第3話 ドッペルゲンガー大捜索作戦!!
寿々は自宅に戻ってから、とにかく全てを忘れようと布団に潜り込み眠る努力をしてみた。
しかしながらまだ夜の8時前だ。
流石に眠る事など出来るわけもない。
結局、ゴロゴロと何度も寝返りをうちながら最終的には布団を跳ね除け起き上がった。
「・・ったく、なんで俺がこんな事で変に悩まないといけないんだ!」
するとそこに、チャットアプリの通知音が鳴ったので仕方なく確認すると、それはアガルタ編集部のグループチャットの通知だった。
普段この連絡網で通知を取る事なんてほとんどないので、寿々も何事かと思いびっくりした。
するとそこには丸が、
〖史のドッペルゲンガー大捜索作戦!!〗
というタイトルと共にルールと内容が一通り書かれたメッセージが連続で送られてきた。
寿々も思わず、
「史のドッペルゲンガー・・・??」
と部屋の中で大声を出してしまった。
そしてそこには、昼間に浅野が見た史のドッペルゲンガーと思われるその存在の特徴と、普段の史との相違点まで詳しく書かれていた。
〖偽史の特徴はとにかくやたらニコニコしていて気持ちが悪い。女と一緒に歩いている可能性が高い。あと史は今自転車で移動しているので、自転車からは絶対下りないように言っている。もし自転車を押していなかったり、ただ歩いている史を見かけたら偽物の可能性が高いので注意せよ!!〗
と書かれた内容が送られると立て続けに、
篠田、浅野、菊池、中嶋、吉原、そして史が〖了解〗と丸のメッセージに続いた。
「・・・・何やってんだこの人達??しかも副編までも参加してる!?」
〖少しでも何か不審な目撃があったら逐一報告をするように!〗
という丸のメッセージと共に一旦チャットアプリは静けさを取り戻した。
「・・・・確かにあの時の史は鞄も背負ってなかったし、自転車も押していなかったな・・・」
寿々も今頃になってその事に気付いた。
『すると俺が見たのって・・もしかして本当にドッペルゲンガーだったのだろうか?』
20分くらいして、一番最初にメッセージを送ってきたのは中嶋だった。
中嶋はヒカリエ付近を捜索していたようだが、
〖ヒカリエで史君らしき人物を目撃!〗
と共に人混みの奥に史っぽい姿をした人物の写真が送られてきた。
その写真を見る限り、本当に史っぽい背丈で横顔も良く似た若い男が微妙な角度で写っている。
するとすぐに、
〖俺は今中央病院前にいますので、それは俺じゃありません〗
と史が病院をバックに自撮りした写真が送られてきた。
続けて丸が、
〖中嶋それ見失わないように後をつけて、様子を報告して!〗
すると中嶋は、
〖ラジャー!〗
と返信した。
中嶋は丸に言われた通り、長身の銀髪を目印に数メートル距離を置いて後ろをつけた。
偽史らしき人物は、そのまま施設内に入るとスタスタと歩き人混みを抜けてゆく。
中嶋も見失わないよう必死で追いかけるが、いかんせん偽史の脚の長さと小柄な中嶋とでは歩幅が違う。中嶋がどれだけ小走りで追いかけてもその距離をどんどん離されていった。
そして通路の横から背の高い外国人集団が横切った次の瞬間、エスカレーター付近で中嶋は偽史を完全に見失ってしまった。
「あれ?・・・・」
中嶋は上行き下行きどちらのエスカレーターもすぐに確認したものの、どちらにもその姿はなく、辺りも注意深く見回してみたがやはりそこには史らしき人物はどこにも見当たらなかった。
〖すみません!ヒカリエのエスカレーター付近で完全に見失いました!〗
と中嶋からの連絡が入る。
「くっそぉ。中嶋~!ロストするの早すぎるだろ!」
と通知を見た丸は1人悔しそうに呟いた。
一方いいとよから一番離れた猿楽町付近を捜索していた篠田は、歩く途中でばったり菊池と出会い二人して中嶋の報告を確認していた。
「あちゃぁ・・・中嶋さん見失っちゃったかぁ~」
篠田はグループチャットを見ながら悔しがった。
「でも確かにこの写真見る限り横顔が史君によく似てますよね・・・」
と菊池がまじまじとスマホを確認している。
「でもそうなると、本当に史君のドッペルゲンガーが今まさにこの渋谷を闊歩しているってわけですよね?マジ不思議ですね・・!」
と篠田も興味津々にその写真を眺め、
「・・まーでも正直この写真だけだと・・判断は難しいかなぁ・・」
