第三十六話
『カコーーーン』『チャプーーン』
「いーー、湯だなぁーーーー」
疲れた体を、お風呂で癒す。「今日も頑張った」と自分を褒め、肩まで湯船に浸かる。『パシャ』とお湯で顔を洗い。「ぷはー」と思わず声が出る。
「はあーー、いい湯だ。‥‥‥最高」
我が家が誇る、総檜風呂。本当に最高だ!
ベイル「リアン兄の言う通り。風呂って最高」
トール「ふむ、悪くない」
「というか、なんでお前達まで入ってるんだ?」
「「えへへへ」」
もきゅもきゅ達の救出した後、報告のために冒険者ギルドに向かったベイル達三人。別れてから2時間後には、うちに遊びに来た。
しかも、ちょうどお風呂を沸かしている時だった事もあり。風呂の準備が整い、俺が入ろうとしたら、何故か当たり前のように、お風呂に入ってきた。孤児院時代、冷たい井戸水で体を洗うのが嫌で、子供が二、三人入るような大鍋をお風呂代わりにしていた。だからか、同じ孤児院出身であるベイル達も、お風呂の良さをそれなりに理解している。だからか、あの孤児院出身者は、風呂好きが多かったりする。
「で、報告は? ちゃんとしたのか?」
ベイル「したよ、ちゃんとね。オークは兎も角として、地竜については調査するらしいよ。あっ、俺達がリアン兄とこに来たのも、調査の一環だから」
「はあ? なんで、俺が?」
トール「地竜を見た事あるのは、リアン兄だけ」
「あー‥‥‥まあ、そうか。でも、俺は特に教える事は無いぞ?」
ベイル「ちょっとした特徴とかでも聞いてこいって、冒険者ギルドの人に言われたからさ、なんかない?」
「なんかって言われてもな。俺は地竜の専門家でもないし‥‥‥うーーん、まあ、なんだ‥‥‥強いとか?」
ベイル「いや、それはそうでしょ。竜なんだし」
トール「この世界の支配者‥‥‥」
あーーー、まあーー、そうーーだよなぁーーー。竜だし。
ティラノサウルスじゃ通じないしな。あっ、絵ならいけるかな?
いや、でも俺、絵心ないんだよなぁーーー。
ベイル「いや、そんなに悩まなくても、なんかこうない? 角があるとか、色とか何か‥‥‥」
「うーーん、色は茶褐色だったかな? 角は無かったかな?」
記憶にある地竜を思い出しながら、ベイルに伝える。ベイルは「へぇー」とか「ふーん」と、返事をするので、ちゃんと聞いてるのかと思ってしまう。トールはトールで「風呂‥‥‥最高」と風呂を楽しんでおり、真面目に思い出そうとするのがアホらしくなる。
「ちょっとーー、リアン兄ぃーー?!」
「うん? この声はリズか? なんだーーリズーー?!」
脱衣所の方から、俺を呼ぶリズの声が。さすがに男湯女湯と、風呂が二つある訳ではない。なので多分‥‥‥。
「さっさと上がってよぉーー!」
早く上がれの催促だ。
「ゆっくり浸からさてくれよ」
リズ「リアン兄は、毎日入ってるんでしょ! 私は久しぶりなの!」
「リズ‥‥‥風呂はちゃんと入った方がいいぞ」
リズ「ち、違う! 湯浴みはちゃんとしてるわよ! お風呂が!
湯船に浸かるのがって事! もう!」
まあ、冒険者やってたらそうか。三人共、安い宿に泊まってるらしいし。お風呂なんて無理だよな。
ベイル「宿の井戸水は冷たいからなぁ〜」
トール「冬は無理。お湯を沸かしてもらうのも、料金とられる」
「へぇー、大変だなぁーー」
頑張ってるみたいだな。しかし、風呂の無い生活は‥‥‥俺には無理だ。耐えられない。
「あっ‥‥‥‥‥‥。リズ、まだそこに居るかぁー?」
リズ「居るけど。 何? リアン兄」
「リルちゃんはどうしてる?」
リズ「リルちゃん? あー、あの小さい子ね。あの子なら、チビもきゅ? と遊んでたわよ。呼びましょうか?」
「いや、チビもきゅと仲良く遊んでるならいいよ。たまにリルちゃんを、俺がお風呂に入れてたから、どうしようかと思ってね。リルちゃんは、お母さんと入ってもらうよ」
お風呂を知らないリルちゃんに、お風呂の入り方を教えるため、一緒入ったのがきっかけで、それから俺がリルちゃんのお風呂担当になってしまった。と言っても、三回に一回のペースだ。基本、お母さんのイルゼさんと入っている。
リズ「あっ、そうだリアン兄」
「ん? なんだリズ?」
リズ「どの人がリアン兄の奥さん? シスターは諦めたの?」
リズのいきなりの質問に「ぶほっ!!」と思わず息を吐いてしまう。リズは続けて「リルちゃん可愛いよね。リアン兄の子?」とか聞いてきた。いやいや、年齢を考えろよ。違うだろ、どう考えても!
ベイル「あっ、やっぱりそうなのかリアン兄? 気になってたんだよね。他の子も、可愛い子ばかりだし」
トール「羨ましい!!」
「いや、違うからな。俺はシスター一筋だから! イルゼさん達は、倒れていた所を助けてここに居る訳で‥‥‥‥他の子も、色々と訳があってだな」
言い訳がましいが、事実、訳ありが多い。出て行けとは思わないし。居てもらっても、特に迷惑に思わない。と言うか、結構助かってる。恋愛感情とかは‥‥‥‥無いよ。‥‥‥‥本当に。
リズ「ふーーん。まあ、そういう事にしておくわ。あ、それとイーナはこの事知ってるの?」
「なんでそこでイーナが出てくるんだ? イーナには‥‥‥‥言った‥‥‥‥け?」
リズ「あーーあ。リアン兄の家に、女の子が居るって知ったら、イーナは絶対怒るわよ」
「怒る? なんで?」
リズ・ベイル・トール
「リアン兄って‥‥‥‥そういう所、駄目駄目だよなぁ〜」
三人は、綺麗にハモって俺に駄目出しをしてきた。ベイルは「そりゃないよ、リアン兄」と天を仰ぎ。トールは「喝!」と一言。
リズも「その内、イーナに刺されるわよ」と、脱衣所の方で呆れている様子。
‥‥‥‥えーと、イーナに刺されるの俺? なんで?
お風呂で体は温まったが、何やら背筋に寒気を感じた気がした。
‥‥‥‥多分、気の所為だよな。




