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オカルティック・アンダーワールド  作者: アキラカ
鬼神怪奇譚③

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第4話 寿々と史

 (ふひと)はふと目を覚まし、スマホをつけると時刻は午前2時だった。


 やはり今まで他人の家の他人のベッドで寝る事などなかったのでどうも寝付けない。

 それと寿々と真紀の話しが頭の中をぐるぐると巡り寝てもその事が気になって仕方なかったのもある。


 布団をどかして起き上がり

『・・・しかたない本でも読んでまた眠くなったら寝るか・・』

 そう思った時、隣の部屋からゴドっという何かが落ちる音がしてそちらの壁を見た。


『・・・隣って確か寿々(すず)さんの部屋だって言ってたような・・・。まあでも寿々さんもそりゃ眠れないよな・・』

 と史がしんみりとしているとふと隣の部屋から


「・・・・くくくくく」

 と不気味な笑い声が聞こえて来たような気がした。


『・・・え・・・笑い声?』


 どうにも気になって颯太の部屋から廊下に出て隣の部屋を見ると、扉が少しだけ開いており中から明かりが漏れていた。


 史はノックをし

「・・・寿々さん?」

 と廊下から声を掛けた。


「あ、史。悪い起こしちゃったか?」

 すると中から寿々がドアを開けてくれた。


「いえ、俺も眠れなくて・・」

 そう言いながらも史は何となく寿々の部屋が気になってちらりとそっちを見てしまった。

「俺もそう。いいから中入れよ」


 と言い寿々は自分の部屋に史を招き入れたてくれた。



 史は正直今回実家に呼ばれただけでも緊張していたのだが、まさかこのタイミングで寿々の部屋にまで入れてもらえるなんて思ってもおらず、一気に目が覚めた。


「まあ、そこ座って」


 寿々は先ほどの暗い顔とは違い、何だかとても嬉しそうな顔をしている。

「どうしたんですか?こんな夜中に・・」

 史もその感情の変化にむしろ心配になってきた。


「ごめんごめん、俺も全然眠れなくって。何か昔の写真発掘して見ていたんだよ」

 そう言って寿々は寿々と日向吾と真紀の写真が沢山入っているアルバムを史に渡した。



 その写真の数枚に目を通すと史は妙な感覚に襲われた。


 写真の中の寿々はとてつもなくに可愛く。しかも日向吾と一緒る時の笑顔が息を飲むほど素敵だ。

 と同時に目の前に何かチカチカとした星の瞬きの様な輝きが視えた。


『・・なんだこの・・チカチカ、というかキラキラ?』


 そう何かがパチパチと弾けているような光なのだ。

 そしてそのキラキラに紛れて断片的にだが、視点の低いところから子供の頃の寿々を見上げ物凄い速さで走ったかと思うと再び寿々の周りを駆け回る。そんなヴィジョンが一瞬視えたような気がした。


「どうした?」

 ベッドを背にすぐ横で床に座っていた寿々が心配そうに史の顔を覗き込む。


「いや・・・今。もしかしたら日向吾だった時の記憶が一瞬だけ視えたような気が・・・」

「マジで?どういう?」


「ちょうどこの写真の中の公園を子供の頃の寿々さんと走る、そんなヴィジョンです・・」

「マジかぁ。・・・この公園、昔の家から少し離れた場所にあったんだけど。俺それまで体調悪くて寝込んでいたから、久しぶりの公園でこの日めちゃくちゃテンション上がって。んで反動で次の日また寝込んでいた記憶がある・・・」

