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02 シェルカ


 僕たちのジオーネでの滞在先は『平和の館』と呼ばれている大きな建物。


 まさにあの討伐戦の舞台となった悪党どもの本拠地、だったのですが、もちろん今はあの激戦の痕跡もきれいさっぱり片付いて、本当に平和な館。


 現在、この館に滞在しているのは、八名。


 エルサニア側から派遣されてきた僕たちチームカミスの五人と、


 先行して準備してくれていた、エルサニア城勤務メイドのササエさんと、パートナーでお医者さまのクロ先生、


 そしてクルゼス側からは、単身赴任の女騎士さん。




「おはようございます、カミスさん」


 彼女が『クルゼス王家の白翼』ことシェルカ・エルレシュカさん。


 シスカと同い年の20代半ばなのですが、この若さでアルゼハルト王の懐刀と称されるほどの、文武両道才色兼備な才媛なのです。


 いっしょに暮らすと、その評価に違わぬ振る舞いと仕事っぷりに脱帽感服でした。


 クリスの勇猛さ、シスカの生真面目さ、エルミナの知性と気品、ハルシャちゃんの家事能力を、


 凛々しくも見目麗しいその騎士姿に全部詰め込んじゃいましたみたいな、とんでもハイスペック乙女。


 なぜこれほどまでに優秀な人を、人材不足なはずのクルゼスがこのジオーネに送り込んできたのかは、不明。


 クルゼス側の詳しい事情やらなにやらを、御本人から直接聞いてみたいんだけどな。


 お仕事中も、みんなとの歓談中も、いつも真面目で冷静で、まだちょっと距離がある感じ。


 いや、お高くとかお堅いとか、決して偉ぶっているわけではないのです。


 えーと、物腰柔らかな鉄壁とでも言いますか、とにかくそんな感じ。


 でもせっかくだから、もう少しだけでも、仲良くなりたい、かな。



「カミスさんの、今日の御予定は」


 毎朝一番に必ず、僕の予定を確認しに来てくれるシェルカさん。


 毎日夕方の打ち合わせ以外にも任務への備えを怠らない、


 とても真面目な方、なのです。



「特に予定はないです」


 はて、シェルカさんが、何か言いたげな様子。



「午前中の、新しい自警団の編成会議は」


「そっちはクリスにお任せしてます」



「午後からの、ジオーネ会館の落成記念式典は」


「そっちはエルミナとシスカにお願いしました」



「……」


 シェルカさん、じっと僕を見つめているけど、


 えーと、他になにかなかったっけ……



「そうだ、お昼前に、ハルシャちゃんと一緒にジオーネ市場へ食材の買い出し!」


「市場へ買い出し……」


 シェルカさん、ほんの少しだけ困り顔。



「カミスさんは、なぜ公務に出ないのですか」


 シェルカさん、きりりと真面目顔。



「えーと、適材適所といいますか、なんといいますか」

「自警団関連の決め事なら、僕なんかよりクリスの方が適任ですし」

「式典みたいな華やかな席には、エルミナみたいに華がある女性が、と」

「それに、その、ここに長逗留することになってしまって、ハルシャちゃんも友達と会えなくて少しだけ寂しそうなんで、できるだけ一緒にいてあげたいな、と」




「……了解です」


 シェルカさん、出ていっちゃったけど、絶対、了解、していないと思う。


 たぶん、僕がリーダーだってこと、納得できてないんだろうな。



 でもね、これが僕、なんです。



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