第3話 悔いのない人生を
シンディからの依頼された分の浄化が終わる頃には夜の10時を超えていた。
二人は明日も仕事があるのでもう帰らないといけない時間帯ではあったが。
何故か・・・
「フヒトちょっと悪いんだけど、私喉乾いちゃったから出て右のコンビニで3人分アイスコーヒー買ってきて」
とにっこりと笑うとシンディは千円札を無理矢理握らせた。
史はかなり嫌そうな顔をして
「なんで俺がパシられなきゃいけないんですか・・・」
とめちゃくちゃ不服そうに答えたが、シンディは少し怒り気味な笑顔で
「若いんだから文句言うんじゃないわよ。私はまだあんたから全部の借りを返してもらったとは思ってないわよ・・」
と凄みのある顔で言い寄られ、史は嫌そうな顔のまま
「はぁ・・・わかりましたよ・・行けばいいんでしょ」
と渋々花園神社から一人歩いて出て行った。
それを見ていた寿々も何事かという顔をしていると
「・・・さてと。フヒトが帰ってくるまでに手短話すわね」
そう言ってシンディは寿々に向き直った。
「えっと・・俺に何か・・・?」
寿々は何だか良く分からないといった表情だ。
「ええ・・・寿々さん?いいかしら。ちゃんと聞いてね」
シンディは改まって話し始める
「・・・はい」
「まず。私はね。普段はここの界隈で困っている人を察知してはその人の元に駆け付け相談に乗って、場合によっては上の存在と交信し助言を与えている、交信者・・・。と言うのが表向きの存在なのだけど。本当はね・・・・・・・私は一度高次元世界に上がって使命を与えられて降りてきた存在なの。人間はそれを時として天使と呼ぶわ」
その発言に寿々は驚くと言うよりどう捉えればいいのか分からず困惑した。
「・・・天使・・・」
「そうね。その名前で言うととっても滑稽でアホらしく聞こえるでしょうけれど。ほら、私こんな羽つけてるけど別に飛べるわけでもないし頭の上に輪っかもないからね。そりゃあ頭のおかしい奴だやべぇ感はわかるわよ?・・・でもね。多分あなたなら良く視れば分かるんじゃないかと思ったんだけど・・どうかしら?」
シンディにそう言われて目を凝らしてみたものの良くは分からなかった。なので寿々はやはりそこは眼鏡をずらしてもう一度シンディを見直してみた。
「・・・・・嘘・・本当に・・・」
するとそこにはシンディの後ろに透けて輝く白い羽の様な4枚のオーラの膜と更に頭の上に白金に輝く輪が存在していた。
「どう?ちょっとは信じてくれた?」
寿々は思わず大きく何回も頷いた。
「それで、私の存在の話しはともかく。あなたの話をしなくてはいけないのだけれど」
シンディはそこまで言うとぐっと息を飲み込み、やや厳しめな表情で寿々に話した。
「寿々さん。あなたの上の存在がとてもあなたに伝えたがっているから私はそれを伝えるわ」
「上の存在・・・」
こうやってハイヤーセルフとの交信をしてもらうのは丸の時以来だった。
前は何だかんだで全部当たってしまったし、シンディは何と言っても丸にそれを教えた存在でありしかも人間でもなく天使からの言葉だ。
もはや何も疑う事などないのは確かだ。
シンディは寿々の手を取る。
「・・・・・・〝神の力を侮るな。内なる悪は人の心なり。決して道を誤るな。運命はまだ切り開かれていない。己が心を信じよ。道の遥か先に答えはある〟」
『・・・内なる悪は・・人の心なり・・・』
寿々はその言葉を繰り返し心の中で呟いた。
しかしシンディは
「あぁ~・・・ちょっとごめんなさいね・・。何なのかしら・・。このだいぶ曖昧な言葉は・・。おかしいわねぇ。本当はもっと具体性のある言葉を伝えられるはずなのに。何だかあなたの上の方もまた難しい考え方しているのかしら?ちょっと今の言葉上手くなかったわ・・」
と何だか自分を責める様な言い方をしたが寿々は
