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第8話 再会

浦島一行は豪華なLDプリオの別荘に招かれ、これまた豪勢な食事がふるまわれた。

トム「お味はどうですか? ミスター浦島」

浦「とても美味しい」

トム「それはよかった」

浦「まるでこの世の物とは思えない美味しさ・・ そう。竜宮城にいるようです」

トム「竜宮城?」

浦「いえ・・ 何でもありません・・」

あまりの感激ぶりにうっかり口を滑らせた。

その言葉に日本人スタッフは敏感に反応し、互いの顔を見合わせた。

「今、竜宮城って言いましたよね・・」

「ええ聞きました」

「それに名前が浦島っていうのも・・」

「まさかとは思うけど・・」

「そんなはずないでしょ~」

そんなやり取りが聞こえたような・・

浦「今のはまずかったか」

浦島は反省した。


夜になると、浦島は来客用の寝室に通された。

トム「今晩はここでお休みください」

浦・スタ「なんて素晴らしいんだ」

ベッドに腰を下ろすと、一日の疲れが溢れてきた。

横になり目を閉じる・・

浦「ふー疲れた・・ たっぷり寝よう」

そう思って横になったものの、なぜか眠れない。

ベッドというものに慣れていないためか?

体は疲れているが、頭は冴えているようだ。

しばらくボーとしていたが、寝るのを諦めた。

浦島は起き上がると部屋から出た。

廊下でトムと出くわした。

トム「どうしましたか?」

浦「ちょっと眠れないので、夜風にあたりたいのです」

今は通訳のスタッフがいないので、ジェスチャーで伝えた。

トム「OK。どうぞ」

トムに案内され外へ。

風が気持ちいい。

月も綺麗だ。

月明かりで辺りの様子もよく見える。

トム「気をつけてくださいね」

浦「ありがとう」

何も考えず、しばらくブラブラと歩いていた。

大きく深呼吸をすると体が少し軽くなった。

浦「そうだ。あの島を見に行ってみよう」

突然思い立った。

夜だというのに。

それもたった一人で・・

危険であるのは分かっていたが、気になったのである。

眠れないのはそのせいかもしれない。

浦島は歩を進めた。

やがて辿り着いたのは、昼に来た一番大きな洞窟。

浦「ここはトムさんが危険と言っていた場所・・」

トムの言葉を思い出した。

浦「中の様子を見られないだろうか」

浦島は好奇心を抑えきれず、ゆっくり洞窟内に足を進めた。

その時だ。

中から強烈な熱風が吹き付け、浦島の体を数メートル後ろに吹き飛ばした。

ドスッ。

浦「いてて。なるほど、トムさんの言った通りだ」

浦島は立ち上がった。

浦「いったい中には何が・・」

危険と分かってはいるものの、なぜか引き返そうとはしない。

洞窟の中を凝視する。

しかし、昼間でさえ見えなかったのに、夜はなおさらである。

浦「サーチライト持ってくればよかった・・」

そんな事を考えていた時だ。

「うらしまさん」

声がした。

浦「え?」

洞窟内からだ。

まさかとは思ったが。

「やっと会えましたね」

確かにそう聞こえた。

次の瞬間。

中からドデカイ首が現れた。

浦島の目の前に現れたもの、それは亀の首だった!

浦「うわあああああああ!」

浦島は驚きのあまり尻もちをついた。

「1600年ぶりですね。私が分かりますか?」

浦「その声は・・ まさか・・ 亀岩さん!?」

亀「そうです」

浦「し、信じられない! 夢を見ているようだ!」

亀「夢ではありません。この前もお会いましたよ」

浦「嵐の日にですね。まさか私を助けてくれたのが、あなただったなんて!」

亀「ご無事でなによりでした」

浦「初めて会った時から1600年以上経ったのに、まだ生きておられたとは」

亀「もちろんです。浦島さんが目覚める日を静かに待っていました」

浦「私のことは知っていたのですか?」

亀「はっきりとではありませんが、浦島さんが目覚めた時、何かを感じました。そして危険が迫っていた時も・・」

浦「助けてくれてありがとう。やはりあなたは特別な亀なのですね」

亀「もちろんです。乙姫様にお仕えしていましたから」

浦「そうだ。乙姫様はどうしていますか?」

亀「乙姫様ですか」

浦「できるならもう一度竜宮城に行って、乙姫様にお会いしたいのです。私を連れて行ってくれませんか?」

亀「残念ながら今の私には無理です。ご覧の通り、体がこんなにも巨大に・・ これでは竜宮城に行くことはできません」

浦「そうですか。他の手立てはないものでしょうか?」

亀「それならば私の子供たちに頼めばよいでしょう」

浦「子供!?」

亀「はい。まだ生後間もないですが心配いりません」

浦「なるほど」

亀「私がこの島に来たのも、ここを産卵地に決めたからです。ようやく産卵が終わり、子供たちも孵化し海に旅立ちました。私もやるべきことが終わったので、間もなくここを離れるつもりです」

