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平凡な人生に俺は憧れていた。
そう言うのも俺の家が俺が望むような平凡とはかけ離れた家柄で、なおかつ本家筋だったからか、……今で言うチートだなんだというような奴がゴロゴロ排出されるような家だったからだ。それもほぼ皆が皆、美形だという恐ろしい集団で。
そんな中に生まれた平凡顔な俺。
勿論毛嫌いされたとか、虐められたなんて事はなく、それどころか何故か一族の本家に近い血筋の奴らになればなるほど溺愛と言ってもいいくらいに愛されてきた。
それはもう何というかヤンデレ一歩手前的な?
俺の世界が家族と一族しかいなかった時はなんとも思わなかったが、流石に幼稚園に通う年になり外の世界に触れる機会が増えていくと美形集団に囲まれる平凡顔が許せないという分家の奴らや、家族のファンだと言う奴らに嫌味やら嫌がらせ、嫌な視線を受けるようになってようやく家の家族と俺の違いに気がついた。
まぁ、それまで気がつかなかったのもある意味家族に、溺愛という名の世間との隔離をされていたから気がつけなかったんだが、それに気がついてから俺は周りの奴らをことごとく観察することにした。
そして気がついた。
俺の家族のスキンシップは過剰に輪をかけるように過剰であると。
それに気がつくと同時に、それまでの俺の人生は黒歴史として記憶の奥深くにしまい込むと同時に、証拠の排除を徹底的におこなった。
その頃からことごとくかまってこようとする奴らをかわしつつ、何でも自分でできるようにした。
それが俺が五歳の頃。
言ってしまえば自我の芽生えってやつだな。
今思い出してもその頃の俺を良くやったと褒めてやりたい。
まぁ、自我が芽生えた切っ掛けをつくった奴らは何かされてたみたいだが、いい大人がまだ自我もちゃんと芽生えてねぇような奴に手を出そうとしたんだから自業自得だろ。
んで、そこからの俺は元々の性格もあったんだろうが、めんどくさい事を嫌い常に世間の考えられるような平凡を望んで行動するようになった。
何故か俺の家はこれでもかってくらい、常になにかしらの騒動が巻き起こっていたからな。
だからこそ無い物ねだりと言われようと俺は平凡な人生を渇望しているといっても過言じゃない。
そんな事もあり、一族総出の集まりも、一族と縁がある偉いさんに呼ばれるようなパーティーも、出たくはないと家族に交渉して出なくていい権利をもぎ取った。
それと共に一族の者だという事を徹底的に隠し、小さな頃の俺は知っていても今の俺を知る手段をことごとく潰していった。
徹底したかいもあり、俺の顔をちゃんと把握しているのは家族と俺の家や俺個人に仕えている奴等だけに限定させることができ、
だからこそ有名どころが集まるこの学園にもかかわらず、この学園に入って、マリモが来るまで俺は静かな生活をおくれていたのだ。もしそうじゃなければ俺の家に擦り寄りたい奴らが周りを取り囲んでめんどくさい事になっていただろう。
そしてそんな俺個人に仕えている一人が川上貴俊だ。
高校までは静かな学園生活を送りたいと家族に頼んだ時にどうしてもと言われ付けられた、陰ながらの護衛と俺に何かある前に対処する人間の一人でもある。
まぁ、どうでもいい蛇足はあったとはいえここまで言えば聡い奴はわかったと思う。一体何が言いたいのか……。
そう。コイツは俺を守るために同じ学園に通っているはずなのだ。
事前に、俺に迷惑をかけるような奴を、俺に害にしかならない奴を、排除するのがこいつの仕事のはずなのである。
な・の・に。
こいつのマリモが来てからの行動はことごとく逆をいっていたのだ。
俺が絡まれた初日。
こいつは遠くから笑って見てるだけで何もしないどころか、メールで馬鹿にした顔文字を一つ送ってきただけだった。
それから暫く、俺が何とか係わりをたとうと四苦八苦してんのに、その邪魔をしたかと思えば何度も何度もマリモの騒動の中に何故か叩き込んできやがったのだ。
お前本当に俺に仕えてんのかと問いただしたいが、それさえ笑ってのらりくらりとかわしてきやがる。
楽しんでやがるのをまったく隠そうともしない奴の性格は、言ってしまえばドSだ。
どこまでなら大丈夫なのかを計算して、ギリギリを見極めてるのが本気で腹立たしい。
ついでにこいつに俺が困っている姿を見たいと言われたのは、俺に仕えると契約をしたそのすぐ後だったのも腹がたつ思い出だ。
それまでは誠実そうな奴を装ってたのか、俺がそれまであってきた中で初めてまともな人間だと思ったっていうのに、若すぎた俺はそれを見抜けなかったのだ。
ちっ! あの頃に戻れんなら何が何でも阻止するのに……。
誰か青い狸を俺にくんねえかな。そしたらぜってぇ奴の存在ごと消してやる。




