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オカルティック・アンダーワールド  作者: アキラカ
幽霊団地後日+前日譚

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21/102

NTR

 12月2週目




 三枝(さえぐさ)寿々(すず)は彼女からの突然の連絡を受け、その日は早めに退勤し待ち合わせの場所へと急いだ。



 夜8時過ぎ、寿々の自宅近くにあるカフェ。

 ここは二人が付き合い始めてからずっと通い続けているお気に入りの店だ。

 その店の一番奥の角席が二人にとっての定位置。

 彼女である間宮(まみや)梨華(りんか)はその席で1人寿々を待ち続けていた。



 梨華は寿々とは大学の同級生になる。

 卒業までは寿々とは友達の友達程度の付き合いで、特別仲がいいわけでもなかった。しかし就職後に久しぶりに仲間内で集まったのをきっかけに何となく付き合うようになったのだ。

 それから5年になる。

 最近は寿々も突然アガルタに異動した事もあってここ1ヶ月以上まともに会えていなかった。



 寿々は急いで店の中に入るといつもの角席へと駆け寄った。


「待たせてごめん!」


 12月だと言うのに走ってきたせいか暑さでコートを急いで脱ぐとアイスティーを注文した。



「・・なんかめちゃくちゃ久しぶりだね」



 梨華は寿々の顔を見ると歯切れの悪い口調でにっこりと笑った。



「それで。話しって?」



 寿々は時期的に梨華にも仕事上で人事的な変化でもあったのかと思い質問をした。



「・・・・・・・・」



 その質問にすぐに答えない梨華。



「・・・え?何?」


「・・・・・ねぇ、寿々?」



 梨華の嫌な間に寿々は急に心臓が跳ね上がった。



「ちょっと待って・・・・。え?嫌な予感がするんだけど」



 寿々は梨華の顔をまともに見れず右手で会話を遮ると、そのままテーブルを見つめた。



「・・・・寿々。私達別れよ」



 寿々の悪い予感は的中してしまった。


 少しだけ浅く呼吸をすると青ざめた顔のまま梨華に向き直る。



「・・・・まずは理由を話してよ。確かに俺、突然の異動でここずっと忙しくて連絡もまともに取れなかったのは本当にごめん。悪かったと思ってる。でもそれだけが理由ってわけじゃないだろ?」



 寿々はまだ頭が混乱して上手く状況を飲み込めていなかったが、とりあえず話をし続けないと、と思い必死に会話を繋げた。

 


「・・・・・私、ここ1年くらいずっと寿々に私達これからどうするの?って何度も聞いてたよね」


「それは・・・・」



 確かに梨華の言う通りなのである。

 つまりそれは結婚するかしないか、という選択の話しであるのは寿々も十分理解していた。

 だからこそちゃんとした資金の準備と仕事でもそれなりの昇格があればそれをきっかけにと思っていたのだ。

 しかしそれを考えながらも。そうだ、1年近くも経ってしまっていた事に今更気が付いた。



「じゃあその話しをちゃんと話そう。話してから決めても遅くないだろ?」


「・・・・・・・」



『いやいやいや、待ってくれよ何でだ?何でだよ、遅くないって言ってくれよ・・・』



「ごめん。じゃあ正直に言う。」



『いや、言わないでくれ・・・・それ以上嫌な事を言われたくない』



 寿々はもはやその場からすぐにでも逃げ出したい気持ちだった。



「私、来年結婚する」


「えぇ・・・・誰・・と」

 寿々の声は震えてかすれ、既に梨華には届いていなかった。



「私、半年くらい前に職場の人にプロポーズされたの。勿論最初は付き合ってる人いるからって断ってた。でもその後もずっとアプローチされてだんだんとその方が幸せになれるかもって思うようになった。・・だからもう寿々とは会えない。・・・ちゃんと言い出せなかったのはごめん。でも本気で考えて本気で相談したかった時にはもう寿々は忙しくて会えなかったし。・・・だから今日で最後になる」



