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オカルティック・アンダーワールド  作者: アキラカ
白狐怪奇譚・最終章

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第1話 白菱稲荷神社

4月4週目金曜日




 神奈川県逗子市にある白菱稲荷神社内の敷地内にある(はだ)家の住宅内。

 その日(ふひと)の祖母、吉乃の部屋へ娘の公子は呼ばれていた。



「・・・・失礼致しますお母様・・・」



 そう言ってとても丁寧な作法で障子を開くと障子手前の廊下で恭しく手をついて頭を下げた。



 中では吉乃が生け花を嗜んでいる。

 そしてゆっくりと手に持つ一本のハナズオウの枝を置くと


「お入りなさい」


 と声を掛けた。



 公子は静かに中へ入り障子を音を立てずに締め、その場に正座をして吉乃へ頭を下げた。



「・・・・公子さん。あれから汐音(しおん)の様子はいかがかしら?」


 吉乃は再び枝を持つとゆっくりと形を決めながら剣山へぐっと押し込める。


「はい・・。今はようやく大学の授業が始まりましたのでそちらに集中しております」


「そうですか・・・・」


 吉乃は聞いておきながら特に興味もなさそうに返答をする。

 そして更に赤い花が付いた枝を持ち


「・・・それで?あの()()()をこれからどうするおつもりなんですか?」


 と聞くとハサミでその枝をバチンと切り落とした。


「・・・・先月汐音が躾けに行ったようですが、生意気にもあの犬に呪力を祓われたらしく。今はまだ力が戻りきっておりませんのですぐには・・・」


 そう言うと吉乃から一気に邪念が沸き起こり、持っていた枝についた花を再びバチンと半分に切り落とすとその赤く小さな花びらが畳の上に散らばった。


「!!」


 公子は反射的に身を震わせる。


「だからあの穢れた血は・・・・。本当に忌々しい。我ら一族が大切に培ってきた呪力の連鎖を・・あの女の血はことごとく討ち祓おうだなんて・・・・!」


 吉乃の周りに只ならぬ邪気・・いや闇が広がりつつあった。

 公子はその闇を恐怖で見る事が出来ずに怯えながら畳に目を向け続ける。


「公子さん・・・。そろそろ本気であの犬を締め上げ我が一族の力がいかにして偉大で格が上なのかを知らしめる時が来ましたよ・・。思う存分犬を懲らしめ呪力を生み出してもらおうじゃありませんか・・・」


 と吉乃の顔が闇の中で狐に変化するとその瞳は金色・・いや赤黒く光り輝いた。






 翌日土曜日



 (ふひと)は朝の7時に起きると隣で眠る寿々(すず)を起こさないように静かにパーテーションを開け廊下に出た。


 朝の支度をして洗面所から出て来るとそのまま自室へ行き着替えを済ます。

 そして朝ご飯を作り、一応寿々の分も用意しラップを掛けると冷蔵庫に入れた。

 加えて先週から持参し始めた弁当も作る。内容は特に朝調理をしなくてもいいよう休みの日や授業が2コマ目からの日などの時間を使い、作り置きして冷凍しておいた物を詰めるだけだ。

