第一話
「んー? 朝か・・・・んーーー」
さて、今日も頑張らないとな。
上半身だけ起こして背伸びをし、ベットから出て軽く「いっちにーさんしー」とラジオ体操をして体の調子をみる。
「うし、今日も快調快調!」
手拭いを一枚、箪笥から取リ出して寝室を出る。リビングに向かい、そのまま玄関を出て、外にある井戸の元へ。
「うんしょ、うんしょ」と井戸から水を汲み上げ、汲み上げた井戸水で顔を洗う。
「ふう、目が覚めたぁーー」
手拭いで顔を拭き、拭き終わったら絞って肩にかける。
「さて、ご飯ご飯♪」
家に戻り、キッチンの戸棚を開けて絶望する。
「パンがもう無い。昨日食べた分で全部だったか」
朝パンにしようかと思っていたのに・・・・どうしよう?
今からパンを作るのもな・・・・発酵とかさせてたらお昼になっちゃうし・・・・今日は米にするか。
羽釜を棚から取り、米を食料庫から取ってくる。
一合・・・・いやニ合にするか? いっそ事、昼の分も炊いておこうかな? うーーん。
悩んだ末に、三合炊く事にした。半分をお昼に食べよう。
うん、おにぎりにでもして。
「よし、やるか」と米を研ぎはじめる。井戸では研がない。水は井戸水を汲んで窯に溜めてある。念の為、飲んだり料理に使う水は、
一回煮沸消毒している。理由は、井戸水に住むピロリ菌対策だ。
と言うのも、井戸水を飲んでいた年配の方は、ピロリ菌が多く見つかるという。そして、それが胃癌の原因になるとか・・・・らしい。
あくまでテレビの受け売りだ。
さてと・・・・「竈門に火を・・ファイア!」『ボワァッ!』
あっ、驚いた? 手品じゃないよ。魔法です。あっ、何言ってんの? とか思ってる? 言っておくけと、ここは日本の田舎じゃないよ。なんと異世界でーーす。
そして俺は転生者! ジャジャーーン!!
・・・・・・・・・・・。
えー、あー、兎に角。俺は異世界の、それも魔法が存在する世界に転生した。因みに、俺は一人暮らし。両親は知らん。何故なら俺は孤児だからだ。家から少し離れた所にある、教会の孤児院で育った。
赤ん坊の頃に、籠に入れられ捨てられていた。
「この子の名前は、リアンです」と、書かれた紙切れが一枚だけ入っていたらしい。なので、俺の名前はリアンだ。
孤児院ですくすくと育ち、六歳になった日。正確には俺が拾われた日だが・・・・[誕生日が不明なため]兎に角、六歳になったある日。
老夫婦に引き取られた。きっと、畑仕事などの労働のためにかと思いもしたが。老夫婦はかなりいい人達だった。
何でも、俺が亡くなった老夫婦の子供に似ていたのが決めてらしい。二人には、とても良くしてもらえた。
けど、そんな二人ももう亡くなってしまっている。
悲しいけど仕方ない。お爺さんが病気で、その一カ月後、お婆さんが後を追うように・・・・。遺言には、家と畑など全てを俺に譲るとあった。
たいした恩返しも出来ず、二人のお葬式は、悲しいと言うのもあったが、不甲斐ない自分に泣けてしまった。それくらい良くしてくれたのだ。
そして現在、今年で十五歳になる俺。二人が亡くなってから二年が経過したが、今の所は、何とか生活出来ている。
とまあ、俺の話はこんな感じだ。・・・・よし、米も研いだし。羽釜をセットして・・・・と。これでよし!
竈門の上に羽釜を置き、火にかける。炊きあがるまで、30分てとこかな。
「なら後は・・・・ご飯が炊けるのを待っている間に、汁物でも作るかな」
えーと、何があったっけか。うんと、昨日採ったばかりのほうれん草とネギか。これで作るか。
鍋を用意して、水を入れてお湯を沸かす。その間に、ほうれん草とネギをカットする。し終えたら、それを煮立った鍋に投入。
「味付けに・・・・醤油! はまだ無いから魚醤でしてと」
醤油はまだ無い。頑張って作っている最中だ。魚醤、つまりナンプラーはある。案外簡単に出来たが、味見する時、勇気が必要だった。最初に魚醤を味見した人、凄いと尊敬するよ。マジで。
「早く醤油欲しいな。ナンプラーも悪くないけど。匂いとか、ちょっと独特なんだよなぁー」
手作りしたナンプラーは、結構クセが強い。慣れれば、そこまでではないのだが・・・・醤油の完成を急ぎたい。
「うん、まあまあかな?」木製のオタマで味見をする。悪くない。
けど・・・・「うん。何か足りないな。・・・・あっ! 胡麻油を足そう」
小瓶に入った胡麻油を数滴垂らす。すると・・・・。
「うん。良い風味が出た」
胡麻油を加えるだけで、一気に中華スープ感が出る。
「・・・・うーん、卵も入れるかな」
卵は・・・・一個だけ残ってたな。後で鶏小屋に行って、卵を取って来ないとな。
溶き卵を加え、ほうれん草と卵の中華スープ完成だ。
「さてと・・・・ご飯はもうちょいか。炊けるまで椅子に座ってゆっくりしてるか」
朝は大体、こんな感じですごしている。基本のんびりとだ。
異世界だからって冒険なんてする必要はない。
農家として暮らしてもいいじゃん。人それぞれなんだし。
兎に角俺は、冒険なんてせず、畑でも耕してのんびり生きいく。
これは、そんな俺の物語りだ。
・・・・・・・・あれ? 焦げ臭いよう・・な?
「うわっ! しまった火が強すぎた! 米が焦げる!」
まあ、失敗なんて誰にでもあるよね。