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虚飾の檻  作者: ヒヨ子
羨望の果実
2/8

***

女の子はなんでできてるの?

砂糖、スパイス、素敵な物。





あの頃の私は、まだ平凡な、というよりも普通に貧乏な大学生だった。


「長野の田舎から出てきた私には正直、全てが眩しかった。

正直、勉強に来てるはずなのにブランド物のバッグ持って闊歩する学生も、流行のファッションに身を包んで歩く学生も信じ難かった。


そんな私が今じゃコールハーンの靴を履いているんだから運命って皮肉だと思う。


忘れもしない入学式、チャラい男子集団が差し出すチラシ、他の子が10枚とかも貰ってる中、私は5枚しか貰えなくてさ。

長野の進学校の中ではそれなりにカワイイ言われてきたし、やっぱり自分のどっかには自信があったのかなー。やっぱ。」


仕事が完璧にオフの日の蛍は時々、堰を切ったように私に取り留めのない昔話をする。

そんな時のジャージにTシャツ姿ですっぴんの蛍が本物なのか、ハイブランドの靴を履き、プロのメイクを施されカメラに向かって顔が完璧には崩れない程度の微笑みを向ける彼女がフェイクなのか私にはわからない。


15畳のリビングでこうやって彼女とただ二人で向き合っていると親友の筈なのに不思議な気持ちになる。

彼女の肩越しに広がる東京の夜景は正直、見慣れてしまって今やただのチカチカした背景と化している。

カーテンでもつければ、と言いたいくらいだ。


「そのころからなんとなく、私には成り上りたいって気持ちがないわけではなかったよ。」


うんうん。と、流し気味に聞く。彼女の“お仕事用”には酒のツマミといったらアヒージョだのエディブルフラワーが乗ったサラダだのがお目見えだが今回のダチ同士の宅飲みでは砂肝にシャトーマルゴーだ。こんなもん彼女のブログには絶対登場しないだろう。


蛍こと山野正美とはルームメイトでもあった事が災いして、彼女が芸能界に飛び入った頃には私は金持ちのお嬢だった事もあって大分援助したんだ。


まるで同性のヒモかパトロンみたいにね。


今や私の倍は稼いでいる彼女から酌されて飲む酒は分不相応な気もするしありがたく飲んどけって気にもなる。

仄暗い夜をバックに途切れない電気の群れと最上階からの展望はカップル相手にはいい見世物かもしれない。


「最初は不思議にも思ったけど、やっぱり私は運がいいよ。金持ちな叶に会ってなかったら私、ここまで来れなかった。最初から躓いてたと思う。」


ノーメイクな彼女を、同性でも美しい。と思った。

白い皮膚は私が出会った当初よりより白く、週2でリタッチとトリートメントを欠かさない黒髪は漆黒の闇夜のように伸び、パッチリした二重は今流行りに沿って生意気に艶かしく程よい力強さを湛えている。


目、は、芸能人にとって大切な要素だ。長い睫毛は一般人の女の子がどう小細工したって無理なほど欠かさないマツエクを施されたおかげで完璧な反りを誇っている。


とりわけ日本人離れしたその骨格だ。足は長く手はほっそりとしている。

入学当初から美しいな、とは思っていたが、正直財とは女の美貌にこうも影響を与えるものなのか。


大学に来たばっかりの頃、親が社会勉強だと無理やり入れられた寮のルームメイトの容姿に心躍った反面、その壊滅的なセンスに落胆したのも覚えている。

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