15 想い
いろいろありましたが、
数日後、無事に腰痛から復活。
「ふぃー」
久しぶりのお風呂、たまらんっ。
「まさに御馳走、ですね」
そうですね、シナギさん。
それと、長らくの介護、本当にお世話になりました。
「いえ、実はその、私ごとなのですが、カミスさんに御相談したいことがありまして、無理を言ってこちらに連れてきてもらった次第で」
僕にできることなら、何なりと。
「……ミナモの事なのです」
そうだ、はるばるシナギさんに会いに来てくれたミナモさんと、僕なんかのせいで離ればなれにさせちゃって。
「いえ、むしろ良い機会だったかと」
?
「距離感が、掴めぬのです」
??
「故郷で暮らしていた頃は、お互い気を遣わず、とても良い関係だったのですが、こちらでの二人暮らしでは、いろいろと思うようにもいかず……」
「あの素晴らしい乙女たちと仲睦まじい暮らしを続けられるカミスさんなら、何か秘訣のようなものがあるのではなかろうか、と」
いつも冷静で落ち着いた物腰のシナギさんが、なんだかとっても落ち着かない様子。
本当に困っているみたいだね。
でも、僕なんかが、なにかアドバイスできることなんて、あったっけ?
うん、いつも通り、誠実に、だよね。
「きっと、僕がアドバイスしちゃ、駄目なんだと思います」
「……」
「男と女ってことじゃなくて、どんな人間関係でも、パターン通りの型通りなんてことは、無いと思うんです」
「しっかり相手のことを想いやって、ちゃんと自分で考えたことをぶつける」
「結果がどうなるかなんて、それこそ分からないですけど、真剣な言葉には真剣な対応が返ってくるってことを、いっしょに暮らすことで、みんなから教えてもらえたんです」
「僕はまだお会いしてないですけど、モノカから聞いた通りのミナモさんなら、シナギさんの真剣な想いに、ちゃんと応えてくれるんじゃないかなって」
どうかな。
「カミスさん」
はい?
「これからは、師匠、と、お呼びしてもよろしいでしょうか」
よろしくないですよぅ。




