第8話 ハイヤーセルフ
スマホのアラームが鳴り響き寿々は頭まで被せた掛布団から手だけ伸ばしスマホを探した。
時刻は朝の7時。
アラームは徐々に音を大きくさせ居場所を更に主張し続けている。
ようやく手が届きアラームを切った寿々はそこから10秒後、がばっと勢いよく布団を跳ね除けると起き上がりリビングへ出ると即座にテレビの電源をつけた。
テレビのニュースをBGMにスマホでもニュースサイトを見ながら歯を磨く。
チャンネルを全国放送からローカルへ切り替えて昨日の事故について何か放送していなかチェックし始めた。
トップニュースが終わりもうこれでトピックスが終わるかと思っていたその時。
『昨日の夜8時過ぎ。C市にある公営団地内において建物から女性が飛び降りたと消防に通報が入りました』
というアナウンサーの声に寿々は歯磨きの手を止め食い入る様に見入った。
『飛び降りたのはこの団地の4階に住む65歳の女性。搬送先の病院の発表によれば女性は重体で危険な状態ではあるものの現在は意識はあるという事です。警察は事件と事故の両面から捜査を行っております』
それを聞いて寿々は安堵しすぎて思わず歯磨きの途中だったのを忘れて口から泡が垂れそうになり急いで洗面所へ向かった。
思えば昨日の昼から何も食べていない事に今になって気が付いた。
寿々は身支度を済ますと会社近くのカフェで朝食をとるために足早に自宅マンションを後にする。
会社の最寄り駅までは二駅。何かあっても頑張れば一応歩いて帰れる距離だ。
寿々は改札を降りて会社までの道のりで改めて昨日の事を考えていた。
幽霊団地での取材、当間、佐藤、村田、虫の死骸、一家心中、黒い影・・・そして幻覚・・・。
寿々はその事を思い出そうとして背筋を凍らすとブルッと身震いをして体を縮めた。
更に昨夜最上が帰る直前に史と話していた自分を『能力者に頼んで呼び寄せた』という一件。
あの後すぐにどういう事なのかと史に問いただそうとしたが、史はすぐ応接ソファの奥の隙間から古びた毛布を取り出すとそのソファで寝に入ろうと横になってしまった。
「史、今のは一体どういう事だ?お前が能力者に頼んで俺を呼び寄せたってのは本当なのか??」
「・・・すみません寿々さん、明日も学校行ってからこっちなんで。もう休ませてもらえますか?」
「いや、ちょっと待て!!って言うか何でそこで寝ようとしてんの???」
史は毛布とフードを被りもう眠るんじゃないかという状態の中。
「僕色々と複雑なんですよぉ・・・・今は編集長に許可もらってここで寝てから朝早く家に帰ってるん・・・で・・す」
この間僅か10秒程度。
史は即寝落ちしてそのまま起きる事はなかった。
それで結局本題の答えは得られず昨日の話しは終わってしまったのだ。
常連のカフェで半日ぶりの食事を頬張ると、寿々はカフェラテをテイクアウトしそのまま会社へ向かった。
ビルに入ってエレベータ―を待っていると後ろから誰かが近づき、サッとエレベータ―の下行きのボタンが押される。
「お!おはようございます!!」
振り返るとそこいたのはアガルタへの異動初日に一人だけ寿々にニコニコと不気味な笑顔で歓迎してくれた唯一の存在。編集者の篠田が立っていた。
「あっと・・篠田さん、でしたよね」
寿々は曖昧な返事を返しながらそれでも脳内をフルに働かせ名前を引きだした。
サラサラな黒髪ロン毛にふっくらとした丸顔、見た目のインパクトが強すぎて名前が霞むレベルだ。
「はい!名前覚えてくれて嬉しいです!」
篠田は暑苦しさのある満面の笑みで寿々に答えた。
地下1階。
時刻は9時少し手前だ。
いいとよは基本フルフレックス制なので社員の平均的な出社時間は11時くらいとなっている。
部署によっては大半がお昼過ぎの出社という編集部も珍しくはない。寿々は大和の編集部にいた時は10時までには出社して何もなければ夜8時には帰宅するのがルーチンだった。
なので感覚的にはいつもよりは少し早い余裕の出社のはずだったのだが。
編集部に着くと既に全員の編集者と編集アシスタントがフル稼働しているのを見て唖然としてしまった。
