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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

貴族と結婚出来たと浮かれた私は初夜で旦那様から「今、君を愛することはない」と拒絶された。それからメイドと犬にいじめられる日々を送ったが・・・知らないうちに命が助かった話

作者: 山田 勝

私は平民のイルゾッタでございます。

革職人の娘です。自分で言うのも何ですが町一番の美人として有名でした。

ある日、父の元に旦那様が訪れました。


ええ、馬で来られましたわ。踵に金の拍車がついておりました。馬の腹に刺激を与えて速さを調節する馬具です。綺麗な歯車でしたわ。


これは高貴な方のお忍びに違いないと評判になりましたわ。


碧眼で赤毛のワイルドなお姿だけども物腰がとても丁寧で店番をしていた私に膝をついて求婚をしたわ。一目惚れですって、私は貴族に求婚されて有頂天になりましたわ。


とにかく、旦那様の財産を見てから教会に届ければ良いと思いましたわ。




「何て、お美しいぃ、おお嬢さんぅ、是非、私と結婚して下さいぃ、宝物をあげよう」


ええ、発音が少しおかしいかと思いましたが、外国で育ったと仰いました。

綺麗な指輪を頂きましたわ。



何でも、ここから馬で3日ぐらいの森で療養生活をしているとのことでしたわ。


止める父、母、兄弟姉妹の言う事を聞かずに。

旦那様の後ろに乗り。森に行きましたわ。



ついた先は古いお屋敷です。手入れが行き届いていましたわ。


「可愛いイルゾッタァ、屋敷の鍵をあげよう。どこでも見て良いけど、地下室だけは見てはいけないぃ~よ」


「はい、旦那様、分かりました」


屋敷のマスターキーを渡されましたわ。一つでどこでも開けられる鍵ですわ。

屋敷の部屋には、宝物が沢山ありました。

ドレスの部屋、宝石の部屋、お金の部屋・・・・


言いつけ通り地下室には行きませんでした。

私は決心しました。

旦那様と結ばれようと。


夜、旦那様のお部屋に行きましたわ。



「今、君を愛することはないよぉ。今日来たばかりで疲れたろうぉ。部屋で休みなさいぃ」


「え、私は大丈夫ですわ」

「君は可愛い過ぎるぅ。また、今度、日を改めてぇ、一族に紹介してからだぁ」

「・・・分かりましたわ」


さすがに早すぎたかしら。


私はこのお屋敷を気に入ったけれども、一族に紹介されてからよね。


お屋敷は古いが手入れが行き届いているわ。



でも、使用人は一人、少女アレッタというメイド、この子はとても乱暴で粗野だわ。

正直、苦手。


妻用の寝室のドアの前で待ち構えていたわ。その三つ編みにまとめた人参色の髪を揺らして大笑いしているわ。



「ゲラゲラゲラ、だから言っただろう。旦那様はお前を愛することはないんだ。家に帰りな」


キィ!とにらみつけるが・・・アレッタの犬が味方する。大きな犬だわ。猟犬かしら、黒毛に所々、白の模様があるわ。


「グゥルルルル~」


うなり声をあげて私を威嚇する。


翌日、


私のすることは・・・


「お前は厨房に入るな!」


アレッタに拒絶された。


分かる。旦那様は見た目が良く心根も優しい。

だから、盗られたと嫉妬しているのね。




「ほら、お前の飯だ」


ダン!と雑穀の粥を乱暴にテーブルの上に置かれたわ。


「アレッタさん。仲良くしたいわ・・」

「うっせー」


ボリボリと自分は肉を食べる。犬もお肉だわ。


昼間、アレッタは山菜を取りに行き。時には狩りもする。

お肉はイノブタね。

犬は強いようだ。



旦那様は自室に籠もっている。時々外出をするわ。



妻としてやることはなにもない。


アレッタさんは私をそそのかすようになった。


「こっそり地下室を見ちゃいな。今、旦那様はいないよ。今のうちだよ。旦那様の本性が分かるよ」

「ダメです」

「いいじゃん。あんた、食べられちゃうよ」


まあ、ませた子、閨の行いを、食べられると表現するのね。


「本道までの小道に油を塗ったエンドウ豆をまいておいた。鳥は食べない。夜でも光る。あっちだ。逃げちゃいな」


「嫌です」