「あ・・いえ。何となくですが。意味は分かりました」
と答えるものだからシンディの方が驚いていた。
「え?今ので??」
「あ、はい。多分」
『やっぱり本人の上位者だからかしら?こんな曖昧な言葉でも通じるものなのね。ていうか曖昧な方が通じる人ってのも珍しいわね・・』
と寿々をなんとなく不思議そうな顔で見ていると。
「あ・・・あのシンディさん」
「?何かしら?」
「一つ聞いてもいいですか?」
と寿々が真面目な顔をしてシンディの目を見る。
「ええ。勿論」
「・・・引き寄せの術って俺でも使えるものなのでしょうか?それとも貴方みたいな天使とかでないと本当の力って使えないものでしょうか?」
寿々は自分が史の魂を引き寄せたから運命が捻じれたのだとそう信じている。
だからこそ本当にそんな事を自分が出来たのかそれを知りたかったのだ。
「・・・・そうね。普通はできない」
「・・・・・・」
「でもあなたは出来ると思う」
「・・・?それは・・どういう」
「あなたは・・あなたの魂はね。いわゆる霊的な進化の第7階層にある。魂は第7階層に行くともう転生はされない。つまり魂の進化でいえば〝上がり〟になるの。その後は高次元の世界で任務につく。基本は上位者となってアカーシャに入り自分の多次元世界に及ぶあらゆる世界線の番人になるの。その後交代になる自分が多次元世界のどこからか必ずやってくるからその時に今度は再び降りて天使になるか、それとも更に上の神を目指すかを選ぶ事ができる。神になればもう二度とこの世には戻ってこられない。しかし天使としてこの世に戻って来ても人間には戻れない」
「じゃあ俺は今の人生が終われば・・もう転生はされないってことなんですか」
「そうよ。今のあなたは言わば最終試験ってとこね。あなたの人生が何だかんだでハードモードなのはそういう事。しかも簡単にその命を終わらせる事も当然できない。何故ならば万が一〝自死〟を選んだ場合、また0からやり直しになる。自死は〝振り出しに戻る〟なの。そうすると再び植物、虫、動物、ようやく第4階層から人間に上がり、その後第7階層までが人間。その上が上位者。更にその上が神。その順で魂は進化してゆく。勿論途中で自死を選べば振り出しに・・その繰り返しよ。でもあなたは今第7階層。だから霊性も高く上位者に近いあなたはその力の一部を使う事が出来てもおかしくはないの」
「・・・俺は・・この人生が終わったらもう二度と人としてこの世の魂とは出会えないんですね・・」
寿々は史の魂と過ごせるのがこの人生で最後なのだと思うと途端に胸が苦しくなった。
「・・そうね。だからこそ悔いのない人生をしっかりと送らないといけないの。誰かと出会って誰かを愛して誰かと共に過ごせる事は決して当たり前じゃない。時間や年齢、タイミング、性別、状態、家系、血筋、宗教、国籍・・・例え出会えても愛し合う事は愚か、話す事さえ叶わない事の方が遥かに多いんだから。だから誰かと共に過ごせる時間は間違いなく奇跡なの」
そう言ってシンディは寿々に笑顔で答えた。
その笑顔を見て寿々も何だか少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。
『・・・悔いのない人生を・・・か』
そうこうしているうちに史が再び鳥居を潜りシンディに言われた通りのアイスコーヒーを3つ持って戻ってきた。
「お待たせしました」
史はまだ少しだけ不服そうな様子だ。
「あら、悪かったわね」
そう言うとシンディは近づき、持って来たアイスコーヒーを史の手をがしっと握りながら3つとも受け取る。
「?」
「ん?あ~ごめん。私これからこのコーヒーもってお話しに行く相手がいるから!それじゃあ今夜はわざわざ呼び出しちゃって悪かったわね!おかげで私のテリトリーが穏やかになって本当に助かったわ。また何かあったら連絡するかもしれないからその時はよろしく!」