と付け加えた。
「ところで、何で急にドッペルゲンガーを探せって事になったんですか?」
と菊池は篠田に聞いた。
「え?・・・あー何でって言われてもなぁ」
篠田は答えづらそうにごまかしたが、
「やっぱり三枝さんが理由ですか?」
菊池はストレートに聞いてきた。
「いや、それは俺からは何とも言えないっすよ・・」
篠田も今回の件に関しては直接聞いていなかったが、日中に丸と史がこそこそと話しているのは見ていたので、多分そうだろと勝手に思っていただけに過ぎない。
「史君ってマジで三枝さんの事が好きなんですかね?篠田さんはどう思います?」
菊池は立て続けに篠田に質問してくるものだから流石に篠田も、
『俺に聞かんでくれ!てか菊池さん机目の前で二人の行動見てて分からんかったんかい!』
と心の中でツッコミを入れた。
「さぁ・・・俺も良くは分からないっす・・」
とごまかして何とか話しを終えようとするも、菊池は更に続ける。
「でももしそれが本当だとすると、なんか正直気の毒ですよね・・」
と本心からそう思っているとばかりに言った。
「気の毒・・?とは」
篠田も思わず聞いてしまった。
「だって三枝さんってそっちじゃないじゃないでしょ?この前まで彼女いたし。それに史君だって多分別にゲイってわけでもないだろうし・・・」
とだいぶセンシティブな話しを振られ、篠田は困惑した。
「・・なんで菊池さんはそう思うんですか?」
篠田は思わず菊池に問い返す。
「いやぁ、篠田さんにこんな事言うのもなんですが。別に隠してもいないので言いますが。俺、ゲイなんですよ」
篠田は菊池の突然の発言に数秒間固まった。
「な・・なんで今それを俺に?」
「いや別に篠田さんにってわけじゃないです。本当ただの会話なので深く考えないで大丈夫です」
と菊池は冷静に話し更に、
「だから目の前で二人が楽しそうに、時には険悪になりながら話している姿を見て不思議に思っているんですよね。・・何で二人とも異性愛者なのにこんなにも距離が近いんだろう?って。あれ?友情ってこんなにも距離が近かったっけ?それとも異性愛者同士でも恋愛って出来るものなのか?って」
篠田は菊池の話しがあまりにも生々しくて半分くらいしか頭に入って来なかったが、菊池は冗談で話してるわけでもなさそうなので変な態度を取るのだけは駄目だと思った。
「ん~・・どうなんでしょうね。俺は同性同士については全くわからないので、あくまでも感情面での理屈ですけど。史君の場合は逆だったんじゃないですかね?先に好きがあって性別は後からくっついてきたみたいな?自分が同性愛者だと気付いてから誰かを好きになったわけじゃないからしがらみがないのかも・・・・すみません、俺ちょっと適当言ってますね」
篠田は話しを途中で止め笑ってごまかした。
「だとすると本当に羨ましいです。と同時にやっぱり史君が気の毒に感じてしまいます・・・」
菊池は恐らく自分や自分の周りの人達の経験から同性同士の恋愛の辛さを沢山知りすぎているのかもしれない。だから史を見ていて歯痒さしかないのだろう。
しかし篠田はやはり自分ではそこの感情がわからないので、あくまでも悲観的でなく楽観的に呟いた。
「でも二人の未来は全くわからないですからね。三枝さんだって史君の事が嫌いなわけじゃないし。別に二人が世間一般で言う同性同士の恋愛にならなかったとしても、別の方向でその垣根を超えた関係にはなれるんじゃないですかね?ま・・・俺の発言は適当なんですけどね」
と篠田は更に困ったように笑った。
菊池はその話しを真面目に聞いてぼそっと、
「いいなぁ・・・」
と呟いた。
するとそこへ、アプリの通知音がして二人はお互いのスマホを確認する。
〖現在センター街ですが、見つけました!私が昼間見た、偽史君に間違いありません!!オーラが白です!〗
と浅野からの通知だった。
浅野は人混みの中、どうにか偽史を見失わないように必死に追いかけた。
「あ~もう!何で水曜日だってのにこんなに人が多いのよ!」
浅野は人の往来の波をかき分けとにかく進んだ。
浅野の目の前にいる偽史と思しき人物は、昼間に見た時とはまた違う女の子と一緒に歩いている。
確かに見れば見るほど史にしか見えない。
それにしてもドッペルゲンガーってこんなにも探せば見つかるものなんだろうか・・?