「・・・・・・・」



 寿々はもはや何も口から出てこなかった。



「今までありがとう。じゃ」



 それだけ告げると梨華は店を1人出て行ってしまった。









「だーー!三枝それ、ろくな女じゃないぞ!寧ろ別れて正解!!良かったじゃんか!!」


 翌々日、アガルタは1月号の発売とともに少人数での忘年会を開催していた。


 酒の入った丸はいつもの暴言に更に輪をかけるような暴言の応酬で、編集部全員をフルボッコのめったうちにしまくっていた。



「・・・・やめて下さい。本当に真剣に結婚まで考えていたんですから」



 感情がすぐに顔に出やすい寿々は前日の朝から様子がおかしい事を編集部全員に察知され、昼過ぎから付き添って外回りしてた後藤に心配そうに話しかけられた折にポロッと口を滑らせたが最後。今日の忘年会が始まる頃には彼女に振られた事が全員に知れ渡っていたのだった。 



『後藤さん・・・もっと口の堅い人かと思っていたのに酷すぎる』



 寿々は既にだいぶやけ酒が回っているせいか感情の変化が乱高下しまくっていた。

 しかもバラした当の後藤は、子供がまだ小さいから家に帰らないといけないと言い忘年会には参加していないのだ。

 なので文句の一つも言えず寿々のフラストレーションは溜まるばかりであった。



「じゃあさ~、前にアタシがハイヤーセルフで見たやつはマジで当っちゃったってわけ?N・T・R」



 隣で絡み酒してくるウザい丸に耳打ちされ、寿々は怒りでその場からすくっと立ち上がるとそのまま丸の側から篠田の隣りへと席を移動した。



「三枝さん、丸さんのアレ本当にどシカトでいいっすからね!編集部の全員がアレに捕まりたくなくて席の配置わざと三枝さんを隣にさせてますから!」



 篠田も酔っ払った丸とは絡みたくないので幹事の中嶋を防衛線とし、そこから奥へは絶対に行かないと決めていたのだった。



「にしてもあの人酷すぎるじゃないですか!」



 寿々も寿々でだいぶ呑んでいるので、丸ほどではないにしろそれなりに面倒くさいフェーズへと突入している。



「まぁまぁ。人生色々ありますよ!てか俺なんかからすれば彼女いるだけ羨ましいっすもん!」

 篠田は酒が入ってもマイペースなのが良い。

()()ですけどね・・・」

 寿々は空いたジョッキをあげ店員を呼んだ。

「三枝さん、そろそろインターバルおきましょう!あ、すみません!ウーロン茶下さい!」

 篠田は酔っ払った寿々のジョッキを取り上げ店員に声をかけた。




「それにしても、今日本当は大学合格祝いも兼ねて(ふひと)君も参加出来るよう、中嶋さんが駅近のダイナーを予約してくれてたのに。昨日の時点で史君も後藤さんと編集長も突然キャンセルになっちゃったから、なんだかんだでいつもの居酒屋になっちゃったのは残念でしたね」



