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オカルティック・アンダーワールド  作者: アキラカ
日日譚【アガルタ編集部の日常】①
17/102

顎髭【12月初旬】

「ねーねー(ふひと)・・・」


 といつもながら突然話しかけてくる丸。

 史は丸の前の机で原稿を確認している作業中だ。


「・・・・校正中なので黙っていてもらえますか?」


 丸のアシストで原稿の文章に間違いが無いかを確認している史はいつもながら丸に対して反応が冷たい。

 勿論それだけ真剣に仕事をしているからではあるが。


「史はさぁ、三枝(さえぐさ)のあの顎髭ぶっちゃけどう思ってる??」


 しかしそんな事を全く考慮しないのが丸という人間だ。

 突然の質問に史も呆れながらも、どうせこのままシカトしても絶対に煩いだけなので適当に流す為に対応せざるを得ない。



「いいんじゃないですか?別に。個人の自由ですし」


 そう当たり障りのない返答をすると。


「ええー、あれ絶対100人中100人が無い方がいい!って思うやつでしょ?」


 丸は年齢もあるがなんだかんだで偏見が強い。

 しかも思った事を口に出さずにはいられないのだ。


「はぁ・・・またそういうルッキズムの話しをする。そういうのマジで嫌われますよ」



「ねぇ菊池??菊池はどう思う?」



 丸の隣、不在の篠田のデスクの更に隣で編集アシスタントの菊池が黙々と仕事をしていたのだが、とばっちりとばかりに丸からの質問に困惑した。



「あー僕も個人の自由かと思いますけど・・・」



「え?マジで?本当にそう思う?てか本気で似合う似合わないで言えばどっちだと思う??」



 丸は自分の意見を崩さない強硬派だ。

 結局本音を言うのがてっとり早い。



「まー、そう言う意味では無い方がしっくりきそうですけどねー」



 菊池も苦々しく答えた。



「あ、浅野!浅野!」



 そこへ通りかかったもう1人の編集アシスタント浅野へ声を掛ける。



「なんですか?」



 ピンクの髪の毛を縦巻きロールにしてゴリゴリのピアスとパンクゴスの浅野はアガルタでは丸と2人だけの数少ない女性スタッフだ。



「浅野は三枝のあの顎髭どう思う?」


「似合ってません」



 浅野は愚問と言わんばかりに即答した。



「だよねーー???」


「ですが、無かった場合ちょっと危険なオーラが出てしまう可能性があるので。似合ってなくてもあった方が三枝さんの身の為になります」


 浅野はオーラ視える系女子なので、編集部内のスタッフ全員のオーラを見ていつもアドバイスをくれるとても気の利くアシスタントでもある。



「危険・・・・なるほど一理あるな」



 丸も浅野の意見に納得してしまった。

 そこまでるくると流石に史のイライラも頂点に達したのか。



「皆さん、いい加減にしてください。いい大人が陰口みたいに他人の容姿をとやかく話すのはみっともないですよ!」



 とごもっとな苦言を呈した。


 浅野も菊池も丸から投げられた質問とはいえ本当そう、と分が悪いと言った表情だ。



「大体、皆さんは寿々の顎髭は寿々さんの《《本体》》だと思わないんですか?」


「・・・・・・・・」


 流石に3人とも何を言ってんだコイツ、とまるで宇宙猫の顔だ。



「あの顎髭があの人の人間性の象徴そのものじゃないですか?」


「顎髭がぁ?」


 丸も史の突然の奇言に目を丸くする。


「あそこに寿々さんの全てが詰まってます」


 史も一度口から出たからにはと毅然とした態度で続ける。


「そんな・・顎髭に夢が詰まってるみたいな目で言わないでよ怖いわ」


 浅野もかなりドン引きの様子だ。


「顎髭にぃ??」

 丸は何度も史に突っ込む。



「本当顎髭顎髭煩いんですよ!」

 史は普段はあまりブチギレたりはしないのだが、どうも丸との折り合いが悪い。

 丸はまたそれを楽しんでいるわけだが。


「まーまーつまり史君は肯定派って事で、ね!」



 菊池が呆れて仲裁に入ったのだが。

 ブチギレた史にめちゃくちゃ鋭い目で睨みつけられた。


 浅野はその様子を見ながら。

「史君、本当三枝さんの事に関してはまるで猛犬のようですね」

 と丸に耳打ちすると。

「確かにあれはどっちかと言うと狂犬だな・・・」

 と丸もドン引きしながらも、あまりに史が不憫に見えたので、三枝の陰口を史にするのは少し控えようと反省したのだった。


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