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オカルティック・アンダーワールド  作者: アキラカ
小人爺怪異譚【短編】

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29/102

第1話 心霊?妖怪?UMA?

 年が明けてから、初めてのアガルタへの出勤日。

 三枝(さえぐさ)寿々(すず)はいつもより少し早めの朝8時に出社した。


 編集部に着くとすでに相棒の(はだ)(ふひと)と篠田がスマホを見ながら和気あいあいと何かを話している。



「マジで今年は燃えたんだね~!!あ~あこれは酷い」


 篠田は史のスマホの動画を見て声を上げた。



「明けましておめでとうございます・・・どうしたんですか?」


 寿々が二人に近づくと

「あ、三枝さん!明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 と篠田は丁寧に新年の挨拶を返し、

「おはようございます」

 史もいつも通りに寿々に返した。



「何見てるんですか?」



 と寿々は興味ありげにスマホの動画に注目する。

 するとそれは元旦に史から届いた画像。例のデカいヤギのオブジェが燃える動画だった。


「これってあの写真の?」


 そう史に聞くと


「そうです。これがイェヴレのヤギです」


 当然と言わんばかりのノリで話す。

 すると史より興奮気味な篠田が


「この巨大な藁のヤギ、結構ネット界隈だとネタとして有名なんですよ。毎年必ずと言っていいほど放火されるのにここの地域は必ずこのヤギを作って、もうむしろ市vs放火犯みたいな攻防戦がネットでは盛り上がっちゃっていて。ここ3年くらいはずっと被害がなかったみたいですけれど、どうやら今年は燃えてしまったようですねぇ~・・・ああ!崩れる!!ははやばいね今年は」


 篠田はアガルタではネット関連の情報を主に担当していて、いわゆるSNSの中の人でもある。その他にもホームページでの情報発信の担当は勿論、ネットから拾ってきた情報からのあらゆる企画も担当している。


 しかし寿々にはそのヤギの面白さがいまいちわからず、篠田と史が盛り上がっている中にはどうも入れそうになかった。


「史はスウェーデンどうだったんだ?ちゃんと色んな話をして来れたのか?」


 と寿々が聞くと、史は寿々とは目を合わせず篠田とスマホの動画に集中しながら


「そうですね・・・・まぁそれなりでしたよ」


 と予想以上にあっさりと話しを打ち切ってしまった。



『は?・・・それだけ?』


 寿々は去年、史の色々と複雑な家庭環境やストーカーの事件などがあったせいで、史の内情を心配していたこともあり、久しぶりの母親との関係や会話などもう少し話してもらえるだろうと期待していたのだが、何だかその一言だけの返答に思わず拍子抜けしてしまった。


『・・もしかしたらあまり母親との関係も良くないのだろうか?』

 母親との関係についても詳しくは聞いていないのだが、クリスマスにスウェーデンにいる母親から正月にこっちにおいで、という連絡を目の前で聞いていた時は何だか少しだけ嬉しそうな顔をしていたのにな、と思うと何だかそれ以上は聞いてはいけないような雰囲気になってしまった。


 寿々はそれ以上会話に入り込むことができず、仕方なくそのまま自分の席につき仕事の準備へと取り掛かる事にした。


 そこへ丸と浅野が一緒に編集部へと入ってきた。


「あけおめ~!!ことよろ~~!!」

 丸が大きな声で挨拶をすると

「明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします」

 と続いて浅野が丁寧にお辞儀をする。


「明けましておめでとうございます」


 寿々もその挨拶に普通に返答をかえすが、丸はそのまま史に近づくと


「でぇ?どうだったのよスウェーデン!」

 史の肩をポンポンと叩きながら嬉しそうに聞いた。

「めちゃくちゃ寒かったですよ。やっぱりあそこは冬に行くところじゃないですね」

「え~!やっぱ雪凄いの??」

「雪はそれほどでもなかったです。気温も最低マイナス10℃くらいですし言うほどではないですが、とはいえ寒かったですね」

 と丸との会話は何故か自分の時よりかは盛り上がっているように聞こえた。



『あれ・・・?・・・・ん??・・・』



 寿々はその異様な温度差に疑問を感じずにはいられなかった。



 とは言え妙に勘ぐるのも良くないと思い、気を取り戻し仕事に集中しようとPCの電源を入れ社員用ページを確認するとそこに一通の社内メールが届いていることに気が付いた。



 〘心霊写真募集の記事について〙



 という件名で送られてきており、発信元が社報を作っている総務部の加藤綾音という人物からだった。



『明けましておめでとうございます。突然のメール失礼致します。先月末に社内ページに掲載されておりました心霊写真募集の件なのですが、もしお時間がありましたら一度お話しさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?』



