表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡はチートと出会う  作者: 花詠 眠
1/8

チート(神)との出会い



その日は、何もない普通の日だった。

いつも通り、洗濯物を干して。

朝ご飯を食べて。

稲の様子を見ながら水をやって。

近くの森に入って狩りをして。

昼ご飯を食べて。

拾ってきた本で文字の勉強をして。

晩ご飯を食べて。

お風呂に入って。

後は寝るだけだった。


ただ、この日は夜になると同時に、雨が降った。

それが運命の分かれ目だったのだろう。


することもなく、ボーッとしているとドアがコンコンと叩かれる。


「すいません。誰かいらっしゃいますか?」


少し高い声だった。

僕は冷めた目でドアを見る。

本当に旅人なのだろうか。

そっとナイフをポケットに入れてから、ドアに向かった。


ドアを開けると、そこには僕より背の高い女の子がいた。

相手は、出てきたのが自分より小さい人で驚いたのか、目を見開いていた。


「えっと・・・私、旅人なんだけど、もしよかったら雨宿りさせてくれないかな?」


彼女は僕と目を合わせて言う。

僕はポケットの中のナイフに手を掛けたまま、返事した。


「いいですよ。どうぞ。」

「!!ありがとう!」


彼女はパアッと顔を明るくさせた。


彼女は傘をたたみ、部屋へ入ってきた。

僕は彼女を注意深く見た。


僕の身長が低いせいもあるかもしれないが、僕が見上げるほどの身長。

水色の髪を濃い青色の小さなリボンでおさげにしている。

空のように透き通った水色の瞳。

手が隠れるほど裾が長い黄緑の服。

短く濃い水色のスカート、中には黒いスパッツをはいている。これはスネまである。

足は細く、いつ折れてもおかしくないと思った。

手荷物は特になかった。


彼女は僕がじろじろ見ていることに気づいたのか、苦笑いした。


「よくこんな服装で旅ができたなって思ったよね?」

「うん。」


僕より背が高いといっても、恐らく彼女は子供だ。

その子供が一人で旅をしていて、はたして''日に焼けず''白い肌で歩けるのだろうか。

もしくは・・・


「・・・あなたは人間ですか?」

「ううん。私は人間じゃないよ。」


彼女はにっこり笑った。

あっさり答えられて少し面食らう。


この世界には様々な種族がいる。

人間、動物、魔物、吸血鬼、エルフ、獣人じゅうじん、ドワーフ、魚人、竜、ドラゴン、鬼、魔族。

天使、精霊、悪魔、神霊、神龍しんりゅう、そして・・・神。

様々な種族が様々な場所で暮らしている。

しかし、僕は人間以外を見たことがなく、すべて本の知識なので本当にいるのかは知らない。

だから、人間ではないと言い切った彼女をまじまじと見た。


「そういう割にはとても人間っぽいですけど。」

そして素直に感想を述べる。


「まあね。あ、ここ座ってもいい?」

「どうぞ。」


苦笑いをしながら彼女は僕の向かいの椅子に座った。

すると、彼女は手を空中に伸ばした。

そこで空間がゆがみ手がその中に入っていく。

彼女がそこから手を出すと、手には水筒が握られていた。


「空間魔法・・・ですか?」

「あ、知ってるんだ?そうだよ。空間魔法『空納』。おかげで手荷物なしで歩けてるんだ~。」


彼女は笑った。

この世界は種族と共に、術にもいろいろある。

魔法であったり、妖術であったり、呪術であったり、陰陽術であったりと様々だ。

空間魔法は高度なものと記憶していたが・・・この人はもしかしてとんでもない人なのではないだろうか。


「ところで、」


いきなり彼女の目が鋭く光る。


「なんでそんな物騒なものを持ってるの?」


僕の心臓がはねた。

気づかれた。

やるべきかやらないべきか。しかし、相手がまだ''そう''ではないとは限らない。


「だから、私はただの旅人だって!あなたの命を狙ってなんかないよ!」

「・・・・・証拠がない。」

「証拠て・・・難しい言葉も知ってるんだ。その本のおかげかな?」


彼女は奥に積み上げてあった本を見た。


「ここに来る前に村があってね。その村人さんから聞いたんだ。森の近くに家があって、そこには恐ろしいものが住んでるってね。それって君のことでしょ。」

僕は無言でナイフを前に出す。

彼女は両手をひらひらさせた。

「そんな警戒しないでよ。それに、そんなちっちゃい物では殺せないよ。」


また、彼女の目が鋭くと光った気がした。

その一瞬だった。

気づけば彼女は後ろにいて、僕が持っていたはずのナイフを彼女が持っていた。


「え?」

「いや、こんな物でしか対抗できない環境なだけか・・・村人さんは怖くて君を殺しに来る。それに対抗して君もナイフを使う。そして逃げた村人さんが噂を大きくする・・・完璧にいたちごっこだね。」


