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第4話 漂着した島

しんかい2000が消息を絶った数日後・・

浦島は静かに目を開けた。

浦「こ、ここはどこだ?」

そこは見知らぬ砂浜。

淋代海岸ではないようだ。

見渡す限り広がる海。

どうやら小島のようだ。

浦「私は生きているのか・・」

辺りには人のいる気配はない。

無人島のようだ。

浦「いったい何日海を漂っていたのだろう・・」

体には救命うきわが二つ。

浦「助かったのはこれのお陰か・・ そうだ。船は? リーダー達は?」

海を探すが当然見当たらない。

浦「沈没してしまったのか・・」

彼らの安否が気になった。

だが今は自分自身が無事だったことへの安堵の気持ちで一杯であった。

浦「あの嵐の中助かったのは奇跡に違いない。全てはリーダーのおかげ」

浦島は感謝した。

ぼんやり海を眺める。

ふと遠くの海上に目をやった時、ある物体が目に入った。

浦「何だあれは? 人かもしれない!」

浦島は起き上がると、我を忘れて走り出した。

そしてがむしゃらに泳いた。

近づくとそれが救命ボートであることが分かった。

浦「あれは金作達のボート!」

すぐに分かった。

ようやくボートまでたどり着き中を見ると、そこには二人が横たわっていた。

浦「おい大丈夫か!?」

金「う、ううん・・ こ、ここはどこだ?」

銀「お、俺達・・ 生きているのか・・」

浦「よかった。無事のようだ」

金「浦島じゃないか。俺は幽霊でも見ているのか?」

浦「ひとまず話は後だ。私の力ではボートを引っ張ることはできない。海岸まで泳げるか?」

金「うん。なんとか」

銀「大丈夫だ」

浦島の力を借り、二人はボートから降りる。

体が海に落ちた。

そこから懸命に泳ぎ、なんとか海岸に着いた。

銀「この島は?」

浦「無人島のようだ。何処かは分からない」

金「そうか・・ それにしてもお前、よく無事だったな」

浦「死を覚悟したが、奇跡が起こったようだ」

銀「あの時はわるかった・・ お前を見捨ててしまって・・」

浦「ああ・・ もう過ぎたことだ。気にしなくていい。それより皆無事でよかった」

それについては咎めなかった。

しばらく休んでいるうちに、誰もが自分の置かれた状況を理解しはじめた。

金「なあ、どうやってこの島から出るんだ?」

銀「出られるのか?」

金「出るに決まっているだろ! でなければここが俺達の墓場になってしまう」

銀「舟を作るか?」

金「キツイぞ。海を渡れるだけの舟を作るのは」

銀「救命ボートでも無理か・・」

金「おい浦島、お前はどう思う?」

浦「そうだな。まずはここでしばらく様子を見ようと思う」

金「なんて呑気な」

銀「だが淋代海岸とここでは相当な距離があるだろう。自力で帰るのは無理そうだ」

金「仕方ない。しばらく考えよう。まずは食う物を探すことが先決だ」

銀「そうだな」

浦「森に入ればきっと何か見つかるだろう」

島の中央一帯は森林になっている。

三人は森に足を踏み入れた。


島を歩くと、改めて人の姿がまったくないことに気づく。

それどころか生き物の姿もない。

島の直径は約1キロほど。

迷うことはなさそうだ。

金「食えそうなものがないな・・」

銀「それにしても静かな島だ。聞こえるのは波の音くらい」

金「俺達がこの島の第一発見者かもな」

銀「こんなへんぴな島。見つけたところで・・」

金「最悪、草や木の実で食いつなぐしかなさそうだ」

銀「あとは救助を待つのみ・・」

ふと金作は浦島が肩に背負っているバッグのようなものに気が付いた。

金「おい浦島。それ何だ?」

浦「ああこれか?」

浦島はバッグを降ろし中を調べた。

そこには大切にしていたサーチライト。束になったロープ。そして非常食があった。

どれも緊急事態を想定したもの。

金「おお。飯があるじゃないか!」

三人は非常食に喰らいついた。

金「それにライトもあるとは!」

銀「これで助けを呼べるな!」

金「ああ!」

金作はライトのスイッチを入れた。

昼間なので多少分かりづらいがしっかり点灯した。

銀「おお。ちゃんと点くぞ」

金「浦島でかした」

浦「これらはリーダーが持たせてくれたものだ」

そのことを思い出すと浦島の気持ちは沈んだ。

食事を済ませ、久々の満腹感を味わった三人。

非常食はあっという間に底をついた。

救命ボートの時は浦島を置いて二人で逃げた金作と銀作。

だがこういう時は、飯を三等分しろと・・

いつもながら図太い二人である。


金「さっそく俺達の存在を知らせるために最適な場所を探そう」