一昨日と昨日は出社後手続きで人事課へ行ったりして少し遅れて編集部に来たので全く気がつかなかったのだ。
「おざーっす!!」
篠田は軽い挨拶を流しながら自分の席へと向かった。
「・・おはようございます・・・」
続いて寿々が小声で気づかれないようひっそりと奥にある自分の机へと歩き出す。
「三枝くーーーん!」
ぶっきらぼうな高い声でそう呼ばれドキっとして振り返った。
「は、はい!?」
「ねぇ聞いたよ?・・・キミ昨日あの団地で幽霊見ちゃったんだって??」
そう興味深々に話しかけてきたのはここではチーフと呼ばれている副編集長とほぼ同等の立場のベテラン編集者、丸早智子だ。
「え?誰にそれを??」
「そんなの編集長からに決まってるじゃない!ここアガルタでは進行中の企画はどんな情報でも共有必須だからね!」
すると丸の隣に座っている篠田がそれを聞いて驚いた様子で
「ええ!!マジで??三枝さん羨ましすぎでしょ!!俺もそれ見たいわぁ」
と食い気味に乗っかってきた。
『もしかして編集長が昨日、メンタル的に厳しそうだったら暫く休んでもいいよ、って言ってたのはこっちの方の理由だったのではないだろうか?』と思いゾっとした。
ここでは怪異はご褒美。寧ろ怪異や超常現象無くしてネタはなし!
当然なのだろうが寿々はまだそのノリにはついていけそうになかった。
「それとこの後編集長が戻って来たら早速打ち合わせと言う名の検討会議ね!昨日の事を踏まえてもう一度考え直さないとだから」
丸は自分の机に山積みになったゲラをひたすら赤でチェックを入れながら寿々に声だけでそれを伝えた。
「わかりました・・・」
寿々はようやく席に腰かけこの奇妙な空気から脱却しようとメールをチェックし始める。
すると入口から書類に目を通しながら最上が入ってきた。
「あ、編集長・・・」
と早速声を掛けようとするも寿々より早く最上の脇から編集者の一人、後藤が先に声を掛けそこで寿々の声は打ち消された。
『これはなかなかスピードが速くて、慣れるまでだいぶかかりそうだ・・・』と寿々は再び席に腰を下した。
時刻は午前11時半
ようやく会議が始まった。
出席者は編集長の最上、副編集長の吉原、チーフの丸、編集アシスタントの浅野そして寿々だ。
「まず最初に。もう皆知っているとは思うけれど、三枝君は昨日取材中に色々と大変な事があったので。ちゃんと配慮を持って発言に注意してもらいたい。いいよね?」
最上からの一言にまたもや寿々は感謝しかなかった。
「はーい!」とその言葉に返事をしたのは丸一人だけだったが。
「さて今回のこの問題になっている幽霊団地の特集についてだけど、前任者の松下君の事も含め僕自身はもうこれ以上進行するのは難しいんじゃないかと思っているんだ。皆はどうかな」
最上の意外な一言に寿々は驚いた。
すると
「えぇえ~~せっかく幽霊団地で幽霊と遭遇できたのに止めちゃうの勿体なくないですか??」
と丸は中止へ反対。
「私もそれには同意見ですね」
続いて吉原も反対という事だった。
「だって史も三枝君も何も責任ないじゃないですか??ましてやあのクズ松下の怪我は完全に自業自得だし」
『クズ!?』
丸はかなり口が悪いようで寿々はちょっとだけビクっとした。
「私もとにかくこの状態で記事にしないのは勿体ないとしか言えないですね。ただ問題は取材と言いながら写真も動画もないのでこのご時世説得力のある画像なしでは誰にも読んでもらえないかと思います。もし続けるのならばどうにか許可を取って1枚でも説得力のある画像を用意するのが必須かと」
吉原は既に続行のつもりで話しを進める。
「うん・・・。浅野君キミもう一度ここの団地の撮影許可がおりないか聞いてみてもらえないかい?」
最上は編集アシスタントの浅野に声をかける。
浅野は髪の毛が真っピンクで耳や口、鼻のいたるところにピアスをしており洋服もパンク寄りのゴスという編集部内でもひと際目立つ存在だ。
「そうですね。何度でも許可の申請は出しますよ。しかし写真についてはもう少し別の角度でコンタクトとってみてもいいですか?例えば団地内で全く関係のない棟に住んでいて少し頼めば室内写真を参照画像として提供してくれそうな方に連絡してみるとか。住居怪談に詳しいライターさんにも声かけてみます」