「ははは・・そんなにですか?」


 寿々は史の笑い声を聞きながら他のアルバムを出し

「で、さっきこれ見て笑ってた」

 と言いながら寿々と日向吾の変顔の写真を見せてきた


「・・・くくくく。顔ひど・・・!」


 史もその写真を見て笑いを堪えるのに必死だった。

 寿々の変顔もだが、日向吾の間抜けな顔がどうもツボった。

 寿々はそのまま次のページをめくりると

 そこには日向吾がいたずらした時や腹みせでアホ面する写真などがずっと続き、史は急に真顔になると


「流石にこれは思い出したくはないですね・・」

 と真剣に答えた。



 一通り日向吾の写真を見終えてると

「寿々さんの卒アルとかないんですか?」

 と言われるものだから寿々も

「え??あるけど見せたくないものナンバーワンだろそれ・・・」

 と嫌そうな顔をする。

「いいじゃないですか、ここまで見せておいてそんな」

 と史もそんなに気にする事なのか?と言わんばかりの表情だ。


 寿々は仕方なく本棚の下の引き出しから高校の卒業アルバムを取り出した。

「・・・ほい」

 何だかやっぱり嫌そうな顔をしている。

 史はそれを気にせずカバーから出すとアルバムをパラパラとめくった。


 そして程なくして寿々を見つけ。

「・・え。・・・この10年間でどこが成長したんです?」

 とこれまた酷い反応だ。

「ちゃんと成長してるわ!身長だってちょっとだけ伸びたし・・ちゃんと老けてもいるだろ・・」


「身長?・・・0.5㎝くらいですか?」

 史もつい意地悪そうに返す。

「おま・・もうそれ返せよ」

「嫌です」

 そう言いながら他のページに写る寿々を探しながら楽しそうにアルバムを見ていた。



 

 暫くして寿々は

「・・・俺今の状態だと。また周りの人達がどんどん病気や事故に遭っていくのかもしれない」


 寿々はベッドの淵に肩を乗せ、壁の方を見ながら急に弱音を吐いた。


 史はそれを聞いてアルバムの写真が一気に頭に入ってこなくなり、少しだけ黙り込むと


「そんな事はにはならないと思います」

 と寿々を見ずに、しっかりと断言した。


「・・・何でそう思うんだ?」


「・・確信はないのですが。俺がお祖母さんに言われた言葉です」

「〝どれだけ生まれ変わっても寿々を守ることだ・・〟って言われたやつか?」


「はい。俺は何度生まれ変わっても寿々さんを守り続ける運命にあるのではないかってそう思うんです。つまり、俺が守り続けている間は寿々さんは絶対に消える事はない・・・そういう意味だと俺は思っています」


 その史の言葉には何の確証も無かったが、いつも以上に自信を持ってそう言われ何だか寿々は救われたような気がした。


「俺に記憶はありませんが、日向吾がいた時寿々さんと周りの人はどうだったんですか?」


「日向吾がいた時・・・?確かに時々体調を崩す事はあったけど、一緒に過ごす様になってから急激に元気になって体力もついたし。何よりも体調を崩しても日向吾と過ごしているとすぐに良くなったって母さんが言ってた・・・それに俺の身の回りで怪我や体調を悪くする人もいなかったような気がする。勿論母さんもあの頃は本当に元気だった・・・。そうだ。確かに母さんが病気になったのも日向吾が亡くなってからだ・・・」