そう言って神社を去ろうとしてところで
「あ!」
と言って再び戻ってくると史の耳元で
「いいこと。ちゃんと相手の体を労わってあげなさいよ!どっちも初めてなんだから。若いからって暴走して傷つけるんじゃないわよ!男同士って女の子とよりデリケートな事多いんだから!わかった?」
と言われると史は顔を真っ赤にさせて
「!!こ・・・これだからハイヤーセルフは嫌なんだよ!!」
と颯爽と過ぎ去るシンディに文句を言った。
「・・・?どうしたんだ何言われたんだ今」
と寿々が気になって史に近づくと顔を真っ赤にして怒り
「もぉ~本当に何でもないです。丸さんもシンディさんも勝手に人の見られたくないところばかり見て来るのはマジで許せないですね!」
「見られたくないところって・・」
「ええ??もういいですよ!帰りましょう!!」
そう言うと史はまだ怒りながらで反対側の靖国通りの方へと歩き始めた。
寿々は追いかけながら
「・・え?ハイヤーセルフってそんなところまで勝手に見せて来るのか?」
「だからもう・・・」
と最終的には力なく肩を落とした。
帰宅したのは午後11時過ぎ
夕食もまともに食べていなかったので帰宅後はすっかり疲れ果て、二人してソファへ崩れるように腰を掛けた。
「夕飯どうします・・」
「・・ああ俺はもういいかな・・食べるにしても冷食かカップ麺でもなんでも」
「じゃあ俺とりあえずお湯沸かします」
そう言いながら体を動かすのも怠そうに立ち上がる。
「・・・・・明日でお前の教育担当終わりなんだな・・・」
寿々はソファに横になりながら虚ろな目でキッチンに立つ史に向かって呟いた。
「・・・・そうですね」
史はやかんに水を入れながらその言葉を噛みしめるように答える。
「な~んか色々とあった5ヵ月間だったな・・・。幽霊団地から始まって・・オシラサマがあって・・ストーカーの一件があって・・・クリスマスは仕事詰めでごまかしたなぁ~はは」
「・・・俺は小さいおじさんが撮れた時は本当に興奮しましたよ。それに変化する心霊写真も」
「検証スマホ心霊写真が今でもそれなりに読まれているのってやっぱりあの変化する写真と小さいおじさんのネタがあったからだと思うんだよ」
「それから、ドッペルゲンガーですね。まあ、あれは結局汐音の仕業だったわけですが。・・あ!そう言えばあの時寿々さんが俺のドッペルゲンガーが何しているところを目撃してあんなにショックを受けていたのかまだちゃんと聞いてなかったですよね?」
「はぁ!?あれはもういいって!!」
寿々は少し体を起こしてうんざりした顔で答える。
しかし史はどうしても聞きたそうにソファまでやってくるとそのまま寿々を持ち上げ無理矢理隣に座り
「いや、今だからこそ聞いておきますよ。で何を見たんですか?」
「えぇ・・・史が女の子と腕組んで仲良さそうにラブホ入って行くところを・・」
と言うと史はその言いづらそうにしている寿々の顔を見て
「くく・・・・なるほど。まあそんなとこだとは思っていましたけど」
と堪えられずに思わず笑ってしまった。
「あん時はタイミングがタイミングだったから!・・本当に俺は何でこんな奴の事で一週間も悩まされなければならなかったんだ!ってもう怒りと自分の頭の中が史の事でいっぱいになっているのがショックで・・」
史はあの時の事を思いだして未だに怒り出す寿々が愛おし過ぎて抱きしめずにはいられなかった。
「すみませんでした。勿論俺のせいじゃないけれど。でもそんなにも俺の事を考えていてくれて嬉しいです」
「・・・・そうだな。そういう事なんだよな」
寿々は史の腕に包まれ、何だか急にほっとして気が抜けてきた。
