キケンな保健室
学年末テストがあり、更新に間が空いてしまいました。すいません!
この学校の保健室は一階にあった。
スライド式の扉を開けると、白衣を着た若い女性が目に入った。茶色のショートヘアー。白衣の上からでもわかるほど強調された胸。その白衣は、何故か胸元が開かれている。先生がこんな格好してていいのか?
「あら、夜くん。こんにちは。」
初対面なのに、昔から知っていたかのような感じで話しかけてきた。
「知り合い?」
「いや…初対面。」
後ろから女子が尋ねてきたので、答えると、
「覚えてないかしら?まあ、あのときは子供だったから無理もないわね。」
何かを思い出すように窓の外を眺めながら話している。
(この人、俺の子供のころを知っているのか!)
『これは詳しく聞く必要がありそうね。』
(って…おまえいたのかよ!)
『ずっといたわよ!』
(心の中をのぞかれるのも気持ちのいいものじゃないな…)
『のぞきたくてのぞいてるんじゃないの!』
(はいはい…)
心の中でこんなやりとりをしていた。
「お取り込み中のところ悪いんだけど、今日はどんなご用?」
「…本人に聞いてください。」
そう言って、俺は背負っていた女子を降ろした。
俺が話せばよかったのだが、正直そんな余裕などなかった。この先生が俺たちの心のやりとりに気付いていた様子だったからだ。
(この人、心の中でも読めるのか…?)
『さすがに二重人格じゃ読めないでしょ…』
(なら…二重人格であることを知ってたとか?)
『ありえるかも…』
(俺の子供のころを知ってるみたいだったし…)
俺は先生の方をじっと見つめていると、その視線に気付いたのか、俺の方を向き、ウインクをしてきた。そして俺たちは思った。
(『この人、何者!?』)
それから数分もすると、話が終わったようで、二人は俺の方へ向かって歩いてきた。
「今日はありがとう!」
女子は急にそう言って、俺に飛び付いてきた。俺は後ろに倒れないよう、必死に彼女を受け止めた。
「っ!…ちょっと離してくれない?」
「…もうちょっと…このまま…」
(俺のことは無視かよ…)
『すっかり好かれちゃったみたいね。』
(誰のせいでこうなったと…)
『私のせい?でも、私はあんただから、結局は自分のせいってことでしょ。』
(なっ!)
口ではこいつに勝てない。そう思った。
「…ありがとう…」
しばらくすると、満足したのか、俺を解放してくれた。
「1年D組、片岡 愛美(かたおか えみ)!よろしく!」
彼女は俺を見上げそう言った。透き通った栗色の瞳。肩にかかるほどの黒髪。身長150cmほどのすらりとした体に、標準ほどに膨らんだ胸。襲ってきた男子たちの気持ちが分かるほどの美少女だった。
「あぁ…よろしく。」 彼女は俺をもう知っているみたいだったので、自己紹介はしなかった。
「今は授業中だし…二人とも終わるまでここにいていいわよ。」
「いや…俺は…「紅月くんもいてくれるよね?」…なんで俺が…「ダメ…?」」
いや…涙目で聞かれても…
『ここで断ったら、男じゃないよね~!』
「はぁ…いてやるよ…」
そう言ったとたん、泣きそうだった表情は輝かんばかりの笑顔に変わっていた。
(おまえ…嘘泣きって分かってただろ…)
『ん?何の話?』
(…性悪女…)
『なっ!誰が性悪女よ!』
そんなこんなで、俺は半強制的に保健室にいることになった。
「ところで、先生は俺のこと知ってるんですか?」
「この学校の人気アイドルってこと?」
「…俺の子供のころを知ってるんですか?」
「あのころは可愛くて食べちゃいたいくらいだったのに、今は可愛いって言うよりもカッコイイって言った方が合ってるものねぇ…」
「ですよねぇ~!」
(どこに共感したんだ…こいつは?)
ふと、愛美の方を見ると、視線に気付いたのか、可愛らしく笑いかけてきた。この笑顔でほとんどの男子は彼女に一目惚れしてしまうだろう。
12時15分、時計がその時間を示すと、授業終了のチャイムが校内に鳴り響く。
「それじゃ、俺は教室に帰ります。」
「あら、もう帰っちゃうの?」 残念がる仕草を見せる先生。だって昼飯食いたいし…
「それなら、私も!」
愛美がベッドから立ち上がろうとすると、
「愛美ちゃんは少し用があるから残っててくれる?」
「えっ…でも…わかりました…」
よほど俺と帰りたかったのか、とても悲しそうな表情で俺を見る。俺にどうしろと…?
「わかったよ…外で待っといてやるよ…」
俺がそう言うと、またニコニコ顔に戻る。
(女の子ってめんどくせぇ…)
そう強く思った。
「先生、用って何ですか?」
正直、今すぐにでも紅月くんのところに行きたかった私は先生に尋ねた。
だが、先生は何も言わず私をベッドに押し倒した。
「先生…?」
先生の顔が私に近づいてくる。
(えっ…ま、まさか…)
私の予想は的中した。次の瞬間、先生と私の唇が零距離に…
「んむっ…!」
抵抗しようとしたが、体に力が入らない。まるで口から力を吸い取られているような感覚だった。
「おっそいなぁ…何してんだ?」
保健室を出てから15分は経っただろう。
『女同士の話でもしてるんじゃない?』
「女同士の話?」
『あんたも女になったら分かるかもね。』
「ふざけやがって…」
俺をからかうような言い方で話しかけてくる高く甘い声。
「ところで…なんで話ができるようになったんだ?」
『それが分からないのよね…』
「そうか…」
俺たちの体の謎がまた1つ増えてしまった。
「とりあえず、呼びに戻るか。」
保健室の扉に手をかけようとした瞬間、体に寒気が走った。この扉を開けたら、見てはいけないようなものを見てしまうような気がする。ただ、このまま時間が経つのも嫌なので、保健室の扉をゆっくりと開ける。
「な…何してるんですか…?」
俺の見つめる方向には、重なった2つの体があった。1つは、上にのしかかっている先生。もう1つは、されるがままになっている女の子、愛美だ。
「あら、入ってきちゃった?」
先生が愛美を解放しながら、俺に話しかけてくる。
「大丈夫か…?」
顔が真っ赤になっている愛美に話しかけた。
「はぁ…はぁ…大丈夫…」
まだ息が乱れている愛美は、どうみてもまだ大丈夫ではなさそうだった。
(この先生…要注意人物だな…)
『色んな意味でね…』