「ん?史は何でキャンセル?」



 寿々は酔っ払いながらもようやく史の事を思い出した。

 そう言えば昨日も後藤と外回りして、そのまま帰宅したから丸2日顔を見ていない事になる。



「さぁ?良くはわからないんですが、昨日の夜に体調不良でしばらく休むって編集長に連絡来たとか?確かに昨日はなんとなく元気なかったですからね」


「ふーん・・・」


 寿々は自分の事で憔悴していた為、すっかり史の教育係である事がすっぽ抜けてしまっていた事に気づき少しだけ酔いが覚めた。




「あれ??これはこれは皆さんお揃いで!」




 突然通路の方から見知らぬ男の声がして寿々はそちらを振り返った。

 そこにいたのはダウンジャケットを小脇に抱え12月だと言うのに上下黒のスーツを腕まくりをした軽装ないで立ちの30代くらいの男だった。



「?」

「松下さんじゃないですか!!」

 篠田は予想外の人物が現れたとばかりに驚いている。



『松下?松下って確か俺の前任者だった?』



 そんな事を思っていると突然奥からドカドカと足を踏み鳴らして近付く音が聞こえたかと思うと


「てめぇ松下!!!何でここにいるんじゃい!!よくも抜け抜けとアタシ達に話しかけて来れたもんじゃな!!」

 と丸が劣化の如く怒り狂い松下へと食って掛かった。



「丸さん落ち着いて!!ここお店だから!!」 

 急いで篠田と菊池が丸を取り押さえる。

 幹事の中嶋もオロオロしながら

「皆さん落ち着いて下さい~!」と手は出さずにひたすら丸の後でワタワタと慌てふためいている。



「三枝さん!すみません!ちょっと丸さん外に出して落ち着かせて来ます!」

 そう言うと篠田と菊池は丸を押さえながら店の外へ連行して行き、その後ろに中嶋もひっついて4人で出て行ってしまったのだ。



「は~あの人マジで相変わらずだな!はははったく、だからババアは面倒くさいんだよ」



 松下も丸に負けじ劣らずめちゃくちゃ口が悪い。



 この一連のやり取りをただ呆然と見ていた寿々はすっかり酔いも覚め、今はただただ絡まれないようそっぽ向いてウーロン茶を飲むだけに徹していたかった。

 すると松下が小上がりに腰をかけ、テーブルに肘を付くとあからさまに寿々に対して視線を送り。



「あんたが三枝さん?」



 と寿々にまで絡んで来たものだからたまったものではない。



「えっと、そうですが・・・」



 ジャケットを下ろした松下の左腕を良く見ると黒いサポーターが巻かれている。

 それは恐らく幽霊団地で転落した時の怪我なのだろう。

 そんな事を考えていると、松下は鞄の中からアガルタ1月号を取り出し例の幽霊団地の特集記事を開くと机にバンと載せた。



「・・・・・これあんたが取材したんだよな?」



 松下はドスの聞いた声で寿々を睨むように見つめる。



『何なんだこの人・・・自分が放った記事取り出してまさか俺にいちゃもんでもつけるつもりか?』



 寿々もこの記事の出来栄えに関しては確かに色々と思うところがあったが、何にせよ時間も無ければそれ以上に団地で起きたあらゆる怪異や事件で心身ともに疲弊し切っていたのもあって、正直見るのも辛い。

 寿々も寿々で松下を睨むでもないがだいぶ怪訝な顔をしていたのは言うまでもなく、


「・・・はい」

 とだけ短く答えた。



 すると松下は突然頭を下げ

 


「本当にすみませんでした!!」

 と謝罪して来たのだった。


「・・・へ?」



 その落差に寿々は思わず変な声が出てしまった。



「いや、いきなり何も引き継ぎもしないまま、いいとよを辞めて。それで他の部署から来たあんたに全部押し付けてしまって本当に悪かったと思ってる!!」



「あぁ・・えぇ・・」



 寿々はすぐにまともな返答が出来ずに困っていると、松下は頭を下げたまま正直に話し始めた。



「俺、この黒い影と遭遇してあの時はマジで尻込みして逃げ出しちまったんだけど、入院してすぐに、この黒い影を実際に目撃した事をアガルタではなく自分だけの特権にしたくなっちまって。それですぐにいいとよ辞めて独自で取材しようと思ったんだ・・・」



「・・・・はい?」



 寿々はちょっと言ってる意味がわからないとばかりに松下に聞き返す。

 松下は頭を上げると寿々の目を見て真剣な眼差しで一枚の名刺を取り出した。


 その名刺を見ると、

【映像制作ディレクター】の肩書きで松下の名前が書かれている。



「実は今、アガルタの時に付き合いのあった色んな心霊系ライター達と一緒に心霊動画配信コンテンツの制作会社を作って活動をしている」



「・・・はい?」 



 松下の発言は益々意味のわからない方向へとんでいくではないか。


「つまりだ!動けるようになっていざあの団地に行ってみたら、なんとF棟にはもう誰も住んでいないっていうじゃないか!!せっかく俺が全てを独占出来るって思ったのに、時既に遅しだったんだよ!で、三枝さん。あんた何か知ってるんだろ??あの団地で何が起きたのか?」



