空が青い理由
「ねぇお母さん。どうしてお空は青いの?」
少年が空を見上げながら母に問いかける。少年の問いに、母は少し困ったような表情を浮かべた。
「さあ、どうしてだろうね。」
「ええ、お母さん知らないの?」
少年が不服そうに頬を膨らめる。そんな息子の様子に母は更に苦笑するしかなかった。
「それじゃあ、帰って調べてみる?」
母が取り繕うように少年に問う。
「いやいいよ。そこまでするのは面倒だよ。」
不貞腐れたように返事を返す少年。さてどうしたものか。母は顎に手を当て考えた。
そこでふと母の目に和菓子屋が目に留まる。
「あっ、それじゃああれはどうかな?」
「あれ?」
母に促されて、少年は母が指し示す方へと目を向けた。
そこにはその和菓子屋の名物、三色団子のチラシがあった。
「どうして三色団子はあの三色なのか知ってる?」
「ううん、知らない?どうして?」
少年の言葉に、母は得意げな笑みを浮かべて言った。
「それはね、あの三色で季節を表しているからだよ。」
「季節?」
母の答えに、少年は首を傾げた。
「季節なら四つじゃない?一つ足りないよ?」
待ってました。そう言わんばかりに母は鼻を膨らませた。
「それは飽きが来ないようにという願掛けでわざと秋を除く春、夏、冬を表す三つの色にしているそうだよ。」
「ふーん。」
少し興味なさげに少年が言った。想像した反応と違う息子に、母はがっくりと肩を落とす。けれど、話を振ってしまった手前、母は諦めず話を続けた。
「それじゃあゆう君。ゆう君は秋を色で表すとすれば何色?」
「うーん、そうだなぁ。」
未だつまらなさそうな表情ながらも、母の問いを受け、少年は腕を組んで考え始めた。
そして、すぐに思いついたのか、元気よく言った。
「紫!」
「紫!?」
予想外の息子の答えに、母は目を丸くする。そして、すぐに問い返した。
「どうして紫色なの?」
「だって、僕お芋さん好きだもん。」
「芋?」
母はその言葉でようやく得心した。
ああ、そう言えば彼は秋に実家から送られてくる紫芋が大好きだった。
「ああ、そうか!そういうことか!」
ここで少年が何かひらめいたのか、目を輝かせた。
「お母さん、どうしてお空が青いのか、僕分かったよ。」
「ええ!?ホント?」
再び予想外の息子の言葉に、母は目を大きく見開いた。そんな驚く母に、今度は少年が得意げな顔で話し始めた。
「うん!それはね、あれはお空が今はお昼だよって僕達に教えてくれているからだよ、きっと。」
「ええ!?」
自分なら想像だにしない息子の答えに、母は戸惑ってしまう。そして、おそらく彼の答えは絶対に間違っているとすぐに分かった。
けれど、だからと言って頭ごなしに否定するのは違うだろう。だから、母は言った。
「でもお昼でもお空は青くない時もあるよ?」
「えっ・・・、あっ。」
母の言葉に、少年はすぐに彼女が言わんとすることが分かったのか、ハッとした表情を浮かべた。そして、再び両腕を組み「うーん」と考え始めた。
「うーん、えっと・・・、それはきっとお空が天気を僕達に教えてくれる為・・・かな?」
今度はどこか自信なさげに答える息子に、母は優しい笑みを浮かべる。一生懸命考えているんだな。そのことだけで彼女は嬉しさに溢れた。
「なるほどなるほど、お空は一杯私達に色んなことを教えてくれているんだね!」
母がそう答えると、少年はパッと顔を輝かせた。
「うんっ!きっとそうだよ!」
「それじゃあ、夜はどうして真っ暗なのかな?私なら暗くするよりも明るいまんまにするけどな。」
「それはきっと、真っ暗にして早くお家へ帰りなさいって僕達に教えてくれているんじゃないかな?」
そんなやり取りをしながら二人は手を取り、歩き始める。もしかしたら、何の意味のないやり取りなのかもしれないし、間違った知識を教えることになるのかもしれない。
けれど、こんなやり取りが出来る時間は、何にも代えられない大切な時間であることは間違いないと、母は成長する息子を眺めながら思った。