「うん、それいいね。じゃあそれで聞いてみて」
「あ~もしその室内写真がちゃんと載せられたら、あとは見出しはイラストでもいいかもしれないね」
と丸もそれに続いて浅野に注文をした。
「わかりました。じゃあそれも含め早速この会議のあとイラストレーターさんにも連絡してみます」
「三枝君はどう思うかい?」
『ここまで当事者不在で話しを進めてから、どう思うと言われてもなぁ・・・』
寿々は正直この会議に自分は不要なのではないかと途中からそう思って聞いていた。
しかしながら幽霊と言うか自分が黒い影を見た。というネタだけで特集ページを埋めつくすのはやはり無理がありそうだと感じた。
自分の見た301号室の幻覚も史の謎の能力も記事の中に入れるのは難しそうだし。
何よりも読者が読みたいのは本当に取材中の恐怖体験なのだろうか。
「そうですねぇ。僕はちょっとまだアガルタの読者層が何を求めているのかは分からないのですが。編集者やライターの取材中の目撃情報を全面に出しても魅力に欠けるような気がします。文言は見出しに取り入れるにしても・・・どちらかと言えば同じ視点、つまり住民の視点でいくつかパンチのある怖いエピソードを盛りに盛って紹介した後に、団地の歴史や過去の事件、それから2000年に起きたG県の騒動との比較をまとめ、最後に取材中にこんな事があった。くらいのおまけ程度に追記してから黒い影はこんな感じでしたと気味の悪いイメージイラストを乗せればより不気味な印象が残るのではないか・・・と」
そこまで話して寿々は4人全員が寿々の目をしっかりと注目しているのに気が付いた。
「え?え?・・・やっぱりなんかおかしい事言いました??」
寿々はその注目にドギマギしながら聞き返した。
最上は寿々の意見を聞いてパンと手を叩くと
「よし。じゃあそれでいこう!」
そのまま企画を通した。
「は、いや・・でももっと違う意見も・・・」
寿々は最上の即決の速さについてゆけず思うように言葉が出て来なかった。
「あと住民のエピソードもう少し増やせるといいかもね!」
丸も寿々の意見に既に同意しており、そう浅野に向けて話しかける。
「では可能な限り元住民の方へも連絡をしてみましょう。確か松下さんが一度だけ提出した書類の中に住民リストがあったはずです。そこにいくつか携帯番号があったので、ダメ元でアポとってみます」
「じゃ、そういう事でいいかな三枝君?」
最上は最後に寿々に向かってそう聞いたが
『もはやここからどうやって否定など出来るというのだろうか・・・』
と寿々は観念した。
昼休憩から戻ってくると編集部内の人数がグッと減っていた。
どうやらお昼の時点ですでにライターさんと打ち合わせをしてそのまま取材に向かう編集者も多いようだ。
席に着くと向かって斜め横の席で丸がサンドイッチを頬張りながら朝と同じペースで作業を続けている。
「丸さんはいつもお昼はここなんですか?」
「う~~ん。基本そうだね」
「・・・・あの。さっきの会議なんですが・・・」
寿々はとても気になっていたので意を決して丸に聞いてみた。
「あれ、もしかして俺に決めさせるための会議でした?」
丸はその質問に少しだけ視線を寿々に移したかと思うとすっとまた手元に視線を戻し
「ま、そんな感じ」
とだけ答えた。
「じゃあ、もし俺が出来ないって言ってたら?」
「そりゃあ、あそこで打ち切ってただろうね」
寿々は少し考えてから
「・・・でもこの先出来上がったものがアガルタのイメージと合わなかったらどうなります?」
丸は再び顔を上げ、今度は寿々の目をしっかりと見て答える。
「載せるよ。少なくてもアタシはどんな記事でもちゃんと載せる。構成云々で雑誌イメージに合う合わないとかそういうのは関係ない。勿論最初の企画会議の段階でアガルタに載せる必要があるかないかそれは皆でちゃんと話し合って決めているし。それ以降何があっても原稿を落とすのは基本無しだから。出来上がってから万が一各所から差し止めの話しが出ればその時点でまた考え直せばいい!」