『あーなるほど・・・』



 寿々はすっかり全てを察した。

 松下はこの記事を見て更に現場を見て、こんな筈はないと確信をもってわざわざ寿々に会いにきたのだ。

 全ては動画制作のネタ、しいては自分の利益の為だけに。



「・・残念ですが、()()が見た事はここに書いてある事が全てですよ。その後あそこの団地がどうなったかなんて知るわけないじゃないですか」



 寿々はあの一件について誰にも口外するつもりはなかった。

 その事については史とも一緒に真剣に話し合って決めた答えだ。

 ましてやこんな自分の利益の為だけに他人に迷惑をかけて自分勝手に辞めてしまえるような人物に何を話しても無駄に決まっている。

 寿々はこれ以上話す事はないとばかりに松下を突き放すように話を終わらせた。



 すると松下はその寿々の顔を見て不気味にニタリと笑みを漏らした。


「三枝さ~ん、あんた随分と嘘が下手くそですねぇ」


 その顔に寿々は寒気を覚えながらもそれでもシラを切る為に平然を装う。


「なるほどなるほど・・・・わかりました。それならそれで結構です。ですがね三枝さん?」

 松下は目を一瞬だけ閉じかと思うとずいっと寿々に顔を近づけ。



「俺はね驚くほど勘のいい男なんですよ。だからあんたの今の表情であそこで()()があったことだけは確信できました」

 松下はそう言うとアガルタをサッと鞄へしまい立ち上がった。



「これからも俺の代わりに面白い記事をどんどん出してくださいね!なんならいつでもうちはアガルタとのコラボ取材お待ちしておりますので。ああ、あとそれから史にもよろしく伝えておいてください。お前ならいつでも俺の下で働く事を歓迎しているってね」



 松下が史の事を切り出した事でついに寿々はカチンときてしまい。



「いやいや、史は渡しませんよ。もう一度松下さんの下で働かせるなんてもってのほかです。残念ですがお引き取りください」


 とにっこりと笑顔で返した。



 松下はその発言に少しだけ驚いた様子だったが、すぐに笑い捨てると

「じゃあまた、いずれどこかで」


 とだけ残して店を出て行ってしまった。





 松下が店を出ると外で(たむろ)していた丸と篠田と菊池と中嶋と再び鉢合わせになり、丸は松下を見るや否や


「早く消えろ!!この裏切り者が!!」

 と再び罵声を浴びせた。

 さらに松下もそれに対抗して

「相変わらず猿みたいにギャーギャーうるせぇんすよ!アラフォーになると女らしく生きる努力とかできなくなるんすかね??」

 と丸に食ってかかる。

「うるせぇえええ!!消えろボケカス!!!!」

 と丸は自分の靴を脱いで松下へ投げつけようとするのを3人の男が取り押さえた。

 松下は丸に向かって変顔をしながら中指を立てるとそのまま軽快に雑踏の中へと消えていった。




 まだくだをまいている丸を押さえつけながら、篠田と菊池と中嶋がようやく嵐が去ったとばかりに席に戻ってきた。


「・・丸さん大丈夫ですか?」


 流石の寿々も外からの二人の罵声にびびって篠田が心配になった。


「ああ~大丈夫だと思いますよ?丸さんと松下さんのアレは酒が入ってなくても関係ないやつですから」

 という篠田の発言が気になって思わず

「ええ?普段からあんな感じだったんですか?」

 と衝撃を受けた。

「そうそう、あんなの小学生の喧嘩の延長みたいなもんなので編集部は誰も気にしていません」

 と言う篠田に続き菊池も

「犬猿の仲というより似たもの同士って感じの方が近いかもしれないですよね?」

 と呆れて答えた。


「篠田~菊池~、聞こえてるからな!!」

 と丸は中嶋に抑えられながら一番奥の定位置へと戻されていった。 



 篠田は再び寿々の隣の席に座りなおすと

「ところで三枝さんは大丈夫でした?松下さんに何か言われたりとかしませんでしたか?」

 と寧ろ寿々の方が心配だとばかりに聞き返された。


「あははは・・・いやぁちょっとビビりましたけれどね」

 と寿々が苦笑いしていると、向かいの席で二人の様子を見ていた編集アシスタントの浅野が急に話に割り込んで


「そんな事ないですよ!!三枝さんめちゃくちゃ格好良かったです!!」

 と目を輝かせながら話かけてきた。


「そうなんですか?」

 菊池もその様子を見ていなかったので興味津々に話に加わる。


 浅野は中腰になって腰に手を当てて



「史は渡しませんよ。もう一度松下さんの下で働かせるなんて以ての外です。残念ですがお引き取り下さい・・・って毅然として()()に物申している姿に私めちゃくちゃ感動しました!!」



