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四番街の弓姫は新米団長  作者: 日咲ナオ
第四章 異国
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終章

 王城までの道のりを、行きと同様、ガタガタと馬車に揺られて進む。

 途中で、ウルスラに早馬の手紙が届けられた。それを読んだ瞬間の、やけに苛立った顔をしたウルスラを、ベアトリスは忘れられないでいる。

 手紙を黙読した後、内容は一切語らなかった。けれど、馬車を急がせたことが、なおさら忘れられなくしたのだろう。

 せっかくうまくいったはずなのに、全体にピリピリした空気が漂っている。まさに、暗雲が立ち込めているような気分だ。

「……フィエリテ王国もリュールング共和国も、これでしばらくこっちに口出ししないでくれるだろうけど……ウルスラは何でイライラしてるんだろうね」

 馬車の中で、げんなりとタデウスが呟く。

 この場にいなくても気になるのだ。同じ馬車にいるメルルたちは、どれだけいたたまれない思いをしているのだろうか。

「あの手紙が届いてからですけど……何も言わなかったので、内容まではわからないんですよね」

「よくない知らせだったことは間違いなさそうですが」

 心なしか、オリオンも怯えているようだ。

「しかし、エリカの団長にも言わないってことは、ずいぶん深刻そうだね」

「そうですか? 本当に大変なことが起きてて、あたしが力になれるなら、ウルスラさんはちゃんと教えてくれると思います。多分、困ったことだけど、あたしじゃ助けにならない話なんだと思います」

 その話がどんなことなのか、まったく想像できない。何しろ、ベアトリスでは手助けができないことが、とにかく多いのだ。

 たとえば、料理関連であれば、間違いなく手出しできない。裁縫はどうかと言われると、ウルスラ以上にできるはずがなかった。力仕事にしても、断然ウルスラの方が戦力になる。

 しかもウルスラは、言いたくないことは決して口にしない。ベアトリスと違い、うっかりもないのだ。

 いったい、どれだけ強靱な精神力をしているのか。時々、感心してしまうことがある。

「オーソンさんに膝蹴りをしたことだって、タデウス殿下が教えてくれなかったら、絶対に今もあたしは聞いてないままです」

 あれは間違いなく、本当は知られたくなかった話だろう。ベアトリスはそう、強く確信している。

 すっかり呆れた顔で、タデウスは小さく嘆息した。

「……エリカの団長は懐が広いのか、本気で何にも気にしないのか、たまに判断に困るね」

「気にならないわけじゃないですよ? ただ、言いたがらないことを無理に聞き出すのは、あたしが嫌なだけです」

 自分がされたくないことを、他人にもしたくない。それだけだ。

 本音を言えば、エリカ騎士だけでなく、オリオンにも聞きたいことはある。けれど、その結果、ギクシャクしてしまうのが怖い。

 せっかく近づいた距離が、また大きく離れてしまう。そうなるのが、単に嫌なだけなのだ。

 はっきり言ってしまえば、ただの臆病者に過ぎない。

 きっぱりと言い切ってから、ベアトリスは窓の外へ視線を向ける。

 見慣れた景色は、もうじきフロース王国の王城に到着すると告げていた。


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