そう言えばここ一週間は何だかんだギクシャクしていて、こうやってくっついて過ごす事もなかったな、と寿々はそのまま史の胸に寄り添うようにもたれ掛かる。
「その後は群馬行って・・・そして上野にも行ったな・・」
「初デートですね」
「だからあれはそういうのじゃなくて・・・。でもまあもうそういう事でいいか」
と寿々は諦めたように認めた。
「・・・ケセランパサランを山口先生からもらったのもそのすぐ後でしたね。その後の館山の遭難とラブホでの憑依・・あれも1ヵ月前の事だなんて本当に信じられないです・・・」
「館山の遭難は本当に身体的に死ぬかと思ったよ・・。あと、俺にしてみればラブホの憑依は記憶にない事なので謝るより仕方ない事だけど・・」
「今思えば笑い話ですが、寿々さんが俺を持ち上げて投げた時は本気で殺されるって怯えましたよ」
「はは・・それも本当に記憶がなくて・・その、ごめん・・。そうだな・・その後も記憶無くしてたし・・。今考えてもぞっとするよ死を呼ぶ呪いの絵画と悪魔憑依。・・・・・・そうだ知念さんと会ったのもその時だったな・・・そして皮裂村に・・それから・・・」
寿々はそう言うとやっぱり辛すぎてどうしようもなくなり、史の方を向き直すとそのままその広い胸にしがみ付くように抱きついた。
「・・・・・やっぱり辛いな・・・・」
「・・そうですね・・。俺・・・・自分で思っている以上に強くないんだと。今回の事で良く分かりました。・・・勿論知念さんが亡くなったショックも。寿々さんが記憶を取り戻してどうしようもなく苦しんでいるのも・・そのどちらもどうする事もできなくて・・・」
寿々はその言葉を聞いてようやく史の辛さに気づいた。
『・・そうだよな。辛いのは俺だけじゃない。史だって辛いのは当たり前だよな・・・。俺また自分の事だけしか見えてなかった・・。本当にいつまでたっても俺は・・・』
寿々はゆっくりと史の胸から離れ
「ごめん・・・・。俺は目の前にいる史の事をもっと大切にしてやらないといけないのに・・。いつも困らせてばかりで・・我がままで・・・本当にごめん」
と目を真っ赤にさせ今にもその瞳から涙がこぼれ落ちそうなのを堪えて史に謝った。
史はそのまま再び寿々を深く抱きしめると
「・・・もうこの事で一人で悩むは止めにしましょう・・・。辛さは二人で分け合えばいいじゃないですか・・・せっかく一緒にいるんですから」
と耳もとで囁く。
寿々も頬を伝う涙をそのままに
「・・・・・・ありがとう」
と一言だけ返した。
翌日
寿々と史は最上の席の前に呼ばれ
「三枝君。今回は色々と業務変更に対応してくれて本当に助かっているよ。それで本日で史君の教育担当が終わる事になるけれど。僕からも今一度感謝をさせてもらいたい。本当にありがとう」
そう言って最上は寿々に頭を下げた。
「いえ・・。俺もちゃんと指導出来ていたのかまだ不安しかないですけど。それでも史はこれからは一編集者として他の皆とも一緒に仕事をやっていけるくらいには成長したと思っています。もうただの編集見習いのアルバイトではありません。それだけは自信を持って言えます」
寿々はそう堂々と最上に伝えた。
それを最上はいつも以上に柔らかなニコニコ顔で聞いている。
「史君はどうかな?これからはそれなりに一人でやる仕事も増えると思うけど。まあ、その場合は三枝君は勿論他の皆に聞けばいいんだけど。自信はありそうかい?」
史はそれを聞いて、本音を言えば半分くらいはまだ自信はなかったのだが。
「そうですね・・・。まだ出来ない事は沢山あるのでそれはその都度皆さんに指導して頂こうかと思います。明日からは仕事の時間などが不規則になるので。まずはそれに対応できるよう頑張ります」
「そうだね。平日は授業が忙しくて来れない日もあるだろうからその辺は上手い事調整して。体を壊さないようしっかりとよろしく頼んだよ」
二人が席に戻ると、史は