「・・・・・」
想像以上にパワフルな丸の意見に寿々の不安も自ずと解消されていった。
「だから今回の記事、なんでもいいからとにかく上げなさい。何かあればアタシや副編、編集長がいくらでもフォローするし、それがアタシたちの仕事だからさ」
「わかりました」
寿々はその言葉に励まされやる気が湧き上がってくるのを感じていた。
スリープからPCを復帰させ、気を取り戻してさてレイアウトを、と作業に取り掛かろうとしたその時。
「あ、そうだ三枝?」
会議中までは確かちゃんと『三枝君』と呼ばれていたような気がするのだが。丸はすでに寿々の事を呼び捨てで話しかけてきていた。
「はい?」
「ところで史とはどう??」
その質問に微妙な顔をする寿々
「う~~ん・・・・。色々と面倒くさい奴だとは思いますけれど。何て言うか探求心の塊みたいなタイプですよね。ちょっと心霊への想いが強すぎて怖いですけど」
寿々は昨日の取材を思い出しながらそう丸へ答えた。
「うんうん。そうなんだよね!まさにそれ!しかもあんだけクールそうな顔してるのに仕事させるとうっとおしいレベルでオタクの早口が始まるの。はは、あれ毎回見るの面白くてね~」
思い出しながら丸は堪えきれないとばかりに笑い出した。
「あ~確かに!」
「んで?なんか史からちゃんと話しされた??」
「??」
最初丸が何を聞きたいのか分からなかったが、昨夜の『能力者を使って呼び寄せた』の件を思い出し、もしかして丸は何か知っているのではないかと思い寿々は意を決して聞き返した。
「もしかして、史が俺を呼び寄せたって話しの事言ってます?」
「そうそうそれ!」
丸はご明察と言わんばかりに赤ペンを寿々に向けてビシっと差した。
「でもそれって本当の話しなんですか~??第一そんな事できる人間がこの世に・・」
寿々は疑い深く丸へ返答すると
「いる!!」
と即答されてしまった。
「なぜならばその人を紹介したのアタシだから」
と更に付け加えた。
「三枝。あんたまだ色々な事を偏った目で見ているから忠告しておくけれど。少なくてもアガルタにいるうちは嘘でもいいから全てを信じてみて。信じるふりでもいい。そうすると嘘だと遮っていた壁の向こう側にいるあらゆる存在が次第に認識できるようになってくるから。マジで」
丸はまるで我がごとのように寿々に話してくれた。
「まぁ・・・信じるふりくらいからなら・・なんとか」
寿々は力なく答えると、丸はタンッ!と机を手で鳴らし
「わかった。じゃぁ今からアタシが三枝の上にいる存在に話しを聞いてみる。もしそれが当たっていたらあと少しだけでいいから超常現象を信じてみて」
「上にいる存在・・・ですか?」
寿々は丸が一体何を言っているのか分からなかったが、そうこうしているうち丸は寿々の少し上の方を見つめそしてゆっくりと目を閉じた
数秒間沈黙が続く。
そしてその後丸はブツブツと聞こえないくらい小さい声で何かと話しをしをしているようだった。
「・・・・え?丸さん??」
「黙って!」
寿々は戸惑いながらもそれ以上何もできず黙り続け、時折自分の頭の上をちらちらと見ることしかできなかった。
「・・・・よし」
何がヨシなのか分からなかったが、丸は暫く寿々の頭上にいる何者かと交信をした後近くにあった付箋にスラスラとメモを書き始めた。
「ん」
そう言って寿々にそのメモを渡す。
その内容を見て驚いた。
『大凶・大型犬・黒い影・女難の相』
「女難の相???」
「まず大凶はおみくじの映像が直接頭の中に見えてきた。続いて大型犬は灰色の老犬だった。そして黒い影は何か塀のような壁の向こうに立ってた。恐らく三枝が昨日見たやつかもね。そして女難の相に関してはその文字その物が見えた・・・。これはハイヤーセルフって言って、高次元の自分を使って三枝にも存在する高次元の存在に話しかけることで色んなヴィジョンをもらうっていう所謂啓示のようなものよ。どう当たってる?」
丸の言っている事は理解出来なったが、要約すると占いの様な事が出来るという事なのだろうか?