私の家は裕福な職人の家だが、メイドはいない。近所の農夫の奥さんが手伝いにくる程度だったわ。

メイドを躾ける方法も分からない。


あ、弟妹と同じで良いのかしら。


「ダメです」


と拒絶することしか出来なかった。



ある日、知らされた。今夜、旦那様の一族が来られるそうだ。


アレッタは忙しく準備する。

犬もアレッタにつきそう。


「ワン!ワン!ワン!」


「おい、イルゾッタ、水浴びをしてこい」

「ええ、分かっていますわ。自分で水くみをして湯を沸かしますわ」

「ダメだ。今日は神聖な日だ。滝壺で沐浴しろ。ロビン、案内してあげて」

「ワン!」


犬に導かれて、進む。藪の中だわ。


「ワン!」


藪の下に通れる小さな通路があった。

四つん這いで進む。


ビリビリと藪にからみ服が破けたわ。


ザザーと音がするわ。こんな所に滝壺があったのね。

まあ、犬ならいいか。と服を脱ぎ水浴びする。


「ワン!」


まるで、急かされるように家に戻る。

その頃には服はボロボロだわ。

どうしようかしら。実家から持って来たドレスに着替えようかしら。



「アレッタさん。お手伝いをしますわ」

「いらねー」

「でも、前菜だけで、メインのお料理は、肉かしら。お魚かしら」

「お前が心配することはない。着替えておけ」



女主人として屈辱だわ。でも、今日、一族の方々が集まったら話そう。

メイドが乱暴だと。


部屋に戻り。着替えようとしたら、荒らされていた。

ドレスはビリビリに破かれ。ネックレスはヒモをちぎられ宝石が散乱していたわ。


問い詰めよう。と下の階に向かうために振り返ったら、アレッタがいた。包丁を持っている。


「お前は、これでも着ておけ」


ところどころ虫食いのある古いドレスを渡された。


部屋着よりも上等だけども。


「ワン!ワン!」


「もしかして、アレッタさん。水浴びをしに行っている間にドレスを破いたの!」


「さあな。一つはっきりしておきたい。私とロビンはお前が大嫌いだ!」


「ヒドい・・・・こんな服では一族の皆様の前に出ることは出来ないわ」



「出て行けー!」


包丁を突きつけられ、振り回されたわ。


私は屋敷を出るしかなかったわ。


「ワン!ワン!ワン!」


犬に追い立てられ、私は森の道を進む。

森で迷うわ。


でも、アレッタが言っていた通り。道にエンドウ豆がまいてあった。夕暮れでも光る。


豆を頼りに道を進み。本道に出ました。すると、前から松明が見えたわ。人が大勢いるわ。

一族の方かしら。


と思って隊列の前に出たら。


「止まれ!」

「誰か!」

「怪しい奴!人魔物か?」


と護衛の冒険者たちに槍や剣を突きつけられ。女冒険者に裸にまでされて武器がないか確認されて、身上を話しました。



「どうする?リーダ、嘘を言っているように思えない」

「仕方ない。一緒に連れて行って、お役人様に引き渡そう」


何とか集団に紛れ街に着きましたわ。




・・・・・・・・・・・・・





☆☆☆騎士団駐屯地




「こうして、連れて来られた次第ですわ・・・グスン、アレッタを窃盗の罪、主人侮辱で訴えたいですわ。こんなみすぼらしい姿にさせられて」



調書をとっていた騎士はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。



「ご婦人。旦那様の家門名は?」

「ビーンでございます」

「聞いた事がない。紋章官に問い合わせよう」



それからしばらくして、見知らぬ老ご夫婦が来られた。私のドレスを見るなり。



「こ、これは、娘のドレスだ」

「10年前に行方不明になったのよ。この縫い付けは私がやったから確かだわ!」



「ええ」

それから話はとんでもない方向に行く。


アレッタのご両親が来られたわ。


「娘は3年前、迷子になった子犬を探しに森に入った。黒毛に白の模様のある子だよ!間違いない、生きていたのか!」

「犬の名はロビンよ・・・グスン、グスン」



あの森では旅人が行方不明になるから、通るときは旅人は集まり隊列を組んで冒険者に護衛を頼むのが通例だと分かったわ。



じゃあ、アレッタさんはわざと出て行くように・・・・仕向けたの?



