第五話
「ふふんふーーん♪ 今日もいい天気だなぁー」
「「ヒヒーン」」
「ふはは。お前達も元気だな」
小一時間かけ、孤児院へ向かっている。木々の木漏れ日が、とても心地いい。ただ・・・・。
「馬車の座り心地は最悪だな。けつ痛い」
さすがに、ガタゴトと揺られる小一時間は辛い。これを帰りも味わうと思うと。・・・・はあーー。
「ん? どうしたお前達?」
「「ヒブルル」」
突然、馬達が止まってしまった。動くのが嫌で・・・・と言う訳では無さそうだ。もしかしなくても・・・・・魔物か?!
『ガサガサッ!!』
近くの茂みに何か居る。馬から降りて、武器を構える。武器と言っても、手製の棍棒だ。硬い樫の木を削って作った。
見た目は・・・・木製バットだな、こりゃ。
馬を撫でて、落ち着かせていると。茂みから『バサッ』と魔物が現れた。
「フゴッ! フゴフゴ!」
「何だ。サーベルボアか」
現れたのは、猪タイプの魔物。サーベルボアだ。長く突き出た牙が、サーベルのような形をしている事からついた名だ。
牙は装飾品として高く売れるし。皮も頑丈なので、革製品として人気だ。それと、肉! サーベルボア肉は、猪より豚に近い。
だから美味い! こいつは、いい手土産になりそうだ。
孤児院のチビ共は、肉、大好きだからな。
「フゴッ?」
バット片手に近づく俺に、サーベルボアは一瞬戸惑った。
俺はその隙を逃さず「死にさらせぇーーー!!」と叫びつつ殴りかかった。
『バコーーーーーン!!』「ブヒーーーーーー!!!」
必殺のジャンピング一本足打法により。
サーベルボアは孤児院への手土産となった。
「チビ共が喜ぶな。さて、さっさと乗せて、先を急ごう」
百キロ超えのサーベルボアを、荷台に乗せて馬車を走らせる。
うるさいチビ共のため、急ぎたいが馬達を疲れさせる訳にはいかない。のんびり焦らず、馬のペースでだ。
急がば回れってやつかな。・・・・そこまで急いでないか。
それから十分後、教会が見えてくる。孤児院はその教会に併設されている。懐かしい鐘の音が『ゴーーン』と聞こえる。
「鳴らしてるの誰だ? 鐘の突き方が下手だな。悪ガキのルパス辺りだなきっと。院長に叱られたかなんかで、鐘突きさせられてるな」
院長が突くと、それは綺麗な音が鳴る。鐘突きは重労働だから、罰としてよくやらせられる。かくいう俺も、やらされた口だ。
孤児院の庭が見える程に近づくと。庭にいる子供達が俺に気づいた。
「あっ! リアン兄だ!」「リアン兄が来た!」
「「「「本当だ!」」」」
「「「「「リアン兄!!」」」」
俺に気づいたチビ達が、手を振って俺を呼ぶ。
どうやら、変わらず元気なようだ。
「「「「「「「わーーーーい! リアン兄!!!」」」」」」
俺を出迎える子供達。俺にとっては、可愛い弟妹と同じだ。
血は繋がらないが、俺の大事な家族だ。
「チビ共、元気してたか?」
「「「「「「げんきーーー!!」」」」」
「そうか。ん? あれ? シスターとイーナは?
後、ついでに院長も」
「イーナおそうじ」「シスターおりょうり」「いんちょう・・・」
たどたどしい言葉で、チビ達が教えてくれる。院長は?
「まさか! とうとうくたばったかあのジジイ!」
「誰がくたばるかクソガキ!!」
耳を塞ぎたくなるような声が、孤児院の庭に響く。
この声は・・・・。声の方に視線をやると。そこには、ガラの悪い爺さんが立っていた。
「ちっ、まだ生きてたか」
「死ぬかボケ。ふん、また来たのかクソガキが」
この口の悪い爺さんが、この孤児院と教会を取り仕切っている院長だ。元冒険者と言う、変わった肩書きをもっている。
「ふん。まったく、口のへらねぇガキだ。・・・・お帰り、リアン」
見た目も口も悪いが、この人はとてもいい人だ。
優しくて温かい。そんな人。お帰りと言われ、俺は・・・・。
「ふははっ。ただいま! 院長!」と返した。