浅野はそんな疑問を抱きながら、人混みの中を必死に追いかけた。
とそこへ脇道から飛び出てきた人物とぶつかってしまった。
「きゃ!」
浅野は短く叫ぶとよろけて道に転んだ。
「ごめんごめん!浅野君大丈夫?」
よく見るとぶつかってきたのは何と副編集長の吉原だった。
「副編!!いきなり出て来ないで下さいよ!」
と浅野が怒ると、
「本当にごめん!それよりドッペルゲンガーは??」
半分会話を遮る様に謝罪するも、吉原はとにかくソレが見たくて仕方なかったのだ。
「え?」
そう言って浅野は、偽史ことドッペルゲンガーが歩いていた方向を確認した。
「あ、あそこ!」
そして人混みの奥の方にチラッとだけ見えた銀髪の人物を指差した。
「よし!」
吉原は一声上げると、転んだ浅野を放ってそのままダッシュで偽史を追いかけ出した。
「副編!絶対に見失わないでくださいよ!!」
〖今、私に代わって副編が偽史君を追いかけてます!方向は宇田川方面に向かいました!〗
浅野からの通知を見て一同は一斉に宇田川方面へと動きだす。
〖よしっ!こうなったら皆んなで囲い込んで何とか追い詰めるぞ!〗
と宮下公園付近を捜索していた丸も高架下を潜り宇田川へと直進した。
ドッペルゲンガーを追いかける吉原は、走っても走っても思った以上にその人物との距離を縮まらない事を不思議に感じていた。
「はぁ・・はぁ・・なんだ?何で全然追いつけないんだ??」
史らしき人物と隣で歩く女の子は本当に普通に歩いているようにしか見えないのに、何故か走るほどの速さでとても追いつけそうにない。
すると二人はセンター街を右に折れ、井の頭通り方面へと向かい出した。
吉原は肩で荒々しく息をしながら、もう脇腹が痛くてこれ以上走れそうになかった。
そして最後の足掻きでスマホを録画モードにすると、一瞬だけその二人の姿を映したところで力尽きた。
〖すまん!息が上がって追いつけなかった!!今、井の頭通りの方へ曲がっていったところだ!〗
と先程撮った数秒の動画と共にチャットに載せた。
〖今そっちに向かってます!〗
史からも連絡が入る。
〖アタシも今向かってる!今オルガン坂!〗
その通知が届いた同時に、丸は井の頭通りを左から自転車で走ってきた史とちょうど道でばったり遭遇した。
「丸さん、そっちはどうでした?」
「こっちでは見かけなかった!」
お互い来た道で遭遇しなかったので、行先はこのまままっすぐ進むと、いいとよの方へ戻る形になる。
「じゃあ、とりあえずいいとよの方へ向かいますか・・」
そう言って史は自転車に乗りながらそのまま井の頭通りを真っ直ぐ進んだ。
丸はその後ろ姿を見ながら、
「・・・・ところで史?今井の頭通りを向こう側からチャリで来たけど。あんた浅野が連絡した時にはどこら辺にいたの?」
と聞くと、
「俺は渋谷駅にいましたよ?」
と答えた。
「ふーん・・・・・・」
そう丸が意味深な返答を返すと史は、
「え?丸さん、まさか俺を疑ってるんですか?」
史は自転車に乗りながら、しかし丸の方を一切見ずにいかにも心外だとばかりに抗議した。
「いやぁ・・・?ただあんた、会社前で皆んなと、渋谷駅を中心に外周で回るって約束したはずでしょ?なんで駅にいたのか不思議じゃない?」
丸は人通りが少なくなった井の頭通りで立ち止まると、前を行く自転車に跨る史をジロっと睨みつけた。
『・・・嘘でしょ。喋りもするし自転車にも乗ってるし、アタシの名前も知ってる。これ本当に偽史なのか??』
丸も一気に悪寒が走った。
前を行く史は自転車に乗ったまま立ち止まると丸の方をチラッとだけ見てきた。
その顔は史ではなくまるで獣の様な形相をしていた。
「!?」
流石に全身の鳥肌が立ち、丸はその場で凍りついた。
「・・・誰だ」
丸が硬直したまま意識だけ集中させ偽史を力一杯睨み返す。
すると偽史は急に自転車を漕ぎだし、物凄い速さで右に曲がると一気に走り出した。
「っ!待て!!」