 という内容のメールだ。


 寿々はもしかして写真が集まるかもしれないと、先月まであれだけ心霊写真を見るのも嫌だった事もすっかり忘れ、すぐにでも連絡を取り合いたいとメールの日付を確認すると届いたのが今朝の7時30分となっており、今ならワンチャン話せるかもしれないとダメ元で受話器を取って総務課へ連絡をした。



「・・・・・あ、おはようございます。お忙しい時間帯に失礼します。私アガルタ編集部の三枝と言います。そちらに加藤さんはいらっしゃいますでしょうか?」


 すると電話先に出たのがちょうど加藤だった。


『もしもし、おはようございます。私が加藤です』


 受話器の先から帰ってきたのは想像以上に可愛らしい女性の声だった。


「えっと・・・さきほど頂いたメールの件なのですが。もしかしてそれって心霊写真を持っていらっしゃるって事でしょうか?」


 寿々が単刀直入に聞くと


『あ、その。持ってはいるのですけど・・・これが本当に心霊写真なのかわからないので・・。一度確認して頂こうかなぁ・・・と』


 その控えめな喋り方に寿々は加藤に対する好感が高まるのを感じた。


「わかりました・・・じゃあ時間の方は・・・・。はい。大丈夫です、では12時半にお待ちしておりますので。はい。よろしくお願いします」


 すっかり加藤との会話でニヤニヤとしていた寿々は、右隣りの席に史が着席している事に全く気づかず、電話を切ってすぐ横の史がしらけた顔をしてこちらを見ているのに気づきビクっとして驚いた。


「!?」

「・・・何ニヤニヤしてるんですか?」

「ニヤニヤ?別にしてないよ・・・・あ、そうそう今話していたの総務課の人なんだけど。今日の昼12時半に心霊写真持ってくるから見て欲しいってさ」


「へぇ・・・そうなんですねぇ・・・」

 史はしらけた表情のままそっけない返答すると、そのままふいっと自分のPCモニターへと目を向ける。

 その様子を見て寿々は更に胸の内がモヤっとするのを感じた。

 

「・・・・・」


 どうも今日の史は朝から様子がおかしい。

 だが寿々も正直史の態度が先月末のように、自分にべったりとしているよりかはこのくらい微妙な距離間があった方がお互いにいいだろうと思い、それ以上不要な感情をぶつけるのはやめておこうと考えその後は淡々と仕事を続けた。





 昼の12時半。

 時間ピッタリに総務課の加藤がアガルタを訪ねてきた。


「あの・・・・」


 入口で入りづらそうに戸惑っているとすぐ横を通った菊池が応対する。


「三枝さーん!総務課の方がみえてます!」


 そう呼ばれてて寿々はハッとして時間を確認した。

 そして急いで入口まで加藤を迎えにいく。


「すみません、わざわざ来て頂いて!アガルタの三枝です」


 そう言って自己紹介をすると目の前には小柄で可愛らしい雰囲気の女性が中に入るのを躊躇っている姿がそこにあった。


「あ、総務課の加藤綾音(あやね)です!お忙しいところすみません!」


 おどおどした仕草と電話の時よりも何倍も可愛く聞こえる声に寿々は、可愛いらしい人だな~と素直に思ってしまった。


「あ、大丈夫ですよ。そんなに畏まらなくても。どうぞ中へ入ってください」


 寿々はいつも以上にうきうきなテンションで加藤を奥の応接ソファへと招き入れ。

 途中史の横を通ると、史が寿々のその態度を呆れたように眺めていたが寿々は気にする事もなく手招きで『お前も早く来い』と合図をすると史は渋々資料を持って応接ソファへと腰を掛けた。