彼女は悲しげに目を伏せた。

人間じゃない。

その言葉をようやく理解できた気がした。

僕はごくりと唾をのむ。

殺される。

そう思った。


「はい。」

「・・・・・・え?」


彼女はナイフを差し出した。

ご丁寧に柄の方を。


「だーかーら!私は旅人で!あなたを殺す意思がないの!」

「・・・本当に?」

「はあ・・・こうやって行動で示してるんだけど?」


僕はもう一度ナイフを見た。

ナイフを受け取ると、涙が目から流れた。

彼女はまるで母のようにその涙をぬぐってくれた。


「落ち着いた?」

「はい・・・ありがとう・・・ございます。」

「それならよかった。あ、まだ自己紹介してなかったね。私は鳥山ちょうざんアキ。気軽にアキって呼んで。あと敬語もなしで。」

「分かった。僕はセト。基本的に平凡な人だと思うよ。」

「平凡・・・・・」

「どうかした?」

「いや、なんでも。」


彼女・・・アキは少し遠い目をしたがすぐに戻ってきた。


「ところで、セトは何でここに住んでるの?村の人からもあんな言われようで。」

「・・・・・」


意外にもアキはずかずか来る人だと思った。


「実は、僕生まれたときに両親を殺されて・・・親戚の人は僕を気味悪く思ってたみたいで、五歳の時までは置いてもらえてたんだけど・・・・・」

「つまり、五歳からここで住んでいて、自分でも意味不明な理由で邪険に扱われていると。」

「うん。そうなるね。」


言うと悲しくなるから言わないが、見た目の問題もあると思う。

僕は人間だけど白髪で灰色の目。しかも、右目は子供のころに怪我をしてからずっと包帯を巻いている。

見た目が気持ち悪いと周りから言われ続けたからだろう。

色褪せた(おそらく昔は緑色だった)服とズボンを着ているので、服装だけでもマイナスだ。

ただ、首の・・・両親の遺物として渡された茶色のチョーカーは綺麗な方だ。

・・・・・まあ合計でアウトなのだろうけど。


僕はアキが作ってくれたホットミルクというものを飲んだ。

美味しい。

僕はホットミルクに夢中になった。

アキは少し考えてから、僕に問いかけた。


「セトは何かしたいことってないの?」

「したいこと・・・?」

「うん。したいこと。」


僕は少し目線を下げて考えた。

自分の、したいこと。

僕は無意識に本を見ていた。

村の人がいらなくなったものをここに捨てていくことは当たり前で、本もその中にあった。

子供が読むような童話の本から、大人が読むような難しい本。

一番僕の興味を引いたのは・・・・・


「いろんなものが見たい。」

「いろんなもの?」

「うん。いろんな種族、いろんな技術、いろんな術、いろんな国、いろんな景色。全部見てみたい。」


僕は、この家の周りだけしかしらない。

ここは人が通らないし、同じような植物や動物しかいない。

そんな中、あの本は・・・図鑑は面白かった。

種族の図鑑、技術の図鑑、魔法の図鑑、国の図鑑。

僕の世界を広げるものだった。

でもそれは知識だけで、実物を見たわけじゃない。

だから・・・


「僕の世界を広げたい。」

僕のすべての世界を。


それを聞いて、アキはにっこり笑った。


「そっか。なら私の旅についてくる?」

「え?」


アキが手を僕に伸ばす。


「私はこれから全部の国を回り、全部の種族に会いに行く。そういう''任務''だからね。あなたは連れていっても大丈夫と判断した。セトの''したいこと''に協力するよ。」


任務。

そう聞いて思い出す。

人間じゃない。


「アキ、君は・・・・・」

「ついてくる?それを聞いたら素性を話すか決めるから。」


僕は少し迷った。

手を取らず、ここに留まり続けるか。

素性がわからない少女についていって世界を見るか。


僕は覚悟を決めた。


アキの手を・・・握る。


アキはにっこり笑って言った。


「改めて。私は鳥山アキ。最高神七芒星(ヘプタグラム)の一柱。守護のアキ。よろしくね。」


僕の人生はここから始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