丸は固まった身体を何とかほぐし、駆け出そうとした次の瞬間。
「丸さん!!」
と今度は正面、いいとよ方面から史がやってきた。
「史!!『会議室の神棚にあるのは?』」
「『河童の皿』!」
「よし!ちゃんと史だな!偽物は代々木体育館の方に自転車で走って行った!追いかけろ!」
丸にそう言われ、史は急いで方向を変え自転車を走らせた。
全速力で自転車を漕ぎ、車道を走り抜け、代々木体育館前を過ぎようとした時。前方に確かに自分とよく似た背格好の男が見えた。
自転車も同じだしどう見ても自分のように見える。
史はドッペルゲンガーに追いつこうと必死にペダルを漕いだ。
そしてあと5メールほど近づいた時、前を行くそのドッペルゲンガーがふとこちらを向いた。
「!!?」
その顔は自分にも見えたし、しかしまた別の生き物・・・あえて言うなら狐の面のようにも見えた。
そしてそのドッペルゲンガーは振り返ったまま前を見ず、進行方向T字路にスピードを落とさず真っ直ぐに侵入し、次の瞬間左から来た車とぶつかった。
「!!!」
史は急いでT路前で急ブレーキをかけその光景を確認する。
・・・・・・・。
しかしそのぶつかったと思った車は何事もなかったようにそのままの速度で道を直進して行ってしまった。
そして道には先程まで前を走っていたはずのドッペルゲンガーは忽然と姿を消していた。
勿論轢かれて飛んで行ったわけでもない。
衝突音なども一切なかったのだ。
「・・・なんだ、今の」
史は車が過ぎ去った後の上空からヒラヒラと何かが落ちてくるのを発見し、急いで自転車を止めると車道へ確認しに出た。
そこに落ちていたのは・・・・。
「・・・形代?」
そう、ひとがたに切られた形代だった。
史はそれを拾おうとするとその形代はまるで砂のように崩れ落ち、対向車線の車の風でそのまま吹き飛ばされ消えてしまったのだった。
〖代々木体育館先、正面線路のT字路で見失いました〗
そう史から連絡が入り、一同は皆残念そうに一言ずつ返信が入るも、
〖では本日はこれにて大捜索作戦終了とします!とりあえず一度会社へ集合して下さい!〗
丸から声が掛かると、全員がいいとよまでまた歩いて戻り始めたのだった。
史は自転車で元来た井の頭通りへ引き返すと、そこには丸が待っていた。
「丸さん、ダメでした」
史がそう言うと、
「・・・・」丸はジッと史を見つめ、
「史・・・。さっきの偽物、アタシの名前を知ってた」
そう一言呟いた。
「は?」
史もその言葉に驚き、
「疑いたくはないけど一応念の為、ちょっとだけ上の存在と話をさせて・・・」
そう言って真剣な顔で史を見つめてきた。
史もまさかここで丸に疑われたままなのは困るので、
「いいですよ」
と言って自転車を降りると、少しだけジッとその場に止まった。
丸は史の頭の上の方を見つめ目を閉じ、ハイヤーセルフで高次元の存在と交信を始めた。
そして何かのヴィジョンを見た途端丸は驚いて2,3歩後ずさった。
「おまっ・・・・三枝に何してんの??」
「?」
丸は完全にドン引きしている。
丸には史が寿々を抱きしめているヴィジョンがはっきりと視えてしまっていたのだ。
史もそれを察し顔を真っ赤にしてその場にうずくまった。
「・・なんでいつもそういう視なくてもいいものが視えるんですか??」
「はぁ・・・本当若いって怖いわぁ・・・」
丸は仕方なくうずくまる史の背中をバシバシ叩き。
「ほら行くぞ。大丈夫、お前は間違いなく本物の史だな!」
と励ます。
しかし史は今後絶対に丸にハイヤーセルフで自分のヴィジョンを視せないようにしよう、と心に誓ったのだった・・・・。
こうして一同は再び編集部に戻ると、編集部では最上が一人暗がりの中お茶を啜り、皆の帰りを待っていた。
「やぁ、皆んなお疲れ様!史君のドッペルゲンガー逃げられちゃったの残念だったね」
「編集長!まだいらっしゃったんですか?なんかご迷惑お掛けしてすみませんでした・・」