銀「なるべく高い所がいい」

その時浦島があるものを見つけた。

浦「あ、あれは!?」

遠くを指さした。

金・銀「!?」

その方向に目をやると、島の中央あたりにとてつもなく大きな木が見える。

周囲の木々に比べても、その木だけは際立って大きい。

遠くからも一目であった。

銀「何だあの木! 目の錯覚ではないよな?」

誰もが興味を抱いた。

金「行ってみようぜ」

銀「ああ」

浦「よし」

三人は謎の大木を目指した。



ようやくその根元に着いた。

見上げると高さは30メートルはあろうかというほど。

浦「これは凄い・・ 樹齢千年は超えている」

金「間違いない。この木の天辺が島で一番高い場所だろう」

銀「そのようだな」

すると金作が。

金「おい浦島。お前が行ってくれ」

浦「ま、まさかこの木に登れと言うのか?」

金「当たり前だろ? お前がやるのが当然ってもんだ」

銀「浦島頼んだぜ」

無茶な指示にとまどう浦島。

しかし覚悟を決めた。

サーチライトを託されたのは自分だ。

自分が何とかしなければ。

そんな責任感を感じ始めていた。

浦「どうやって登るのだ?」

金「そうだな・・」

銀「いいこと思いついたぞ!」

金「!?」

銀「バッグに入っていたロープを使って、浦島の体を持ち上げよう」

金「やってみる価値はありそうだ」

その作戦が始まった。

浦島の体に巻きつけられたロープ。

それを枝に掛け、下の二人が全体重で引く。

わずかではあるが浦島の体が浮いた。

金「よし、いけるぞ!」

ロープの力だけでなく、浦島も自力で木を登った。

ロープの十分な長さにも助けられ、浦島は無事大木の頂上に到達したのだ。

そこからまわりを見渡した浦島は絶句した。

まさに絶景。

どこまでも続く澄みきった海。

島中の色とりどりな木々を一望できる大パノラマ。

ざっと見た所、近くに陸らしきものは見当たらない。

そして木の枝をよく見ると、さらに発見が。

頂上付近の枝には、至る所に果物が実っていた。

真っ赤なリンゴである。

浦島はひとつ取ってかじってみた。

実に美味しい。

金「おーいどうだー!?」

下から金作の声がする。

浦島は見下ろし。

浦「いい眺めだ! それに果実がたくさん実っている!」

金「なに!?」

銀「本当か!?」

金「俺達にも分けてくれ!」

浦「分かった! 落とすぞ!」

浦島はいくつか取って下へ落とした。

それを受け取った下の二人は驚いた。

金「これは凄い!」

銀「リンゴじゃねえか!」

味見をして。

金「なんて美味いんだ!」

銀「しかもこんなにでかいリンゴ見たのは始めてだ!」

金「もしかしたらこれは神木かもしれないぞ」

銀「これで飢え死にの心配はなさそうだ」

金「おい浦島! リンゴは沢山あるのか!?」

浦「数の心配はない! ただ遠くのリンゴを取りにいくとなると、落下に気をつけないと」

金「それなら念のために、ロープで落下の危険がないようにするんだ!」

浦「そうか!」

浦島はロープを体に巻き、それを木に固定し、命綱代わりにした。

だがひとつ気づく。

浦「おーい金作! 降りるときはどうすればいいのだ!?」

金「降りるとき? そうだな・・」

そこまでは考えていなかった様子。

そして金作の口から。

金「浦島! お前はしばらくそこにいてくれ!」

浦「なんだって!?」

金「救助がくるまでの辛抱だ! サーチライトを使えば誰かしらに気づいてもらえるはずだ!」

銀「リンゴがあるから空腹の心配もないだろう!?」

浦「無理があるだろ・・」

浦島は命綱を作ったことを後悔したが、考えてみればこの高さまで登ってきたものを、また降りるのも身がすくむ。

どのみち金作達の言うとおり、ここに留まる定めだったのかもしれない。

金「夜はその辺で適当に寝てくれ! ただ見張りは怠るなよ! あと俺達が空腹で来た時は、ちゃんとリンゴを落せよ!」

浦「まったく・・」

金「よし銀作行くとするか?」

銀「ああ。じゃあな浦島! 後は任せたぞ! ハハハ」

高々に笑い、二人はその場から去って行った。

こうして浦島は大木の頂上に一人とり残されることになった。

しかし浦島のいる枝は表面が平らなうえに、十分な大きさと広さがあったため、もしかしたら寝られるかもしれないと思い、試しに横になった。

風は気持ちよく、ここが大木の上ということを意識しなければ、実に快適な場所であった。

浦島はそこでうつらうつら眠ってしまった。


次話→9/23(木)

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