 とは言え史の料理のレベルはまだまだだ。理屈では分かっているが元々料理だけでなく内容や彩のバランスの感覚が欠けているせいで上達するまでは時間がかかりそうだ。

 しかしながらほぼ毎回作っている卵焼きに関しては、初めて作った1ヵ月前に比べたらだいぶ形も様になってきて上達している。


 史はテレビをつける事もなく黙々と食事を済ませ片付けを終えると辺りを見渡し特に忘れ物などがないかを確認し。

 もう一度パーテーションを開け寝室にゆくと


「・・寿々さん。それじゃ俺仕事行きますので」


 とまだ夢の中の寿々の髪をそっと撫で部屋をあとにした。

 そしてマンションの階段を静かに下り駐輪場の自転車のワイヤー錠を外した。




 史は大学入学後は火曜日だけ授業が5コマまであるので、その日だけはアガルタに出勤せずその分の業務を土曜に補うようにさせてもらっている。


 土曜の仕事は特に忙しい事もなく、電話番をしながらひたすらノルマを熟し、更に寿々から渡された企画のレイアウトをとにかく必死になって考える事が主な仕事となっている。

 時間があればそのあとひたすら企画を練ってはそれを形にしていった。


 今日は校了後の土曜という事もあって編集部には誰も来ないようだった。

 地下1階のアガルタの編集部は窓が無いため外の明かりが入る事もなく、はっきり言ってここで1日誰とも会話をせず仕事をし続けると精神的におかしくなる人もいるだろう。


 しかし史は小さい頃から祖母のネグレクトで地下の座敷牢に長い間閉じ込められていた経験があったせいか。こういう環境に慣れいてた。

 しかも幼少期の座敷牢ではもいつも誰かがそばにいてくれるそんな気がしていて。その存在を理解してからはその環境を怖がるどころか心地が良いとすら感じるようになっていたからだ。


 史はふと皮裂村の宗教施設の牢屋内で見たあの七色の光を思い出していた。



『あの光・・・やっぱり昔一緒にいてくれた座敷童と同じ存在だったのだろうか・・・・。俺は思わずあの光を寿々さんのようだ、と感じてしまったけれど・・・。あの後すぐに逃げ出して来た寿々さんと話しているし。まさか生霊が、とも考えたけれどどう考えても子供の頃に感じた座敷童が寿々さんのわけがないんだよな・・・。あの頃はまだ出会ってもいないのだから』



 史はそう思いながら首の後ろで手を組むと、配管がむき出しになった無機質な天井を仰いだ。



「・・・・それとも俺、もうあの頃すでに寿々さんと出会っていたりしたのだろうか?」



 ふとそんな事が頭の中をよぎった。


 確かに史は寿々の事を守る為に人間に生まれ変わりたくてこの世に転生した。

 それは自分でも間違いないとそう感じている。

 とは言え実際史が寿々を初めて見たのは中学2年生の春。寿々が総司の担当として自宅を訪れた時だとそう記憶している。



 しかし、本当にそうだろうか・・・・。



 寿々と付き合うようになって半月が過ぎ、お互いの家や呪いに関する問題はまだまだあるものの今はとにかく史は人生の中で一番幸せな時期を過ごしていると言っても過言ではない。

 それなのに寿々との距離が近くなる度に何処となく言い知れぬ不安が胸の奥で次第に大きくなりつつあるのも否定出来なかった。



 その理由が、あの七色に光る寿々と思われる存在のせいだったからだ。



 寿々と一緒に過ごす時間が長くなるつれて急速に〝祓〟が使えるようになったり、呪力も透視以外に総司と同じような重力を操れるようになったり念力動作(テレキネシス)も使えるようになったり。

 とにかくこの一連の流れが史の中ではただの偶然ではなく、必然であるとしか思えなかった。

 それはつまりこの力全てが寿々の為のものだとすれば。そう遠くない未来にこの力を寿々の為に行使しなくてはいけない、そんなことがすぐそこにまで来ている・・・。


 史は本能的にだがそう感じていた。








 午後1時。


 部屋の中が次第に暖かくなり、寿々は思わず寝苦しくなって目を覚ました。


「・・・・・・?あれ?史?」


 寿々は起きて眼鏡を掛け。そして寝ぼけた頭をぼりぼりと搔きながら。


「そっか。土曜だったな・・・」


 今日史は仕事だったと気づき欠伸をすると、流石に起きなければとベッドから立ち上がった。




 歯を磨き顔を洗い、キッチンに向かう。冷蔵庫を開けると史が用意しくれた目玉焼きと市販のカットサラダが乗せられた皿に気づき寿々は嬉しそうにそれを取り出すと湯を沸かしながらトーストを焼いた。