といまだ興奮冷めやらぬ吉原が代表して最上に一礼する。
最上もチャットアプリを見ていたようで帰ってきた全員を労った。
そして全員が帰り支度をする中、史は最上の机にやってくると、
「編集長、お騒がせしました。結果的には逃げられてしまいましたが、恐らく俺のドッペルゲンガーはいた。という事で結論がでました。写真や動画は証拠としては微妙ですが・・・」
と報告をする。
最上は、
「でも史君はそのドッペルゲンガーを見た事になるんだよね?大丈夫なのかな?」
そう心配そうに聞くと、
「多分大丈夫だと思います・・・・」
と答えてから少しだけ沈黙した。
「?」
最上が他に何かあるのか?という顔をすると。
「実は・・ドッペルゲンガーを追った先で、急にその存在が消えて、その後道に形代が落ちていたんです。形代はすぐに崩れて消えてしまいましたが。・・・あと丸さんは俺のドッペルゲンガーに名前を呼ばれたとも言っていました。・・・何も無ければいいのですが、何となく嫌な予感もするんですよね・・。なので一応報告しておきます」
「・・・形代」
最上も一瞬険しい顔つきになる。
しかしすぐに元の表情に戻り、
「うん、わかった。とりあえず今日は皆んな気をつけて帰宅するように、いいね」
と笑顔で答えてくれた。
史は帰宅する為、駐輪場に着くといつものようにワイヤー錠を解き、そしてふと夜空を眺めた。
「・・・はぁ。寿々さんちゃんと明日来るかな・・・」
恐らくグループチャットの内容は寿々にも届いていると思うが、それでも身に覚えのない疑いが本当に晴れるかどうかはまた別の話である。
史は謎のドッペルゲンガー現象についてもまだ気になる事が沢山あったが、やはり一番気になるのは寿々の事だった。
とそこへ着信音が鳴り、史は画面を確認すると出ていた表示にびっくりして急いで着信に出た。
「寿々さん??」
史は緊張して少し上擦った声で電話をとった。
「・・・史。・・・グループチャット見た」
まだ元気が無さそうな声だが、史は寿々の声が聞けてとにかく嬉しかった。
「・・・なんか俺、まだドッペルゲンガーとか信じられないけれど。でも、史に何も確認せずに一方的に嫌悪感出してたのは謝りたい。・・・ごめん」
「・・・はぁ、良かったです。寿々さんが何を見たのかはわからないですけど。俺、絶対に寿々さんに嫌われるような事だけはしたくないので」
その言葉を聞いて寿々は自分が情けなくなった。
史はずっと自分の事を信じてくれているのに、自分はそれすら出来ていなかった事を。
「ところで、寿々さんは俺のドッペルゲンガーが何をしているところを見てあんな害虫でも見るよう目で俺を見てきたんですか?」
史はどうしても確かめたくて寿々に聞いた。
「が・・害虫を見るような目では見てない!!」
と寿々は思わず反論する。
「えー・・そうですか?俺めちゃくちゃ傷つきましたけど・・」
「そ、それはだから。ごめん、悪かったよ」
と寿々はもう一度謝った。
「で、何を見たんです?」
史は何故か執拗にそこを聞いてくる。
「いや、だから。・・・・史が女の子と腕組んで・・」
と言いかけてすぐにハッとした。
「で?」
史が聞き返すと。
「駄目だ。絶対に言わない・・・!」
寿々は誘導尋問されてると気づき話を打ち切った。
「ちゃんと説明してくれないと、これからどうやって誤解されないように行動すればいいか分からないじゃないですか?」
「しつこいなぁ!言わないったら言わない!!じゃあまた明日!」
そう言うと寿々は通話を一方的に切った。
「あれ?・・寿々さん?」
史はスマホを見て着信が切れた事を確認すると、少しだけ笑いながらスマホをしまい、
「はぁ・・・・
・・めちゃくちゃ可愛いな」
と嬉しそうに呟くと、自転車に跨りペダルを漕いで家路についた。
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