第六話
「取り敢えず、元気そうで何よりですよ。院長」
「ふん。そう簡単にくたばったりするか。鍛え方が違うんだ」
「・・・・さいですか。さてと、みんなちょっと離れてくれ。馬車を向こうに停めないと。と言うかチビ共! 勝手に荷台に上がるな! あっ! 勝手に荷物を開けるんじゃない!
大人しくしてないと。肉、食わせないぞ!」
「「「「「「「はーーーーい」」」」」」」
「にくーー」「にくだー」「やったにくー」
「「「「「「にーく、にーく、にーくにく!」」」」」」」
騒がしいチビ共の肉コールを聞きながら。馬車を、孤児院の裏手に進める。荷物の食材を保管する場所が、孤児院裏手の倉庫だからだ。
「相変わらず元気な連中だ」
「バーカ! 子供は元気にかぎるだろうが。・・・・ちと元気過ぎる気もするが」
「いや、それ院長の所為だから」
「はぁーー? 何で俺の所為なんだよ!!」
「はぁー。孤児に、冒険者用の訓練を施せば、こうなるっつうの」
「・・・・その、何だ。将来の生きる術としてだな」
「冒険者を育ててるとしか思えない。院長知ってます?
この孤児院、他所の人から冒険者養成施設だって思われてるんですよ?」
「ちょっと待て・・・・他所からそんな風に?」
「そりゃそうでしょう! 実際、何人この孤児院から冒険者になったか! 最低でも十数人はいるじゃないっすか!」
「はっ! ベイル、リコ、トール、スレイ、マイク、チャーリー、
リサ、アンナ、ミレイユ・・・・あいつらが冒険者になったのって」
「はい。どう考えても院長の所為です」
「なんてこった・・・・」
院長からしたら、護身術程度にしか考えていなかったようだが。
あれは、身を護るため程度の訓練ではない。
控えめに言っても地獄だろう。
「しかし、一番センスのあったお前が。まさか農家になるとはな」
「それは、爺さんばあさんが居たからで・・・・それに、冒険とか勘弁」
「お前はほんと、小さい頃から変わらんな」
「ある意味、真っ当に生きてると思うけど? 農家になったおかげで、孤児院にも色々持って来れる訳だし」
「ふん、それには感謝しとる」
「言っとくけど、チビ達とシスターのためだから。
断じて院長のためじゃないから」
「けっ、恩を返しやがれ」
「充分返したと思うけど?」
「まだ足らん。もっとだ」
まったくこのジジイは。
「リアンが来たって?」
裏手に回ると赤い髪の少女が、孤児院から出て来た。
「おいっす、イーナ」
「・・・・う、うん」
ん? 何顔赤くしてんだ?
イーナの奴は、何故かいつも俺の顔を見ると赤くなる。
何でだろう?
「お、お帰り。リアン」
「うん、ただいま。・・・・大丈夫か。顔赤いぞ? 熱あるんじゃないか?」
「べ、べべべ別に・・・・だ、大丈夫だから」
「あっ、そう。・・・・?
おっと、ほらチビ共。荷物運ぶの手伝え!」
「「「「「「はぁーーーい」」」」」」
チビ達はちょこまかと動き、荷台の荷物を協力しあって運んでいく。「よいしょ、よいしょ」と運ぶ姿はほほえまし。
「おっ?! サーベルボアじゃねえか」
途中で仕留めたサーベルボアに、院長が気づく。
「って、血抜きもしてねぇのか」
「ここに来る途中で仕留めて、そんな暇無かったから」
「しょうがねぇな。えーと・・・ペックとショーン。解体手伝え」
「「えぇーー!! リアン兄とやればいいじゃん!!」」
「なら、お前達は肉抜きだ!」
「「分かったやるー」」
肉には勝てないチビ達。肉なんて、そうそう食えるもんでも無いからな。ここの孤児院は、俺がよく持ってくるからそうでもないけど。いや、逆か? 肉の味を覚えさせた所為か?
「イーナ。馬のハーネス外すから手伝ってくれ」
「うん・・・・分かった」
うーーん。なんか距離があるんだよな。ハーネスを外すために、イーナの近くに行くと。イーナはサッと、一歩ほど離れる。
何故に?
「おうましゃんかわいの」「うまーー」「なでなで」
「そうだよな。めんこいよな」
「めんこい? リアン、めんこいって何?」
イーナが質問するので「ううん?」とイーナの方を向く。
イーナはまたしてもサッと動き、馬に隠れる。
「えーと・・・・めんこいってのは、可愛いって意味だ」
「そ、そうなんだ。どっかの国の言葉?」
「そんなとこ」
「めんこいめんこい」「めんこい?」「めんこーーい」
「はいはい」
めんこいが気に入ったのか。チビ達はめんこいを連発する。
分かった分かった。分かったから、落ち着け。
「馬達を休ませるから、誰か水汲んできてくれ」
「わたしー」「ぼくもー」
桶をもって、井戸に走っていくチビ達を見送り。俺は馬達にブラッシングをしてやる。
「お疲れさん。また帰りもたのんだぞ」と労いながら、丁寧に。
馬は、こまめにコミニケーションをとらないと、信頼関係を築けない動物。特にブラッシングは、コミニケーションを取るため必須だ。
「あらリアン君。帰って来てたのね」
馬の世話をしていると。優しい声が聞こえてくる。
チビ達が手を引っ張って「シスターこっち」「うましゃん」
「リアンにいきた」「おにく」と言いながら、シスターとやって来る。
そんなシスターに向かって「シスタールナマリア。僕と結婚して下さい」と求婚した。シスターは、俺の初恋にして憧れの存在。
小さい頃から、大好き。シスターに出会ってから十年近く経つが。その恋心は、未だに冷めていない。
俺の求婚にシスタールナマリアは「相変わらずねリアン君は」と微笑み「ごめんなさいね」と、お断りされた。