 そしてトーストを焼いている間に部屋中の窓を開け喚起をすると、久しぶりにテレビをつけてひろせと淵本の動画を検索し、溜まっていた分を一気に見ようと再生ボタンを押す。


 寿々はドリップしたコーヒーを啜りながら

「やっぱりひろせさんも淵本さんも、現場主義で体当たり取材しに行っているの本当に凄いよなぁ・・。あ、そういえば再来月イベントあるって言ってたからとりあえずチケット買っておくか」


 そう言いながらチケットサイトから検索しチケット購入まで進むと。


「予定はわからないけれど。一応史の分も買っておいてもいいよな?」


 と特に何も考えず2枚チケットを購入した。


 そしてそのまま片付けもせずにだらだらと午後3時過ぎまで動画を見続け。ようやく溜まっていた分全部が見終わる頃にはすっかり一日の半分が過ぎ去っていた。


 寿々は久しぶりの一人の部屋の中を見渡し。


 そして窓の前の本棚手前でその視線を止めた。


「あの子は今どこにいるのだろうか・・・・」


 寿々はふとあの深淵の子を思い出していた。


『彼女には名前があるのだろうか・・。今もなおやりたくもない仕事をやらされているのだろうか・・』


 そんな事を考える寿々の周りを心地よい春の風がベランダからふわりと入り、部屋の中を通り過ぎていった。



 ピンポーン・・・。


 突然チャイムが鳴り、寿々は

『一体誰だろう。勧誘とかじゃなければいいけど・・』

 と思いながら玄関の扉を開ける。


「はい?」


 するとそこに立っていたのは


「お久しぶりです」


 と身長192㎝+10㎝のヒールを履いた白いワンピース姿の迦音(かなん)が立っていた。


「あれ?迦音さん・・。どうしたの?」


 寿々は迦音の急の来訪に驚きを隠せなかった。

 しかも引っ越しの時のラフな格好と違い、以前史に見せてもらった渋谷を歩くリアル八尺様としてSNSでもバズっていた、あの時と同じ格好だったものでちょっとだけびっくりしてしまった。


