからだ。
「転校してきました。橋本 柑菜です。」
橋本さんは、ずっとマスクを付けていた。
でも、目も鼻も どれもがかわいらしく愛らしい。
もちろん、男子からはかなりモテてていた。
そして、女子達はイライラしていた。
特にボス的存在の神柳 晴奈はとても怖い形相をしていた。
それもそうだ。
自分の好きな人が橋本さんを見て可愛いと言っているのだから。
でも、中々マスクを外さない橋本さんを見て 男子は怪しがっていた。
「あいつ、口裂け女だったりしてー」
など、からかっていた。
でも僕は橋本さんを好きになった。
一目惚れだ。
2.
いじめは、どんどん加速していった。
それでも橋本さんは無表情だった。
そのせいか神柳達の怒りは益々、膨れ上がった。
僕は隠れて、コソッとハンカチを渡した。
水で濡れていたからだ。
「ありがとう。高城くん」
僕はコクっと頷いて思った。
僕の名前、知ってたんだ。
それだけで心はウキウキとした。
廊下を歩いていると、二階堂さんに声をかけられた。
「殺してもらう人は神柳 晴奈にして」
小声でボソッと僕の耳の近くで言ってきた。
「え? どういうこと?」
二階堂さんは知らん顔でスタスタ歩いていった。
3.
「高城くん。今日、家に親いる?」
上目遣いで聞いてきたのは、橋本さんだった。
「え、いないけど。」
今日も帰りは、夜中の1時を過ぎるだろう。
これって、もしかして。
「今日、高城くんの家に行ってもいい?」
「うん!」
やっぱり!
嬉しさというか緊張が頭をよぎる。
橋本さんって、ちょっと大胆だな。
橋本さんと一緒に僕の家へ向かいながら、他愛のない会話をする。
その道中に夜ご飯の材料と一緒に見るDVDを借りた。
夜ご飯は橋本さんが作ってくれた。
カレーライスだ。
好きな人が作ってくれた料理など、美味しいに決まってる。
「すごい、美味しいよ」
笑顔でそう言うと、橋本さんは喜んでくれた。
その後、橋本さんに食器を洗ってもらっている時に僕は風呂に入った。
今日はちゃんとしっかりと洗った。
橋本さんが風呂に入ってる時は、僕はDVDの準備をする。
もう、夜の9時半だ。
DVDは去年大ブレイクした、ホラー映画だ。
僕は怖いものは苦手だけど、悟られまいとしていた。
橋本さんは、全然平気そうだ。
ホラー映画は長かったけど、ストーリーは面白かった。
「ふぅ。面白かったね。もうそろそろで12時だし、寝よっか」
橋本さんは、僕を見てすぐ床へと押し倒す。
「は、橋本さん!?」
両手をぎっしりと掴まれる。
とても、女の子のような力ではなかった。
「ど、どうしたの!?」
ギリギリと痛みが増してくる。
何がなんだか、混乱していた。
「誰か、殺してほしい人を言って」
「え?」
「殺してほしい人を言って!」
橋本さんは、怒鳴っていた。
「で、でも」
「ほしいの。あとちょっとなの。あとちょっと…」
橋本さんの目は影でよく見えなかったし、表情もマスクで読み取れない。
僕はゆっくりと、言った。
「は、神柳を 殺して。」
僕の殺してほしい人は、橋本さんをいじめる神柳だ。
橋本さんは、ゆっくりと僕の両手を離した。
僕は腰を上げた。
そこにいたのは、不気味な笑みをした人形しかいなかった。
僕の意識は、だんだんと薄れてゆく。
橋本さん、好きだよ。
4.
タンタンタン
夜12時すぎ。
誰かの足音で目を覚ました。
「誰?」
私は灯りを点ける。
「気のせいか」
そこには、誰もいなかった。
微かに、何かの気配は感じるが気のせいだと思った。
私は、また電気を消し布団の中へと入った。
そして、目を瞑り眠りへつく。
瞬間、首に痛みがする。
首に触れると、何か濡れている。
血だ!
私は灯りを点けようと手を伸ばす。
だが、灯りは点かない。
「何、これ!?」
私は周りを見渡す。
異様なくらいの寒さだった。
布団の上に、すぐ前に何かの影がある。
人形?
一瞬だった。
包丁を腹、目掛けて刺してきたのだ。
「うえ。 ごほっごほっ。 おえぇぇ」
血が熱く、ダラダラと垂れてくる。
痛い。痛い。痛い。
声さえ、出なかった。
「神柳 晴奈 バイバイ」
意識は、もうなかった。
5.
「待ってたよ」
お人形さんは、こちらを振り向く。
「バイバイするのは、お人形だよ。」
お人形さんは、きょとんとしている。
これで、2度目だった。
二階堂 亜美は持っていた包丁でお人形さんを刺した。
「あ、 あぁ。 いや、いや、いやだあああぁぁ!!!」
お人形さんは、苦しそうにもがいていた。
きっと、お人形さんは 橘 美空の事しか覚えていないのだ。
お人形さんは、人間になりたいのだ。
それでも、お人形さんが人間になれることはない。
今度こそ、次こそは絶対に止めなくては。
殺しても、殺しても、お人形さんは諦めず また繰り返すだろう。
次回で最終話です。
ありがとうございました。




