第四話
ベルさんが帰った次の日。
「うーーん。やっぱり醤油は難しいな」
味噌や醤油を作るための専門の倉で。俺は唸っていた。
それと言うのも。
「味噌はいけたのに、何で醤油は無理なんだ? 魚醤は作れたんだが・・・・やっぱりそう簡単にはいかないか」
と、まあ。そういう事である。味噌は何とか上手く出来た。
三年目にして、初めて成功した。後は醤油なのだが。うーん。
醤油は、味噌作りの過程で生まれた物だ。味噌が上手くいけば、醤油も上手くいく筈! なのだが、現実は甘くない。
「うーーーーーーん。・・・・はぁーー。唸っても仕方ない。
何かいい方法でも探さないとな。
さてと、三時のオヤツにでもするか」
ひと息入れようと、一旦家に戻る。
お茶とお菓子で、リフレッシュするためだ。
息抜きと休憩は大事! これ絶対!
家に戻り、紅茶とクッキーを準備した。それを、リビングの机に置くさいに、机の上の本に目がいった。
ベルさんに頼んでおいた新しい魔法書。机の上に置いたままにしていたようだ。
昨日、ベルさんが来たさい。数週間前訪れた際に、頼んでおいた魔法書を届けてもらった。勿論、代金は支払っている。
「今回の魔法書は、少しは使える魔法が載ってるとい・・・・」
ペラペラと魔法書のページを捲っていると。ある魔法が目についた。
「発酵の魔法? こんなのあるのかよ! はっ! もしかしてコレなら、醤油が作れる? ・・・・よっしゃぁーー!」
醤油作りに希望の光がさした。ただ、直ぐに醤油作りにかかれそうにはない。原料の大豆が、まだ収穫前というのもあるし。
醤油作りようの大きな桶が、まだ使用中だからだ。
兎に角。今、作ってる最中の醤油のもろみに。
この魔法を使って、様子を見るしかないな。
「取り敢えず、この発酵魔法をインストールと」
魔法書の、発酵魔法のページに描かれる魔法陣に手を触れ。
ページに書かれてある、魔法発動のための文字を読んでいく。
すると・・スゥーッと、何かが体の中に入っていく感覚が・・。
「ふう、インストール完了っと。さて、早速もろみに発酵魔法をかけるかな」
味噌や醤油を作っている蔵に行き。早速、魔法を使ってみる。
すると醤油に! 特に変化は見られなかった。
「魔法だからって、直ぐどうこうなるもんじゃないよな。
あれ? そう言えば今日、何かあったよう・・・な。あっ! しまった! 今日は孤児院に行く日だった!
「忘れてた。急いで準備しないと!」
二週間一回のペースで、俺の捨てられていた孤児院に顔を出している。孤児院の友達に会いに、と言う訳では無い。ここで作った作物を、孤児院に寄付するためでもある。
恩には報いる。これ、大事。
急ぎ荷馬車を用意する。実は、ウチには馬が居る。
別に購入した訳ではない。乳牛を五頭、ベルさんから買い付け。
その牛達のために、牧草地を作ったのだが。
気付いたら、いつの間にか居たのだ。
つまり、今居る馬達は全て、元野生の馬達で。馬の見た目は、まんま道産子だ。とても可愛い。牛を購入した当初。家の周りの柵は、馬なら飛び越えられる高さだったから。多分飛び越えたのだと思う。
馬の侵入した事で、柵を更に高くする羽目になった。
しかも、最初侵入した馬は二頭だったのだが。次の日は更に三頭加わっていた。
柵を高くする前に、最終的に九頭にまで増えた。
うちの牧草が、そんなに良かったのだろうか?
まあ、言う事をちゃんと聞いてくれるので。居ていいけどね。
「おし、準備完了」
二頭の馬を荷馬車に繋ぐ。この、異世界道産子。結構頭が良く、荷馬車や人を背に乗せる訓練も、あまりいらなかった。
「よしよし。荷物・・・・頼んだぞ。そしたら、美味い餌をたっぷりやるからな」
「「ヒヒン、ブルル」」
しょうがねぇなと言わんばかりに、二頭の馬は鳴いて返事をした。
やっぱり賢いなこいつら。絶対、普通の馬じゃないと思う。
「兎に角、出発!」
「「ヒヒーーン」」