「すみません、急に来てしまって・・・」


 そう言って恭しくお辞儀そする迦音。


「あ・・・いや。別にいいけれど。今日史は出勤していて家にいないんだよ。あ、良かったら上がる?」


 と言って寿々は玄関の扉を開けた途端、迦音は玄関のドアを無理矢理こじ開け、ずいっと入り込むと寿々の目の前に一体の藁人形を突き出した。


「!?」


 寿々はその藁人形を見て嫌な予感がして2歩後ずさった。

 しかしそう思うのも束の間、迦音は寿々の目も前でその人形を右手でぎゅうぅっと握り潰した。


「!!!」


 それと同時に寿々の体はまるで金縛りにあったかのようにその場から動けなくなった。


「・・・・・そ、そんな。・・迦・・音・・さん・・・?」


 寿々は迦音の襲撃に思わず信じられない、いや信じたくない、といった絶望した顔をする。

 迦音は寿々と目を合わせる事もできず、ただ突き出した握り締める藁人形の手が震えていた。


「・・・寿々さん・・・ごめんなさい・・・」


 そう言って迦音は藁人形の首の部分を反対の手で締め上げる。


「あ・・・ぐ・・ぐぐぐ・・・・」


 寿々は喉の奥が急に苦しくなりいてもたってもいられず、手足をもがきたくなるも体も動かせず。

 そのまま頭がグラっと傾くと体から力が無くなり意識を失ってしまった。







 午後6時


 史は仕事を終えるとそのまま真っすぐ家に戻ってきた。

 結局その日は一日中誰も編集部へ来ることもなく、しかしながらそのおかげでとにかく仕事自体は捗った。


『一応ノルマ以上の仕事量は出来たから来週は少しは楽に過ごせそうかな。それより今晩の夕飯どうしようか・・・。野菜炒めはこの前食べたしなぁ・・・』


 と考えながら史が家の鍵を開けようと鍵を差し込んだ瞬間。扉の鍵が開いている事に気づきすぐに妙な違和感を覚えた。


「・・・寿々さん?」


 史は玄関を開けながら中の様子を伺う。

 中には誰もいないのか明かりがついておらず。しかしながら窓はどこも全開のままだ。

 西日が差したその部屋の中は夜よりも遥かに暗く感じた。


 すぐに嫌な予感がして急いで中へ入る。

 部屋中を見渡すが寿々の姿はどこにもない。

 そしてテーブルの上を見て、寿々のスマホが置かれているのが目に留まった。


「・・・そんな・・・。まさか」



 するとそこへ自分のスマホに着信が入った。

 急いで着信を見ると、その電話番号は登録すらしていなかったがすぐに分かった。

 何故ならば神奈川の白菱稲荷神社の番号だったからだ。


 史は鋭い目をしながらゆっくりと電話にでる。


「・・・あら、史君。おかえりなさい」


 その声は間違いなく伯母の公子だった。


「・・・・・・・・・・何故ですか」


 史は今にも溢れ出しそうな膨大な呪力の衝動を抑え、そう呟く。


「何故?ほほほほ・・・そんなの決まってるじゃない。皆・・・お前が大嫌いだからよ?」


 甲高い公子の声に怨念が籠る。


「だからって・・秦の家とは関係ない人を巻き込む事を・・あんたは何とも思わないのか!!」


 思わず史の声が辺り一帯に響き渡った。


「ほほ・・。思わないわね。あんたが大事に思っている奴ならばなおさらね」


 その言葉を聞いて史の瞳が一気に金色に輝いた。

 そしてその怒りに反応するように家具や食器がカタカタと振動を起こし、まるで地震かと思うように共鳴する。


「こいつの命が惜しければ・・・いますぐ白菱に来なさい。そろそろ本気で躾けをしてあげないとねぇ・・・・・・薄汚い野良犬め・・」


 そう言うと公子は通話を切った。

 その瞬間史の怒りでマンション全体が多く揺れた。

 ガタガタガタとそれこそ紛れもなく地震と思われる程の揺れが一帯に広がると、その波動に触れたベランダにいた蜘蛛の子達が一気に銀色に発光して弾けるようにして散っていった。


「・・・・・・・・」


 史の手の内にあるスマホの液晶画面は怒りで握り締められヒビが入りその数秒後に明かりが消え。

 薄暗くなった部屋の中で、史の怨念の金の瞳だけが煌々と燃え上がるように光り続けていた・・・。









 寿々が次に目覚めたのは見知らぬ座敷牢の中だった。


 小さな小窓が奥に一つだけ備えられ、そこが半地下のような場所である事が分かった。

 外は真っ暗でどこかの明かりが少しだけその小窓から入り込んでいるのが分かる。



「・・・・・う・・・」


 寿々はまだ喉の奥と頭の奥に違和感が残っていた。


 実際首を絞められて窒息したわけではないはずなのに、迦音の藁人形は思いのほか強力でその苦しみのダメージだけはちゃんとそこにはあった。


「・・・ごほ・・・ごほ・・・・」


 寿々は喉の不調だけでなく、クラクラしながら割れる程痛む頭痛に苛まれ。


『・・・頭痛が・・。喉もだけど頭が酷く痛む・・・』


 そして一度起き上がったものの、やはり頭を上にする事が出来ずにそのまま再びその座敷牢の畳の上に倒れるようにして横になった。


『・・・・・・ここは・・・。やっぱり秦家の座敷牢・・・なんだろうか』


 寿々は横になりながら辺りを見回した。



 四方はまるで道場か何かのような漆喰の白壁だ。

 天井付近だけ少し板張りになっている。

 広さは10畳+板間となっており、その畳の上に乗せらるようにして5畳程度の広さの木製の牢屋がずっしりと鎮座しているような形をしていた。


「・・・まいったな・・」


 寿々は横になりながら天井付近の小さな窓を見た。


『史心配しているだろうな・・・。いや、もしかしたらもう何かしらの連絡で怒り狂っているのかもしれない・・・。俺もももう少し迦音さんの事ちゃんと疑っていれば良かったのかも・・』