「エンドウ豆の道だな。案内してくれ」

「はい、でも、アレッタさんの処刑は待って下さい」

「・・・抵抗したら殺すがなるべく生かそう」



しかし、屋敷に戻ったら、もぬけの殻だった。


地下倉庫を見たら・・・



「ヒィ、人間の骨だ。古い骨か?」

「まさか、食っていたのか?」

「イノブタの肉もある・・・」



案内役の森の猟師は言う。


「人魔物がいる森と言われていますぜ。ワッチたちは二人以上で入り。24時間警戒を怠りませんぜ」


この話は王都まで行ったそうよ。




☆☆☆王宮



「何だと、金の拍車だと、お忍びで遠出に出て、5年前に行方不明になった。リストガか?」

「陛下、その可能性は高いです。殿下は金の拍車がお気に入りでした」

「まあ、では、その娘の旦那というのは、リスになりすました者に違いないわ」


「探せ!何としても探せ!近衛騎士団、竜騎兵団を投入だ」


「「「御意」」」




王都から騎士団まで来て、森中を探すが見つからない。



「娘、何か思い当たる節はないか?」

「そう言えば、滝がございました」

「案内せよ」



工兵があっという間に藪を刈り。滝の道まで作ったわ。


「猟師、この滝は憶えあるか?」

「ございません。最近の治水工事で出来た滝ではありませんか?川も若い」


「騎士団長!滝の裏側に、洞窟があります!」

「何だって、突入だ!」



洞窟には47人・・・・とアレッタさんと犬がいたわ。


皆、どこかおかしい。長い間、近親相姦を続けていた形跡があると後に知った。

旦那様はその中で比較的に頭が良い方らしい。


子供から大人まで皆、同じような顔。


私が旦那様と呼んだ人もそこにいた。その服は都の王子様の服と判明したわ。


後の取り調べで、私を抱かなかったのは・・・


『自分ぅの種が入った肉は食えないよぉ』


とゾッとする理由だったわ。その話を聞いたときは失神をした。


元々は夫婦で盗賊していたが、ある日を境に人を食べるようになったこと。特に女性の肉がこのまれたようだわ。


屋敷にあった宝石やドレスは商人を襲った時の戦利品、いつしか換金できなくなって直接人を食べるようになったのね・・・




アレッタはロビンと一緒に殴られて虫の息だったそうよ。



「お願いですわ。アレッタとロビンは関係ありませんわ。どうか、助けて下さい」


「娘殿の決めることではない。人食いの疑いがある。晴れるまでは容疑者だ」


一蹴された。


その後、ビーン一族は王都まで連行され、大勢の遺族の前で裁判をかけられたが、人食いの罪が何故悪いのか分からない。

だから、拷問をした後、そのまま閉じ込めて、餓死をさせたそうだわ。


食い合う様を予想したけれども、ビーン一族は静かに餓死をしたわ。

賢者が研究の材料にしたと言うわ。




私は人食いの妻として悪評が立ち。故郷にはいられなくなったわ。

騎士団の隊長さんが教えてくれたわ。捜査に協力してくれたお礼に陛下から貞操証明、婚姻無効証明を書いて下さり。


紹介して下さった下級貴族と結婚出来たわ。


旦那様は特にハンサムでも大金持ちでも無かったけども子をもうけ。幸せに暮らせたわ。



☆25年後



息子が年頃になり。平民の子を連れて来たわ。


「父上、母上、紹介したい人がいる・・・入って」

「ト、トルディアです。いえ、申します」


薄い赤毛に水色の瞳、顔はアレッタにそっくりだわ。


「ワン!」


ワンちゃんもつれているわ。黒毛に白が所々ある子。


「トルディア様、お母様は?ご健在かしら」

「お母ちゃん、いえ、母は、2年前に亡くなりました・・」

「お名前は?」

「アレッタです。この子はケビン、お母ちゃんの言いつけです。犬は守り神だから大事にするように言っていました。いつもいるように・・・」


ガシ!と私はこの娘を抱擁したわ。


「え、あの、その」

「グスン、グスン、お母様は幸せな人生を歩めたのかしら。グスン、グスン」

「はい、父ちゃんと仲良く喧嘩しながら幸せに暮らせました」


どうやって大事にしようかしら。やっとあの子に恩を返せる機会を下さった女神様に感謝の祈りを捧げたわ。






最後までお読み頂き有難うございました。

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