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「さっき川上くんが言ってた冬ちゃんの従者って僕も知ってる人……?」
安倍は聞いてもいいかと聞いときながら質問してきやがった。
何でお前はそんなに笑顔なんだ、こっち見んな。うぜぇ。
「多分皆さんご存知だと思いますよ? 無駄に目立つ者が多いですからね」
「え~、誰々? この学校にもいたりするの?」
「ええ、いますよ? 貴方が今熱烈に追っている紅牙咲もその一人だよ」
「あれ? バレてる……ってあ!! もしかして川上君が紅牙咲君の情報操作してたりする?」
「うん。まぁ僕一人ではないんだけど、君もなかなかしぶとく粘るから思わずPCに自作のウィルス送っちゃった。ごめんね?」
「全然いいよ~。久しぶりにあんな手ごわくって面白かったしね♪ でもあのウィルス自作なんだ凄いね~。僕どうしてもワクチンができなくって悔しかったんだけど、あれってどうなってるの?」
「あ、本当? 意外と自信作なんだ♪ あれはね……」
周りがざわついてて会話が聞かれてないとは言え犯罪をどうどうと語るな。
そして何故そこで意気投合するか、訳がわからん。
……と、こっちは問題ないみたいだが他の奴は、と、何で馬鹿とモジャが睨み合いになってんだ。
何があってそうなった。メンドくせぇな……。
「俺が誰に仕えるかなんて、てめぇには関係ねぇだろうが!! これ以上御主人様の事を悪く言うならてめぇ絶対潰すっ!!」
「だからそんなのおかしいっていってるだろ?! 薫樹は冬刀に騙されてるんだ! だけど俺が助けてやるから安心しろよな!!」
うん。やっぱめんどくさい匂いしかしないな。
取り敢えず家の名にビビって暫くは平穏になるだろうし、俺もう帰っていいか?
「やっぱり冬刀が悪いんだ!! 誰にも構ってもらえないからって権力振りかざして言うこと聞かそうとするなんてダメなんだぞっ!! 」
何で俺がお前みたいだと思われてるのかが、訳わからん。
構ってちゃんはテメェだろうが。俺は一人でのんびりと過ごしてぇっていつも言ってんだろうが!
「なぁ、そんなに淋しいからって権力を使って人に言うこと聞かせるなんてダメなんだぞ? 薫樹のこと開放してやれよ、そんなことしたって誰も冬刀のことちゃんと見てくれないんだぞ?」
てか、何自分に酔ったこと言ってんだコイツ。別に俺が脅してるわけじゃねぇし、権力使っていいんならこんな変態なんかよりもっと可愛い女の子はべらせるっつうの。てか、こいつ生徒会に迫られてた時男なんか好きにならないとか、友情だとか、真っ当な道に戻してやるとか偉そうなこと言ってたらしいのに、見た限りだと確実に馬鹿に惚れてんだろコイツ。
「だから何時寂しがった。それに俺が何でわざわざその馬鹿を脅さねえといけねぇんだっつうの。嘘ばっか言ってっとボコんぞ」
「そうやって薫樹も脅したんだろっ!! そんな酷いことばっか言うなんて最低だっ!!」
こいつ本気で喚くしか脳がねぇな……。俺の家の話ししても突っかかってくるって、どんだけお気楽な頭してんだ。
本気で自分のことしか考えてねぇんだなこいつ。俺のこと知った生徒会の連中だって空気読んで黙りこくったってのに寒い自論並べてんじゃねぇよ、本気で。
「ふふ。本当に転校生君はどこまで行っても王道だよね♪ 自分の矛盾に気づかないし、本から出てきたみたいに同じことしてるし……。」
「あ゛? お前それに喜んでたのっつうのに何言ってんだ」
川上と話してたはずの安倍が隣で話しかけてきたが、何時も楽しそうに男と男の恋愛話をしている時とは違って笑っているはずなのにどこか冷たさを感じる。てか何でこいつが冷めてんだ。俺を自分の妄想に尽く登場させてニマニマしてるっつうのに。
「ん? だってそれは僕の萌に冬ちゃんはモロ反応したからね♪ 強気受けは何時でもうウェルカムだよ☆ ただ、ああいう王道君は見てて子供っぽいっていうよりただの我が儘君にしか見えないから、本の中では好物なんだけど現実では人として関わりたくない人種ってだけだよ~」
それは俺にどう返して欲しいんだこのバカは……。
楽しくねぇなら笑ってんじゃねぇよ。
「ん。気をつける。……やっぱり冬ちゃんはいいね♪」
いやいやいや。本気で心読むのを標準仕様にしてんじゃねぇよ。