 史はアルバムを閉じると寿々を見つめ

「俺がいれば大丈夫なんじゃないですか?」

 とにっこりと笑う。


「・・・そんな事言ったら。お前俺と一生一緒にいなきゃいけなくなるじゃん・・」

 寿々も意味を理解せずについそう言ってしまった。

「俺はそのつもりで言ってますけど」

 と史はさらりと答える。


「・・・・・・・・・」


 寿々は数十秒間考え。


「・・・いや。その話はとりあず置いておこう。今この深夜の脳みそでは上手く処理できん・・」

 と寿々は頭と手を振った。


 すると史はアルバムをカバーに戻しながら

「いいですよ。別に寿々さんが答えや返事を先延ばしにしても俺の考えは変わらないですし。それに・・・気づいていましたか?」


「・・何を?」


「寿々さんって。俺の言葉を一度は必ず否定しますけど、その後絶対に自ら覆しているって?」


「!!?・・・・・・そうだったっけ??」

「そうなんですよ」


 寿々はそれを聞いて思いたる節しかなくて自分でも本当に自覚が無さすぎて急に怖くなってきてしまった。


「俺もこれからは寿々さんにばつんと否定された時は、後に肯定してもらえる可能性が高い!とポジティブに捉えてしょげずに頑張ろうかと思います」

 史はそう言うと立ち上がりもう一度にっこりと笑った。


 そして

「じゃあ、俺いい感じに眠くなってきたので部屋戻りますね。おやすみなさい」

 そう言って史は颯太の部屋へ戻っていった。


「・・・・・・・・そう・・なのか・・・俺」


 と寿々は自分の事なのに何だかとてつもなく恥ずかしくなってきてしまった。






 翌朝



 寿々は9時に目が覚め、寝不足を感じながらも着替えをして一階に下りるとリビングで史と母親の真紀がソファに座り楽しそうに会話しているのを見て少しだけほっとした。


 昨夜どうしても必要だったとは言え、真紀を酷く困らせる会話をしてしまった事を寿々は心の中でとても悔いていた。


「・・・おはよう」

 そう言いながら寿々はリビングのガラス戸を開ける。


「あら、おはよう寿々」

「おはようございます寿々さん」


 二人はすっかり打ち解けて一緒に笑顔で寿々を迎えてくれた。


「寿々?私と史君、もう先に朝ご飯食べちゃったから。あなたの分はそこに用意してあるから自分でよろしくね!」

 と真紀はリビングのソファからダイニングテーブルを指して声をかけた。


「うん・・・わかった」

 寿々は真紀のそのいつも通りの明るさに罪悪感を覚えながらも口元だけ笑うとすぐにダイニングテーブルについて用意された朝食を食べ始めた。


「史君は今日はどうするの?この後すぐに東京に帰っちゃうの?」

 真紀がそう聞くと

「そうですね。電車次第なんですが、動き次第すぐに帰ろうかと思います」

 と史は答えた。


 それを聞いた寿々は

「え?そうなのか?どうせ今日半日は電車動かないだろうからもう一日泊まって明日俺と一緒に戻ればいいだろ?」

 と離れたテーブルから声を掛けた。


「でも俺今日中に出さないといけない原稿があるので、もともと日帰りの予定でしたから。せっかくですが電車が動けばすぐに帰ります」

 そう寿々に向かって答えた。

「寿々はどうするの?今日は有給取ったって言ってたわよね?」


「ああ、うん。だから俺はもう一日家に泊まっていくつもり」

 寿々はそう言いながら


『・・・颯太や彰さんには悪いけれど、せっかく史と母さんが仲良くなって俺も何だか嬉しかったのに・・もう帰っちゃうのか・・。どうせなら電車が動かなければいいのに・・・』

 