「あぁ、じゃあ早速その画像を見せてもらう事ってできますか?」


 寿々が本題へと踏み込むと、加藤は緊張しながら「はい!」と返事をし、自分のスマホの画像フォルダを検索してその一枚を寿々へ差し出した。



「お借りしてもいいですか??」

「はい大丈夫です」


 そう言って出された画像を史と一緒に見る寿々。

 その写真には一本の古い桜の樹が写されていた。


 寿々と史はその写真を見て顔を見合わせた。

 何故ならばその桜の樹を二人共よく知っていたからだ。


「これって会社のすぐ裏にある古い桜の樹ですよね?」


 寿々が答えると


「はい。総務の方で発行している社報では春になると、必ずこちらの桜をバックに新入社員を撮影して載せるのが恒例となっているのですが。実はこの桜の樹、古くなって倒木の恐れがあるとの事でこの冬の間に伐採される事が決まりました。そこで感謝の気持ちを込めてもう一度桜の歴史などを振り返った記事を載せるためについ先日写真を数枚撮ったのですが・・・・」


 寿々も新入社員の時にこの桜の樹の前で写真を撮った記憶があるので良く覚えていた。

『そうか・・・あの樹切られてしまうのか・・・』


 そう思いながらもう一度写真に目を向けると。



「?・・・・・・・??」


 寿々は画像をアップにしてさらにスマホを傾けてよぉく観察してみる。


「何か見えましたか?」


 史も一緒にスマホの画像を覗き込んでみたが、寿々が画像を1人で独占していて何が映っているのかはよく分からない状態だ。



 すると寿々が、

「あ、あの加藤さん?この画像僕の社用アドレスに飛ばしてもらう事ってお願いできます?」


 と質問すると

「ええ大丈夫ですよ」

 そう言って加藤は快く了承してくれた。



 寿々は狭い応接ソファの奥側から史の前を跨ぐように抜け、そのまま向かい合う加藤の席の方に移動し、中腰で加藤に接近しアドレスを教えていたかと思うとそのまま加藤の隣に座り一緒になってメールを送信させた。


 その一連の動作を見ていた史はまたもや寿々の方をしらけた顔をして見ていたのだが、当の寿々はそんな事に一切気づきもせずメールを送信してもらったのを確認すると急いで自分のPCへと向かっていってしまった。

 そして史のその表情に気が付いたのは寿々ではなく目の前の加藤だけだった。





 寿々は送られてきた画像をPCモニターでもう一度確認する。


「・・・あ、やっぱり」


 そう言うと加藤と史が寿々の後ろにやってきて一緒にその画像を確認した。



「これですか?」



 寿々がそう言ってアップにした桜の樹の上部にある(うろ)の暗がりを指差す。



「そうです!これ・・・・・人に見えませんか??」



 加藤も興奮して寿々の顔に近づき一緒になって画像を確かめる。


 確かにその洞の中からは、人の様な顔をした存在がカメラに向かって写っていたのだ。

 洞の中なので多少暗くて鮮明ではないにしろ、見れば見る程それは人のようにしか見えない。


 史も寿々と加藤を訝しそうに見ながらも後ろから画像を観察し


「しかしこの洞の大きさからすると、この顔の存在ってかなり小さいですよね・・・」

 と指摘した。


 確かに洞の大きさが凡そ30㎝程度だったとしてもその中に小さな顔があるって事はそれこそ全長20㎝もあるかわからない程度の人物という事になる。



「つまりこれは・・・・小人?」

 寿々がそう言うと

「あるいは精霊・・・もしくは俗に言う()()()()()()()ってやつかもしれません」

 と史も興味津々に答えた。



「小さいおじさん?ですか?」

 加藤が少し驚いた様子で二人に問いただすと史はすぐに冷静になって


「とはいえ、こういうのは大体がパレイドリア、もしくはシミュラクラ現象・・つまりはたまたまそういう風に見えただけってパターンがほとんどですけれどね」

 と加藤に返した。


「でも、小さいおじさんの話でしたら2階の事務フロアから3階の編集部では結構有名な噂なんですよ?でももしこれがそうならば安心できます。私この写真がもし幽霊だったらどうしようかと本当怖かったんですよぉ」