 浅野もよほど松下の事が嫌いなようで呼び捨てである。


「浅野さん前振り省いて誤解を生むような言い方したらアウトです!それにそんな変なポーズしていませんから!」


 寿々は色々とあった事をあれやこれや説明する気もなかったが、とにかく語弊がある事は皆に伝えたかった。



「松下さん僕たちみたいな編集アシのこと本気でゴミカスだと思っていて話し掛けてもまともに返してもくれなかったですからねぇ・・・」

 菊池もここぞとばかりに愚痴を漏らす。



「まぁまぁまぁ。でもその松下さんが退社してくれたおかげで今三枝さんがいるんですから!結果オーライとも言えるじゃないですか!」

 と篠田までもそれに加わった。



 それを一番奥の席でまるで仙人の様な顔で楽しそうに聞いていたメディアプランナーの高橋がゆっくりと日本酒を吞みながら話に加わった。


「でもね三枝さん。松下さんあんな横暴な人ですれどね、本当に彼の作る特集はいつでも驚く程の人気があったんですよ。だから私からするとああいう稀有な存在も雑誌編集には必要な人材なのかもしれないと思ってしまうんですよね」



 高橋は主に広告を担当し外部との繋がりも深い。

 そういう外からの視点でも松下の作る特集はそれこそアガルタそのものを形成していたと言っても過言ではなかった。



「特に彼が編集する心霊系ホラーコンテンツはある意味、今の社会的心霊オカルトブームの礎を築いたと言っても過言ではないと思います。ゆえに誰もが彼の実力そのものを否定する事はできなんですよ」



 高橋のその話を聞いて寿々は、丸があれだけ怒っているのももしかしたら松下という最低だが優秀な人材を失ったショックが大きかったからなのかもしれないと妙に納得してしまったのだ。






 夜9時半になり一同が居酒屋から出てくると、浅野と高橋は駅方面に向かうために先に帰路へと着いた。

 その後ろ姿を見ていた丸がボソっと


「うわマジか・・・あの二人まだ付き合ってんのかよ」

 と隣にいる寿々だけに聞こえる様に呟いた。

「え?そうなんですか??てか高橋さんって」

「そうそう既婚者。何かいつも正論言って平静を装っているけれど、なんだかんだで気持ち悪い雰囲気作ってんのあの人だったりするんだよねぇ・・」


 寿々は何となくそういうの聞きたくなかったなぁと思いながらも、ふと先週土曜のオシラサマの一件の時に編集部にいた二人の事を思い出した。


『そう言えばあの時の史、だいぶ高橋さんにだけ態度おかしかったけれど。もしかしてあいつそういうこと知ってたからなのかな・・・』

 そう思うと内情を知らなかったとはいえ、何だか大人の立場のこっちの方が申し訳なくなってきてしまうのだった。



「じゃあ僕もここで失礼します」

 と菊池が駅とは反対方向へと向かおうとすると続いて中嶋も、

「ではでは皆さん本日はどうもお疲れ様でした。また来週もどうぞよろしくお願いします」

 と丁寧に挨拶を交わし二人は別々の方向へと帰っていった。



 残されたのは丸と篠田と寿々の三人だ。

 寿々もそれではお暇しようかと思った瞬間、

 丸と篠田に脇から腕をグッと掴まれ


「え?え?なんですかこれ???」


 とさながら捉えられた宇宙人の如く二人に挟まれたまま



「三枝ちょっと話あるから顔かしな」


 とそのまま渋谷のセンター街の奥へと引きずられていくのだった。




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