 寿々の願いもむなしく、その後昨日の天気が嘘の様に晴れ渡り雪は午前中のうちにすっかり全て溶けてしまった。

 勿論電車も午後から通常運行になるとのことだ。


 寿々は免許は持っているが取ってから10年近く運転をしていない所謂ペーパードライバーだ。

 それに寿々の自宅には今は車が一台もない。

 生憎というか当然ではあるが、今日は金曜でまだ平日なので颯太を送迎に使う事もできなかった。


 史は荷物をまとめると近くのバス停に行く為に靴を履いた。


「真紀さんお世話になりました。ご飯とても美味しかったです」

 史はそう言って真紀にしっかりとお辞儀をする。


 真紀は目を潤ませながら、まるで当たり前のようにお辞儀した史の頭を撫でた。

「・・・・」

「私も史君に会えて本当に嬉しかったわ。絶対にまた遊びに来てね」

「・・はい絶対にまた来ます」


 そう言って史は玄関を出ると真紀に手を振り、寿々は史をバス停まで見送る為に一緒に外に出た。




「はぁ、すっかり天気になっちゃって・・」

 寿々は住宅街を歩きながら晴れ渡った群馬の冬の空を見て残念そうに呟く。


「?嘘でしょ?あの寿々さんがもしかして俺が帰るのを寂しがっているんですか??」

 史は本気で驚いている。

「そんなわざとらしいオーバーリアクションするなって」

 寿々も史が異様に茶化しているの気づき苦笑いをした。


「また来週会えるじゃなですか。何なら戻ったら日曜日にデートでもしますか?」

 と更に言うので

「だから俺らは別に付き合ってないから。デートとかはしないのな?」

 と呆れながら返す。


「ええ・・別に付き合ってなくてもデートしてもいいと思いますけどねぇ」

「はぁ?何だそれ。あ、あれか。《《関係の薄い関係》》ってやつか」

 と寿々がいきなりそんな事を言うものだから史も思わずびっくりして顔を真っ赤にさせ

「やめて下さいよ今こんなところでそんな話・・・てか俺にとって寿々さんは断じてそういうのではないので!」

 とムキになって反論した。


「いや、俺はともかく。お前女の子に大分最低な事言ってるよな・・」

 と寿々も正直引いている。

「最低なのは十分自覚してますよ・・・だからもうそういう事は絶対にしないと決めてアガルタに入ってからは全く何もないんですから・・・」

 と本気で気まずそうな顔をして歯をぐっと食いしばった。

 そして

「あんまり俺の性事情を揶揄するならば俺も遠慮せずに寿々さんの事を根掘り葉掘り聞きますよ?」

 と更にムキになるもだから寿々も思わず面白くなってしまい。


「俺?・・俺は・・・自分で言うのもなんだけど。本当に・・・」

 などと続けて話そうとするものだか史もその言葉に思わずドキドキしてしまい。

「本当に・・・?」



「本当に・・・・普通」


「ふ・・・普通・・?」


「相手に申し訳ないくらい本当に何の変哲もなく普通。何も特別な事をしてあげられない。第一に体力がない」


 そう言われて史も

「なるほど・・納得しかないですね」

 と寿々をマジマジと見た。


「でも大丈夫です。俺は体力あるので」

 と続けるので真顔で即座に

「お前との事を考えた事はないぞ。そしてそれはこれからも無いと思う」

 とばっさりと言い切ったところで寿々は


「!!!」

 と思わず夜に史から指摘された事を思い出しはっとして両手で口を塞いだ。



「・・・じゃあそれは期待しておきます。いずれ寿々さんから今の発言が覆される事を」

 と耳元でいやらしく囁かれると寿々は真っ赤になって怒り、思わず史の左肩にグーパンを入れた。

「いった!寿々さんに初めて殴られた!酷い!!」




 二人はそうこうしながら時間通りにバス停に着くと、史はそのままバスに乗り込み



「じゃあまた来週!真紀さんによろしく伝えておいてください」


「わかった、また来週な!」


 と寿々が手を挙げると、バスの扉が閉まり史も軽く手を振りながら先に東京に帰って行ってしまった。



 寿々はバスが見えなくなるまで見送ると、何だか急に胸の奥にぽっかりと穴が開いたような虚しさを感じ。自分がすでに史の事をただの年下の仕事仲間としてではなく、精神的なパートナーとして受け入れている事に気づいた。


 そしてどう考えても史に支えられている部分の方が大きい事を恥じ、自分も史に何かしてあげられることがあるだろうか・・・・・とそう本気で思うようになっていた。







 史は電車を乗り継ぎ高崎駅から再び渋谷を目指して湘南新宿ラインに乗り込む。

 しかし午後からの運行という事もあり、グリーン車は満席でどうにも座れそうにない。

 一応チケットを買ってしまったので、しかたなく降車口付近のスペースで待機し空きが出るのを待つことにした。



 そして走り出す外の風景を見ながら暫く瞬きもせず何かを考え込むと。


「・・・・・・」


 史はスマホを取り出し検索ワードに〖神送り〗と文字を打ち込んだ。



今後の創作の為にも是非!感想と評価へのご協力をよろしくお願いします!

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