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四番街の弓姫は新米団長  作者: 日咲ナオ
第二章 初仕事
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序章

 ベアトリスは、すっかり緊張した面持ちで、城門前に立っている。

 メイベルとヴァーノンに挟まれていることなど、ちっとも気にならない。そのくらい、緊張している。

 これから、エリカ騎士団は、初めての任務に当たるのだ。

 第三王子の婚約者である、隣国アレグリア王国の第一王女シンティアが、遊びに来るという。彼女と、同行の侍女たちの護衛。それが、今回の仕事だ。

 街を突っ切って走ってくる、立派な馬車。それが、メイベルの目の前で、ピタッと止まる。

 バンッ、と豪快にドアを開けて、少女がひょいと顔を覗かせた。

 年の頃は、十五、六歳か。ふんわりした、やわらかそうな金色の髪が揺れる。くりっとした、綺麗な青色の瞳は、怒っているのか。わずかに目尻がつり上がっている。表情も、どことなく不満げだ。

「さっさと手を貸しなさい。まったく、相変わらず気が利かないんだから」

 彼女の視線がメイベルをとらえ、そうのたまう。

 メイベルはちょいと肩をすくめて、数歩、前に出る。彼女に手を差し出し、馬車から降りる手助けをした。

「ところで、今回もあなたが護衛するんじゃないでしょうね? わたくし、リナリア騎士団は大っ嫌いなのだけれど」

「そういうわがままを言う子供のために、質はともかく、わざわざ女の子ばかりの騎士団を新設してあげたのよ。感謝なさい」

「あら、そうなの。え? じゃあ、そこの小さい子が、まさかと思うけれど、新騎士団の団長なの? わたくしと変わらないくらいじゃなくて?」

「そうよ。言っておくけれど、家柄はかなりのものだし、あなたより年上。敵に回すと恐ろしい男がついているから、いじめるのはほどほどになさいね?」

 シンティアはぷくっと頬をふくらませる。そういう仕草は、彼女をひどく幼く映す。

「わたくしはいじめなど、しなくてよ!」

「あら、わたくしに何をしてきたのか、今すぐ思い出させてあげてもよくってよ?」

「あなたにしかしないって言ってるのよ、この造花!」

 ビシッと言い放ったシンティアに、メイベルは冷ややかな視線を向ける。ベアトリスの位置からは、かろうじて、メイベルの凄惨な笑みが見えた。

「……あなたには、己の立ち位置というものを、一から教えなくてはならないようね」

「ひぃっ……」

 小さな悲鳴をあげて、シンティアはあたふたと、ベアトリスに駆け寄る。

「あ、あなたが護衛の団長なのよね? いいこと? 基本的に、わたくしからつかず離れず、日がな一日、きっちりついてきなさいね?」

「ベアトリスはあなたと違って、毎日が忙しい子でしてよ。わがままにつき合わせてばかりでは、嫌われますわ」

 しっとりと囁かれたメイベルの言葉に、シンティアはグッと声を詰まらせた。

(……ひょっとして、シンティア様って)

「えっと、あたしでよければ、話し相手くらいならなりますよ?」

 キラキラと輝くシンティアの瞳に、予想が正しいことを確信する。

「ベアトリス、甘やかしちゃダメだよ。甘ったれのシンティア王女には、ビシッと、超厳しいくらいでちょうどいいんだから」

「そうそう。この子はそれこそ、ベアトリスと変わらないくらい、周囲が甘やかしていてよ」

 どうやら、他の団長たちにはなじみのある王女らしい。

 だが、いきなり厳しく接するなど、とてもできそうにない。自分らしく、精一杯、護衛を務める。それがせいぜいだ。

「ひどい! これだから、レーニア王子もヴァーノンも大っ嫌いなの!」

 シンティアが叫んだ瞬間。ヴァーノンが彼女の口を両手でふさぎ、メイベルが頭に拳をがつんと叩き落とした。

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