 と加藤は二人に向かってにっこりと微笑む。

 その可憐な微笑みと声に寿々はすっかりうっとりしているではないか・・・。


 史はまたもやスンとした表情になり、その妙にイラつく空気を遮るように奥に座る中嶋を大きな声で呼んだ。


「中嶋さーん!ちょっと今いいですか?見てもらいたい画像があるのですが」


 中嶋は急に呼ばれて驚いた様に振り返り辺りを見回している。

 そして奥で手を挙げる史に気づくと、もの凄く特徴的な小走りで史の元へとやってきた。


「はい!なんでしょう!!」


 呼ばれた中嶋は何のことやらと聞くと。


「中嶋さんはこの画像をどう思いますか?」

 と史は場所を譲り中嶋をモニターへと近づけさせた。

 中嶋は個人的にUFOやUMAの研究をするほどの未確認シリーズオタクなのだ。



「はいはいはいはい・・・あ、いますね!これは・・精霊かなぁ」

 という中嶋に史は、

「パレイドリアやシミュラクラとは思えませんか?」

 と質問をする。


「んん・・・・シミュラクラにしては顔の皺や表情なんか結構しっかりしますよね・・・これは面白いですね!!」

 と中嶋も興味津々に食らいついてきた。



 寿々は加藤に、

「加藤さん、この画像ってアガルタに載せても大丈夫ですか?」

 と聞くと

「はい、大丈夫です。というかこの画像そのまま引き継いで頂けたら助かります」

 加藤はそう言ってその場で快諾をしてくれた。



 その後加藤は昼休憩が終わるとの事で急いで上の階へと帰って行ったが、寿々は加藤に対しての好意を隠す事ができず終いには丁寧にエレベーターまで見送ってあげ、一人上機嫌で席に戻ってきた。



 戻ってくると史が寿々の席に勝手に座り、中嶋と一緒に先ほどの写真のあれやこれやを議論しまくっている。


「とするとやっぱり小さいおじさん=木霊(こだま)とも言えますよね・・・」

「そうそう!小さいおじさんってそういう噂多いんですよ!!」



 二人が和気あいあいとしているのを寿々は

「史、そこ俺の席・・・・」

 と冷ややかに水を差すと、史もムッとしたようで

「・・・それは大変失礼しました」

 と真顔で言い返しながら隣の自分の席へと移動した。



 二人が微妙な空気を出しているにも関わらず、中嶋は突然何か思いついたように手を叩くと急いで自分の席へと帰っていった。




 寿々は再び椅子に腰を掛け、桜の樹の画像を見ながら隣に聞こえるようにわざと大きなため息をついた。



「・・・・・はぁ・・・・なぁ史?お前今日、朝からなんなんだ??」


 史も明らかにイラついている様で、寿々を一切見ずに自分のモニターを凝視しながら


「・・・・・・何がです」


 と全くトーンの変わらない声で答える。

 寿々は史に向き直り、


「何が?・・いや、俺がお前に何かしたみたいなその態度は一体何なんだ?って言ってるんだけど」


 寿々は怒鳴るわけでもなく淡々と史に不満を述べた。

 しかし史はずっと仏頂面まま変わらず一度も寿々の方を向く事なく


「俺そんな事一言も言ってないじゃないですか・・・何1人で勝手に怒ってるんですか?」


 とこちらも淡々と返す。


 それを見ていた前の席に座る篠田と菊池と丸は二人のギスギスな雰囲気を気まずそうな顔をして目を合わせた。



 寿々はもう一度大きくため息をつくと自分の席に向き直って加藤の画像を再び見直し始めた。

 とその時、急いで戻っていった中嶋が再び手に大きなカメラを抱えながら寿々と史の机へと近づくと



「三枝さん!!史君!!最上編集長に許可を頂きましたので!それでは、今からはりきって小さいおじさんハンティングに参りましょ~~!!!!」


 と空気を読まずに声を掛けたのだった。





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