表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

きっかけ

いつだっただろうか。彼女との奇妙な関係が始まったのは。

俺と彼女は昔から今まで一緒の学校に通っている幼なじみだった。

そんな彼女は大学生になり、講義のない土曜の昼間に、突然こんなことを言い出した。

「今日からさ、一緒に暮らさない、良二くん?」

「突然何を言い出すんだよ、香奈」

昔からの幼なじみの突然の一言に、俺は彼女が頭がおかしくなったのかと思って、

冷静に聞き返した。

「良二くん、良二くんはいつからそんなに冷たくなってしまったの……」

よよよ……という効果音がぴったりに、香奈がわざと崩れ落ちる。(もちろんフリであるが)

わざとらしい香奈の演技にため息をつかざるを得ない。香奈は昔からこの演技で俺を何度も陥れてきたが、

さすがに今回ばかりは納得することができない。

誰だって、昔からの知り合いに急に一緒に暮らそうと言われたら不思議に思うはずだ。

「理由を説明してくれ。じゃないと俺も納得できない。それに理由を言ったら納得して一緒に暮らすこともあり得るかもしれない」

俺の言葉を聞いた香奈は瞬時に立ち上がった。

おそらくこれを見越して崩れ落ちる演技をしたのだろう。

「良二くんの家さ、大学に近いじゃない?だからさ、通うのに便利だろうなーと思って」そう言ってはにかむ香奈。俺たち二人が通う大学、宮恵きゅうけい大学には、俺の住んでいる家から15分ほどである。対して香奈の住む家は大学まで1時間ほどかかるそうだ。

俺は香奈の家には行ったことがないが、香奈は今一人暮らしをしているらしい。

俺も香奈と同様、一人暮らしをしている。

香奈と少し違うところは、俺は一軒家で一人暮らしをしているのに対して、香奈は賃貸のアパートで独り暮らしをしているということだ。

半分は両親が、半分は俺が死に物狂いでバイトをして費用を負担しあった。

香奈の質問への返答はすでに決まっていた。

手を合わせてお願いのポーズをしている香奈に俺は言った。

「いいよ、断る理由も無いから」

「ほんとに!?」

「ああ」

そう、断る理由は一つも無い。香奈は幼なじみとして贔屓目に見ても可愛い見た目をしているし、

気立てもいい。そして俺は香奈にこの家に一緒に住むにあたって条件を付けた。

「ただし、家事を分担するのと、俺の部屋に許可無く入らないこと。いいな」

「うん、大丈夫だよ」

香奈は了承すると、素早く椅子の上から立ち、

「荷物を取りに家に戻るね」

と言い、嵐のように家を飛び出して行った。香奈の奴、忙しないな。飛び出して行った香奈を見送り、俺は夕飯を作ることにした。ご飯を作ることにかけて俺には三つのこだわりがある。一つ、見た目を綺麗に。二つ、変な挑戦はしない。三つ、出来るだけ良い食材を使う。この三つを守って料理を作ることが、俺の料理に対するポリシーだ。

そして俺は25分ほどでカルボナーラを作り終え、香奈の帰りを待つ。俺の予測通りであれば、あと10分ほどで帰ってくるはずだ。「たっだいまっー!」

テンションが高いのがわかる声で香奈が帰宅した。帰宅?で良いのだろうか…。それはともかく、香奈の帰りを出迎えないわけにもいかないので、玄関へと向かい、声を掛けた。

「おかえり、香奈」

「ただいま、良二」

そんな香奈の返事を聞いて、まるで夫婦のようだなとも思ったが、幼なじみ相手にそんなことが有り得るわけが無いので、考えるのをやめた。「首尾はどうだ」

俺がそう尋ねると香奈は、右手でピースサインをして答えた。「お母さんとお父さんにも許可取ったし、アパートも解約してきたから、完璧だよ」「荷物は?」

「今お父さんに車で運んでもらってる」

香奈のお父さんには遠いところまで折角来て頂くので、さっき作ったカルボナーラを食べてもらおう。感謝の意も込めて。そんなことを考えているとインターホンの音が鳴った。

恐らく香奈のお父さんであろう。そう思ってドアを開ける。

「やあ、良二くん。久しぶりだね」

にこやかな笑顔を浮かべて挨拶してきた香奈のお父さん、

本田稔(ほんだみのる)さんは、俺に軽く会釈をしつつそう言った。稔さんと会うのは高校卒業以来である。大学生となった今ではたまに電話で香奈の様子を確認するくらいの付き合いだ。「お久しぶりです。折角なのでご飯食べて行きませんか?」

「いいね。ご馳走になるよ」そう言うと稔さんは靴を脱いで部屋に入ってきた。俺はキッチンへと戻り、作ったカルボナーラをとろ火で温めなおす。数分したら火を止め、皿を戸棚から取り出しカルボナーラを盛りつける。最後に軽く胡椒をかけて完成だ。キッチンからテーブルへと皿を運び、3ヶ所に置く。そして俺は二人に声を掛ける。

「できましたよ」

「ありがとう、良二くん」声を掛けられた二人は席へと着いた。冷蔵庫からお茶を取り出してきて、俺も席へと座る。そして3人で手を合わせた。

「「「いただきます」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