追放しましたされました(6ヶ国語で読む物語)
「つっかえねぇなぁ!この無能が!!」
グシャアア!!(リンゴを握りつぶす音)
盾使いヤスターはかんしゃくを起こしてモンキーを怒鳴った。
怒りのあまり、かじりかけのリンゴを握りつぶしてしまった。
モンキーは恐怖に怯えて泣いている。
モンキーが暗器使いジャンボの脛に縋り付く。
モンキーは二重人格を持っている。彼の人格が切り替わり
強気な女性としての人格が現れた。そして屈辱は怒りへと変わり
ヤスターにとって最悪な言葉を突きつけた。
「ヤスター!モンキーをいじめるなら追放だ!出てけ!」
哺乳瓶使いアリッスがモンキーにミルクを与えながらヤスターを叱った。
「Êtes-vous fou?」(あなたおかしいよ?)
ジャンボも便乗して彼を咎めた。
「If You still have your ugly mind, you will have being haunted by the solitude.」
(ヤスターお前が醜い心を持ち続けるなら、孤独がお前の心を苛み続けるだろう。)
「Vaffanculo!!」(クソが!!)
ヤスターは捨て台詞を吐いて立ち去った。
「Es tut mir leid…….Ich könnte sanfter sprechen.」(すまない……俺もっと大人になるべきだった。)
モンキーが嘆いた。
「Ça ne te dérange pas!」(気にすることないわ!)
マリッサがそう言ってモンキーの頬にキスをして抱きしめる。
「You abandoned him! it's the right thing! Know your own bounds! Yaster!!」
(あいつを追い出して正解だよモンキー!恥を知れヤスター!)
ジャンボは励ましの言葉を言い終えると、豪快に笑いながらモンキーの肩をポンポンと叩く。
「Ja! du hast recht!Es tut mir leid, dass ich mir Sorgen um meine Probleme mache!」
(そうか!そうだよね!みんな心配かけちゃってごめん!)
「Ich habe mich wieder erholt!」
(ぼくふっかーつ!)
ヤスターは一心不乱に森の化け物たちを相手に盾技を鍛え続けた。
そんな彼の姿は森を彷徨う幽鬼のように見えた。
「Hola!Podrías unirte a nosotras?」(やっほ!わたしたちのなかまになってよ!)
突然森のかわいい少女の妖精ももいーが現れた。
「No. Non lo faccio.uscire.」(いいって、どっかいけ。)
素っ気なく追い払うヤスター。
それが彼女の怒りを買った。
ももいーの感情を司る扁桃体
堪忍袋が金袋ならまるで心は銀行さながらマイナス金利発動
怒涛の怒り買い上げ政策発動である。
「Me estás tomando el pelo?」(なめてんのか?)
突如として死闘が始まった。
戦いを通して二人の間に絆が生まれた。
それにより妖精の加護を一身に受けたヤスターはとても強くなった。
「iniziando la dolce vendetta!Mi vendico di te.」(さぁ、復讐劇の始まりだ!奴らを見返してやる。)
ヤスターは自分を追放した復讐相手のパーティが酒場で飲んでいる現場を目撃した。
モンキーは相変わらずの馬鹿面でバーボンのストレートをジョッキで飲んでいる。
彼/彼女はいつも水代わりにカルーアミルクをマリッサから哺乳瓶で与えられているので
大変に酒に強いのである。それにより酔歩のような軌道を描いて彼/彼女は戦う。
それは肉体の跳躍であり、手刀の太刀筋であり、遠投した物体の軌跡であり、モンキーのぐっちゃぐちゃな人生そのものでもある。
モンキーの馬鹿面は見た者に激しい怒りを与える。だからパーティーメンバーは彼/彼女が酒を飲んでいる時はいつも顔を背ける。
しかしヤスターは見てしまった。心に憤怒の嵐が巻き起こり体が勝手に酒場に乗り込む。
「といっ!といっ!ちょっちょ!むんべー!」
モンキーがバーボンをジョッキで飲む音
「ちょっく!ちょっく!」
モンキーが豆を食べる音
「Sunshine being surrounded smiley happy people!! You are just like the sunshine of us!!」
(太陽はその輝きで人々を笑顔にする。モンキーあなたは我らの太陽だ。)
ジャンボが高らかに笑う。友と喜びを分かち合う。歌うようにさわやかな言葉を吐き出す。
「うんこ野郎おしっこ女郎共が!!失せろ!!ここは俺の庭だ!!」
怒りのあまりヤスターは言葉がペラペラになった。
「Vous regardez en arrière dans la solitude, mais personne ne vous aime là-bas.」
(孤独の悲しみに背を向けて帰ってきたのか。だが、ここにお前の居場所はない。)
マリッサが心の底から哀しみに飲まれてしまった顔で、ヤスターの目を見ずに小さく呟いた。
「ランダムウォーク……。」
小さく技名を唱えるとモンキーが肉薄する。三日月に切られたメロンの上に載った生ハムのような動きでヤスターに迫る。
「お前の二つの人格はさながら弓張月……。陰と陽だ。そうだろ?モンキー。」
ヤスターが軽くいなす。盾で弾き飛ばすとモンキーの体が酒場の壁を突き破り街路まで吹っ飛ばされた。
「Va te faire foutre.」(失せろ、痴れ者)
マリッサが投擲した哺乳瓶の破片でヤスターを攻撃する。
ウランガラスの光が酒場に散らばる。幻想的な光景が広がる。
思わず戦いをやめて皆が一瞬息を呑んだ。
その隙にジャンボが毒針を投射した。ヤスターの喉元に突き刺さる血が吹き出る。
紫色をした毒液が彼から流れ出る血と混ざり合い
流れ出る液体はドラゴンフルーツの赤い果肉の色をしていた。
「I pray for all of you.Marigold grew where the blood of your all in the mind among us.」
(お前の全てに祈りを捧ぐよ。その血で失望と別れの悲しみの花が咲く俺たちの心に。)
「Sweet memories smells like a mizubasho,but we will have been burdening.」
(美しい思い出は水芭蕉のようだが、その代わりに枯れる事の無い苦しみを俺たちは背負い続ける。)
ヤスターは息も切れ切れに酒場を去った。
妖精ももいーは彼を既に見捨てていた。その事に気づいたのは酒場の門から振り返って店を覗いた時だ。
ももいーはモンキーと共にいた。彼と愛し合っていた。叶わぬ恋と知っていても愛の炎を燃やさぬ訳にはいかないのだ。
妖精とはそういうものだ。
ワスレナグサと共に青春は散り落ちる
初夏の雨に濡れて思い出は美しく雫を垂らす。
愛しい人よさようなら
夏が去り葉が赤く染まる頃
私は実る恋を知り、翠微のように遥か霞む春の青さに笑うだろう。