06 語り
シェルカさんが、まっすぐなまなざしで、ゆっくりと語り始めました。
以下は、シェルカさんの少し長めでちょっと堅めだったお話しを、僕なりに噛み砕いてまとめたものです。
シェルカさんは孤児院育ち。
幼い頃から文武ともに、とても優秀だったそうです。
王族・貴族以外は絶対に入学が許されなかった上級学園に推薦されるほどに。
しかし、クルゼス王国といえば身分制度の厳格さで有名。
孤児院育ちのシェルカさんには、本来あり得ない道、閉ざされた扉。
扉をこじ開けてくれたのは、現王アルゼハルト様。
学園内でのさまざまな問題は全て、
シェルカさんが自身の実力で解決しました。
首席として卒業、
騎士として頭角をあらわし、
近衛騎士として才覚を振るい、
『クルゼス王家の白翼』と呼ばれるほどとなり、
ついにはアルゼハルト王の懐刀と称されるまでになりました。
そのまっすぐな生き方と国を想う姿勢、
もちろん並ぶ者なき見目麗しさ、
身分を越えた全ての王国民から絶大な人気を博しました。
国のため、アルゼハルト王のため、生涯を捧げる覚悟だったシェルカさんへの、
突然の任務は『ジオーネ統治』
ただしそちらは表向き。
本当の任務は『エルサニアとの真の和平』
古よりの戦争の歴史は現王が終わらせたが、
長きに渡る戦禍の禍根を乗り越えるにはさらなる一手が必要、
そして選ばれたのは、
その生い立ちから現在までの活躍にて、
王国民から絶大な支持を集める『白翼』シェルカさん。
もし『エルサニアの英雄』と結ばれれば、
その時こそ両国の真の和平への第一歩に。
シェルカさんの、穏やかながらも熱い語り。
心にグッときました。
それはそれとして、
『エルサニアの英雄』って、誰ですかっ。
もっとちゃんと考えてみてください、シェルカさん。
他ならぬ自分自身の、乙女としての生涯を、いかにお国のためとはいえ、そんな簡単に決めちゃって良いのですか。
「私のこれまでの人生は、さまざまな人たちとの出会いと経験の結晶」
「今の私自身の判断を自らが疑うことは、これまでの人生全ての否定となりましょう」
「私は、カミスさんと生涯添い遂げたいという、己自身の判断を、信じたい」
あかん、シェルカさんが、手がつけられないほどの、乙女状態。
いや、手をつける度胸なんて、もともと無いですけどね。
「ツァイシャ女王様が、このジオーネにカミスさんを派遣なされたこと、それこそが何よりの証し」
?
「あの優しく聡明な御方が、カミスさんを選ばれた理由、私もようやく理解出来ました」
派遣理由は、エルミナが元王女だから……
「もちろん、それも良く理解しておりますとも」
「エルミナさんのような立派な淑女が生涯を誓った殿方、それこそが、カミスさんの素晴らしさの証明」
なんだか話しが上手く噛み合わないよ。
それじゃまるで今回の派遣の件は、王国トップふたりが最初から仕組んでたみたいじゃないですか。
「正に然り」
マジですかっ!