浦「そうだったのですね。しかし知っていますか? 今人間達の間で、あなたのこと。この島のことが話題になっています」

亀「それは私としても大きな誤算でした。おかげでここを動きづらくなってしまいました。しかしいつまでもここにいる訳にもいきません」

浦「任せてください。この時代の人達には、私から上手く言って、なんとか誤魔化してみせます。それより私は亀岩さんに会う事ができて本当によかった」

亀「私もです。浦島さん」

再会の喜びに浸っていた。

そんな時。

遠くで声がした。

「ミスター浦島~!」

声を聞きすぐに分かった。

浦「トムさんだ! 私を探しているみたいだ」

亀「え?」

浦「さっき私が大声を上げたから、それを聞いて心配したのかも・・」

どうやらトム以外にも数人いるようだ。

「ミスター浦島~!」

「浦島さん~! どこですか~!?」

「ちょっと! 浦島さんがどうかしましたか?」

「少し前に外出したらしいのですが、悲鳴を聞いたと、トムさんが・・」

「なんだって!? それは大変だ! 浦島さ~ん!」

「もしかしてあの島に行ったのでは?」

「こんな時間に?」

「行ってみましょう!」

「浦島さ~ん!」

彼らの声がどんどん近づいてくる。

亀「やはりあなたを探しているようですね」

浦「こっちにくるみたいです。どうしよう!? このままだと亀岩さんも」

その時、亀岩が。

亀「浦島さん。今すぐここを出ましょう!」

浦「ええ!? どういうこと・・」

亀「私と一緒に島から逃げ出しましょう。あなたにとっても島にこれ以上いる理由はないでしょう? ならば早いほうがいい」

しばらく間をおいて。

浦「分かりました」

浦島は頷いた。

一緒に来たスタッフのみんなやトムさんを裏切ることになるとも思ったが、このままでは亀岩さんも見つかってしまう。

これ以上騒ぎを大きくしないために浦島は覚悟を決めた。

亀「浦島さん。私の鼻の上に乗ってください!」

浦「鼻!?」

亀「急いで!」

浦「はい」

言われるがまま亀岩の元に駆け寄る。

亀岩は自分の顔を地面に押し付け、鼻の頭を突き出した。

浦島は、それでも彼の体の倍はあろうかという高さの亀岩の鼻によじ登った。

亀「乗りましたか? では行きますよ~」

浦「えっ!?」

すると浦島を乗せた状態で首を持ち上げ、勢いよく鼻息を吹いた。

浦「わあああああああああああ!!」

その勢いで浦島の体は空高く舞い上がった。

やがて急速に落下してくる。

すると、亀岩中央の大木が突然ゴムのように伸びて、浦島の体を、まるで人の手のような動きで受け止めた。

浦島を乗せた大木は、今度は急速に収縮し元の場所に、元の姿で戻った。

浦「な、なんだ今のは!?」

一瞬のことに何が起きたのかと目を白黒させる。

辺りを見渡すと、そこは見慣れた風景。

大木のてっぺんであった。


「おい! 今悲鳴が聞こえたよな!?」

「浦島さんの声に違いない!」

「やっぱりあの島だ! 急ぐぞ!」

浦島の声はトムやスタッフ達にも届いていた。

彼らが急いで駆け付けようとした時。

突然、地面が突然激しく揺れた。

ドドドドドドドドド。

「な、なんだこの揺れは!?」

「地震か!?」

揺れは、走ることはおろか立っていることすらままならぬほどであった。

「くそっ。立ち上がれない!」

「何が起きているんだ!」

続いて大波が彼らを襲った。

「今度は津波か! いったいどうなっているんだ!」

かろうじて誰も流されずに事なきを得た。

数分後、揺れはおさまったが、トムたちが駆けつけそこで見た光景は・・

ただ静かに広がる一面の砂浜であった。

トム「これはどういうことだ!?」

スタ「島が・・ 消えた?」

誰もが茫然と立ち尽くした。


次話(最終話)→10/6(水)

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