9.不良少年の過去
写真を見たあの日から暖陽は、都羽咲たちと離れて暮らすようになったあの日から、いいことが何も無かった日々ときっかけとなった出来事など全ての記憶が蘇った。幼かったとは言え、かなりショックな出来事が重なり続けていたために大きく暖陽の人生を変えてしまった。都羽咲と再会しなければもっと悪い方向へ進んだのかもしれない。そう考えると再開してよかったのだと、改めて暖陽は思っていた。
都羽咲はと言うと、彼女もまた彼のことを思い出し、もっと知りたいと思うようになったていた。
「あの、我妻くん」
「白石さん? どうした?」
「今時間大丈夫ですか? お話したいことがあって」
「うん、いいよどうしたの?」
隣のクラスの唯弦の元へ行くと彼を呼び声をかけた。了承の返事を貰うと、都羽咲は彼をゆっくり話のできる場所へと連れ出した。
「それでどうかしたの?」
「うん、えっと、は、暖陽くんのことで」
「ああ、あいつ? 」
都羽咲の気になっていることを口にすると彼は穏やかな顔で彼の話をしてくれた。暖陽の荒れてしまった経緯を全て。都羽咲は知らなかったこと。知っていたはずのこともあったが、あまりに幼かった自分には記憶になかったが、何となく覚えがあった。
「⋯⋯それから、幼なじみの女の子と離れてからは良いこと無かったようだよ。引き取ってくれた親戚には虐げられていたみたいだし」
「⋯⋯そうなんだ」
あの時自分が近くにいられたら、彼はどうだったんだろうと思いながら話を聞いた。
「あの頃のあいつはほかよりも小さくて心配なるくらいだった。噂にもなった。両親のこととか。それであいつは心を閉ざしていたな。俺が何度も絡みに行って変な目で見られたこともあった」
「ふふっ、そんなしつこく行ったの?」
「あぁ、ずっとな。でもなーあいつ全然心開いてくれねぇの。そんで、虐げてくるクラスメイトとかと喧嘩してさ、負けたりしながら、そういうの繰り返して、だんだんと俺と仲良くなってもやっぱ闇の世界にずっとあいつはいた」
仲良くなっても消えない傷を負った彼にとっていつか離れることを早くに知ってしまった、彼はどこか唯弦も信じられなかったんだろう。
「だけど俺はずっと近くにい続けたけどな。それであいつと同じ学校きた」
「そうなんだ。我妻くんが追っかけてきたの?」
「そうだよ。だけどさ、そんな俺よりすぐ心開いてるっぽいやつが現れたの。なんでかと思ったら幼なじみだったの? 白石さん」
「あ、うん。そうだったみたい。お兄ちゃんから私も聞いて知ったの。たぶん暖陽くんも」
質問に答えると「へぇー」となんとも言えない羨ましそうな相槌が返ってきた。
幼なじみという繋がりは変えられないが、唯弦の方が長い時間近くに居たはずなのに、彼よりも信用度が都羽咲が上がってしまったことに彼はあまりいい気しないだろう。
「⋯⋯ごめんね」
「謝んないでよ。俺はこれから先もあいつから離れるつもりないから」
「⋯⋯その思い伝わってると思うよ」
しばらく話してからそれぞれの教室へ戻った。
聞いて思い出した記憶には、暖陽の悲しい過去だけでもなかった。聞いている中で一緒に過ごした楽しかった日々も。
彼には今まで楽しい思い出はなかったと言う記憶しか残っていないであろう。彼を思ってくれる親友も、幼なじみの都羽咲がいる。これからたくさんの思い出を作ってあげられたらいいと思う。
それから唯弦を中心に都羽咲、未由璃など、彼を取り巻く環境は大きく変化した。彼に楽しい思い出になってもらいたいと、色んなとこに連れ出しては楽しく過ごせるように仕込みたくさんの思い出を作っていった。