それにしても書いてある事はほとんどが当たっていた。
しかし
「女難の相ってなんでしょうね・・・」
「三枝、彼女いる?」
丸はあまりプライバシーとかについては考えていないのか。
場合によってはそれセクハラになりますけれど・・。と思いながらも特別隠すような事もないので。
「はぁ、まぁ一応」
とだけ寿々は答えた。
「じゃあ・・・これは、伝えるか悩んだけれど・・・」
ともう一枚だけ付箋にスラスラと書き込んだ
そこに書かれていたのは
〖NTR〗
「ネト・・・ってこれ完全にセクハラですね!」
流石に寿々も怒り気味に丸へとメモ帳を突き返す。
「アタシに言わないでよ。アタシもその文字が最後に見えただけで正直伝えるか躊躇ったんだから。でもそれだけ気をつけろって三枝の上の存在が心配してるって事なの!」
「はぁ??」
寿々は先ほどまで丸のことを信頼できそうな先輩だな、と思い始めていただけにこういう話題に逸れた事が本当に嫌だった。
そうやってムスっとしていると突然寿々の背後でそのメモを覗き込む存在に気がついた。
「NTR・・・?寿々さんがですか?」
その声の主は史だった。
「うぁあああっ!!びっくりしたぁあ!!!」
寿々はびっくりしすぎて本当に3㎝くら宙に浮きあがっていたかと思う。
「丸さん・・・またハイヤーセルフですか??そうやって他人の悪い方や猥談しか聞けないのどうにかなりません??」
史は丸に向かって苦言を呈すように呆れた顔をして溜息をついた。
「だってしょうがないじゃん!!結局話しているのも高次元のアタシなんだから」
丸は口を尖らせ反省の様子もなく史に突っかかる。
「寿々さん。丸さんの言う事真に受けなくていいですからね。あの人いつも余計な事を付け加えてくるんだから」
と寿々を見返すと寿々は青ざめた顔をして
「お前・・・さっきの見たな・・・?」
「?・・・NTR」
「だぁあ!!やめろ!!なんか史に言われるの凄い不快なんだけど」
「大丈夫ですよ僕なんてもっとひどい事言われてますから。ね、丸さん」
と史は丸をやや睨むように見ると、丸は真顔で
「『ナチュラルボーンメンヘラ製造機』」
とだけ答えた。
「ナチュラルボーン・・・」
「ああいいです。繰り返さなくて」
唖然としながらつぶやく寿々の言葉を遮り
「あの人未成年に対しても本当にデリカシーゼロな事ばかり言ってくるので気をつけてください。耐性ないとマジで精神的にやられますんで」
「ひっど!別にアタシが普段からそう思っているわけじゃないからね!あんた達の上の存在が気をつけろって意味で発信したワードを高次元のアタシがそう受け取ってるだけなんだから!」
と反論する丸に対して史は軽蔑の目で
「高次元なのにワードが低次元なのが嫌なんですよ」
ズバリと言わんばかりに突っ込むと、丸もやや本気で機嫌を損ねたようでぷんすかしながら机の上の仕事へと戻っていったのだった。