「寿々さん」
と声を掛けると振り向いた寿々に分厚い束になったファイルとメモリーカードをドサッと渡した。
「・・・?これは?」
「俺の企画書です」
「企画??この量が??」
そのファイルの中身はざっと見積もっても300ページ以上はありそうだ
「勿論今までボツになったネタも練り直してもう一度差し込んでます。それとやっぱり心霊ネタが多いですが、今の寿々さんなら全部とはいかなくても半分くらいはいけるんじゃないかと思うので。どうか俺の企画を引き継いでください。お願いします」
「引き継いでって・・・これお前が自分でどうにかして出した方が・・」
「俺は明日からまた基本午前中は編集部に来られませんので、会議には出られません。それに企画書も誰かにお願いするとなれば当然寿々さんしかいません。あと俺、この後もやりたいネタがまだまだ沢山あるのでもっと企画書増えてゆくと思います」
そう言うと史はニコっと笑う。
「だからこれからも俺のやりたい、載せたい、読みたいネタをどうにか誌面に載せられるよう手助けして欲しいんです。お願します!」
史は寿々に頭を下げた。
寿々はそのファイルを開けてチラッと読んでみる。
どれも史が本当に載せたいと思って熱を込めて書いた企画書ばかりだ。
これを今まで学校に行って仕事をして勉強をして、今は家に帰ったら家事をして・・・その合間にもこんなにも情熱を向けられるのだからやはり史には敵わないな。と寿々は少し悔しくまた羨ましく・・そして何よりも嬉しくもあった。
そしてファイルを閉じると
「わかった。じゃあ何とか毎回ここから俺も出来そうな企画を選んで一緒に会議に出してみるよ。もしその企画が通った時は基本はお前が責任もって進めろよ。勿論できない分は俺も一緒に手伝うからさ」
と言って寿々は笑顔で史に答える。
「ありがとうございます」
その後午後7時には二人して会社を出ると駅に向かって歩き出す。
寿々も史もこうやって普通に話しながら帰るのを本当に久しぶりだと感じていた。
「それにしても新入社員が二人も来るのが決まっているなんてアガルタにしては珍しいですよね」
「そうらしいな。俺はちょっとその辺のアガルタの事情は良く分からないんだけど」
「基本アガルタを希望して入社して来る人っていないから研修中も希望者しか来ないし、去年は一人だけ辞令で来た人がその後一ヶ月で辞めていきましたよ。本当に何が気に食わなくて辞めたのかさえ分かりませんでしたけどね」
と史は全く解せないと言った顔をする。
「でも今年は最初からアガルタ希望者が二人もいるんだから凄いよな!」
「寿々さんどんな人が来るのか聞いてますか?」
「一人は女の子。一人は男ってだけ」
「・・え。もしかして寿々さんの担当って・・・」
「女の子の方らしい」
「・・・そ~うなんですねぇ・・・」
と嫌な予感とばかりの顔で言われるものだから流石に寿々も
「あのなぁ・・。そんな顔して何かを疑われるような人間じゃないくらいは分かってもらいたいもんだよ・・俺はお前にどれだけ薄情な奴だと思われているんだよ・・」
「薄情とは思ってはいませんが。まあ正直すぐ近くで俺意外の教育担当をしているのを見せられるのは男女関係なくムカつきますね」
寿々はその言葉に呆れて
「頼むからいつもの不機嫌攻撃で俺と周りを巻き込むのだけは止めてくれよな・・・本気で」
「・・・約束は出来ませんが。努力はします」
その久しぶりの会話の楽しさも、いつも通りの帰り道も何だかその日ばかりはいつも以上に二人にとって心に残る時間となった。
寿々と史は移り変わる人生の言い知れぬ寂しさよりも、明日が楽しく嬉しい一日である事を祈らずにはいられなかったのだった。
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