 と酷い頭痛と情けなさで涙が出てきた。


 しかしすぐにその涙を拭い。


「・・そうだ。俺が秦家の問題があったら一緒に解決したいってそう言ったんだ。だからどんな理由であっても俺が泣いて悲しんでいる場合じゃない・・」


 そう言うと痛む頭を押さえながらもう一度体を起こした。


「――――っってぇ・・・・」


 恐らく寿々は低酸素状態が続いたせいで頭痛が酷くなったものと思われる。

 なので仕方なく寿々は暫く間痛む頭を我慢しながらゆっくりと深呼吸を続けた。


 数分間それを続けているとほんの少しだけ頭痛が軽くなったような気がした。

 そうしているとふと目の前の引き戸の向こうから階段を降りて来る人の気配がして寿々は身構えた。


『・・・・誰だ』


 警戒をしているとその木製の引き戸が開けられ、迦音が入ってきた。


「・・迦・・・音・・さん」


 寿々は警戒をしながらも、それでもまだ心のどこかで迦音を信じていたい。そんな願望が残っていたのかもしれない。

 本来ならばもっと憎しみを込めて話しかけるべきなのに、寿々には何だかそれが出来なかった。


 何故ならば迦音は家に来た時からずっと白いつば広の帽子を深々と被り寿々と目を合わせないようにしていたからだ。

 そしてチラッと見えたその目は真っ赤に腫れあがっていた。


 迦音は盆に載せて持って来た夕飯を静かに座敷牢の入口脇に置いてその前に正座をした。

 その姿は史の引っ越しの時に初めて家に来た迦音が、まるで遠慮をするように肩をすぼめ申し訳なさそうに座るあの時の姿を思い出させた。


 寿々は仕方なく少しだけその迦音に近づき畳の上に正座する。


「・・・・迦音さん。なんで・・・」


 寿々は責めるわけでもなく、ただ悲しいと、そう言いたくて質問した。

 すると迦音は肩を振るわせ


「・・・ごめんなさい・・・。本当にごめんなさい・・・。私、母に操られているの・・。母は呪術を使い蜘蛛を使役し糸を操る術師。私たち兄弟は昔からこうなの。母にも祖母にも絶対に逆らえない・・・。それに今週末は総司叔父様が四国の方へ出張へ行ってらっしゃるから・・母はこの機を逃すまいと・・・・」


 そう言って握る両手に大粒の涙を落とした。


「そんな・・・・」


 寿々はあまりにも酷くて一緒になって泣いてしまいたかった。

 史にしろ迦音にしろ。本当にどうして秦の家はこんな酷い呪いの連鎖でここまでやって来れたというのだろうか。

 きっと迦音の母親も同じなのだろう。

 一族から、特にその元凶たる祖母から同じように呪力で脅されそしてそれが故に子供達にまで負の連鎖をさせている。

 どうして一番下の存在がこんなにも酷い人生を送らなければならないのか・・・。


 そして寿々は史の事を思い出した。


「迦音さん・・・・・それでも史は・・。逃げずにこの秦家に立ち向かい、自分はもう都合よく扱えるような存在ではなくなったと証明したい・・・・・そう言っていたよ」


「・・・・・・」


「迦音さんはどうしたいの?」


「・・・・私・・・私だって、もう都合よく扱われるなんて嫌よ!・・せっかく家から離れて・・生まれて初めて人間らしい人生を送れていたのに。・・・なのに・・・なのに・・・」


 そう言って震える手で迦音は白いつば広のその帽子を取った。


「!!!」


 迦音の首には太い蜘蛛の糸がグルグル巻きに巻かれ、その後頭部には頭を覆うように30㎝以上はある馬鹿でかい一匹のジョロウグモがすぐにでも首の後ろを捕食しようとがっしりとしがみ付いていた。


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