1章
1章
勇者は安堵していた。
世界に平和が訪れたこと、この旅の終わりに。
「これでついに魔王も討伐...終わったんだな」
「ええ!勇者様のおかげですね!」
「これで魔物も減り、世界も平和になることでしょう。」
共に旅をしてきた魔法使いのエリーと僧侶のマナに労われつつ、魔王城から出る。
「さて...私は一足先に戻るとしよう。後は任せたぞ!」
「わかりました、勇者"タナカ様!」
「タナカ様、後はお任せください...!」
うむ。と頷きつつ、どうして自分は他とは少し変わった名前なのだろう、と自問しつつ、平和になった今親に聞いてみるか...
と考えながら転移魔法を唱えた。
瞬間転移魔法!(ルーァ!)
呪文の名前を唱えると光に包まれ.....
ん?いつもより、光が強いような.....
!!!!!
凄まじい速度と爆音の中、一度気を失い....
アナウンス: 新規詠唱魔法 3つ会得しました。
ん...ここは...
....
どこだ!??
落とされた場所は全く見覚えのないレンガがベースで壁の作られた一つの都市だった。
幸い自分らの街と同じような道があり両脇に店がある構図をしているので歩いてみる...。
「おいおい、旅でこの世界のほとんどは行きつくしたはず...転移魔法がバグったのか!?」
自嘲気味にそう話しつつも、人を見つけ、歩いて聞いてみる。
「ここはなんて街なんだ?」
「 」
「え?」
相手の口は開けども、声はよく聞こえず...
そういえばさっき新規魔法を会得したって...この場面に合いそうなものを使ってみるか
翻訳会話魔法!(エストラルド!)
「...あの、どうかしましたか?」
「聞こえた!ああ、すまない、ここはなんて街なんだ?」
「ここはカルーロの街です、あまり見ない格好ですね...。」
「カルーロ...聞いた事がない、やはり転移に間違えたのか...」
ありがとう、と会釈をしながらまた街を歩き。
やっぱりここは全然知らない場所のようだな...しかし言葉が通じない場所があるなんてな。
しばし考え込み...
「まぁ、もう一度使えば良いか。魔王戦後とはいえMPはまだ少しだけある...」
「瞬間転移魔法(ルーァ!)」
.....
何も起きない!?
「転移魔法(ルーリァ!)」
簡易魔法でもダメか...。
「一体何が起きてるんだ?魔王を倒して世界に何か異変が?」
不思議がりつつも、この世界を探索していく。