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勇者の里帰り

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/04/01

 

「ふざけんな! なんでこんなところにドラゴンが……!!」


 とある下級ダンジョン……いや、最下級ダンジョンでそんな声が響いた。

 直後、声が叫びが途切れ、代わりに最上級の魔物であるドラゴンだけが使える理外の熱がダンジョン内を覆う。


 火は命を奪う。

 生き物であればあらゆるものが知っている事実を世界が思い出す。

 ――いや、認識する。

 そんな表現が最も相応しいと思えるほどにドラゴンの吐く火はこのダンジョンにやって来ていた冒険者を文字通り全て消し炭に変えた。


 この最下級ダンジョンは冒険者となる前の少年少女たちが『軽い冒険』として訪れることもあるほどに安全な場所だった。

 しかし、どういうわけかこのダンジョンの最奥のさらに先にはベテラン冒険者たちだけが知っている『穴場』が存在する。


『まるで誰かが補充しているかのように定期的に宝物が置かれているんだ』


 ベテラン冒険者たちからすれば軽い散歩程度の間隔で宝物を得られる秘密の場所。

 皮肉なことにそんな冒険者たちが今日、まとめて消し炭になった。


「こんなところにドラゴンなんて……絶対におかしいだろ……」


 そんな言葉を残しながら。



 *



「ありがとう。本当に助かったよ」


 ダンジョンの最奥でこのダンジョンの主であるゴブリンの王がドラゴンに深々とお辞儀をする。

 するとドラゴンは最上級の魔物として威厳がありながらも優美に一礼を返した。


「お気になさらず。ただのトカゲにも劣るような幼年の時分。あなた方は私を守ってくださいました。だから、これは恩返しのようなものです」


 ゴブリンの王は粗野でありながら温かみのある笑顔を見せる。

 そんな笑みにドラゴンは安堵の息をもらしながら言う。


「それに。故郷を愛し、守るのは当然のことでしょう」



 魔物の中でも最上級であるドラゴン。

 彼らが魔物達から『賢者』だとか『勇者』だとか呼ばれていることを説明するのは蛇足気味だろうか――。

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