第81話 炎龍王討伐戦 其の三
「う、おおおおおおおおおおおおおおお!!!」
クソが!!んな熱い展開されたらこっちもマジで、カッコ良く防いで魅せなきゃイケねえだろうが!!!
「ふぅー!ふぅー!ぐぅ…お、お゛お゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」
腕を突っ込む。
後ろに魔法障壁を展開する。
(闘気を、纏え!防げ、傷を、少しでも腕が溶け消えるまでの時間を稼げ…っ!)
デフォルトでは全身を薄く覆っている闘気を両腕の肩までを保護する、又は熱を弾くように操る。
永続魔法の物魔障壁は先程の尻尾薙ぎ払いで術式ごと粉々に修復不可能なレベルで破壊されたので使えない。
(魔法である以上打開策はあるはずっ!何か…何かないか!弱点は?!隙は!?見つけろ、なるだけ早く、そうしないとマジで死ぬぞ俺ぇ!!!)
「――――! そこォッ!」
ここまで身近に死というモノを意識した事はない。
それこそ初めて聖剣を生で見たときの数秒間と同じくらいの濃厚な…殺気とでも言うのだろうか?
一瞬、闘気で弾いた熱がそのまま別の方向に流れるのを魔力探知の魔術(魔法との違いは魔法陣か脳内術式か)で気付き、そこに魔法を撃ち込もうとして、思い出す。
(――――っ!? ち、げえだろうが!!!)
危ねえっ!濃厚な殺気に当てられて正気を失ってやがったこのクソバカは!?
そうじゃねえだろ!真っ向から、魔法でもなんでも使って弾き返してやるんだ!!!
んな雑魚みたいな、つまんねえクソみてえな逃れ方してたまるかよ!!!
(こうなりゃMPも使っていい!魔法陣もお詫びに全部使ってやる!!!俺がバカな事したお詫びだ!)
「うらぁぁぁぁ!!!フレア・ストーム!グラビティ・ビーム!!!イビル・グラビティ!!!大緑鎌旋風!ウォーター・マルチ・ボール!」
これでどうだ!?
残ってる魔法陣はもう殆ど使ったしオマケで魔法まで使ってやったぞ!?
――――くぅっ、駄目だ!
押し負けてやがる!?
あれだけやって駄目とかどんな魔力してんだよこの炎龍王!?
………やっぱり、最後はこれしかねえな。
「……っ、絶技!!大海ッッッ!!!」
『…っ!? 我の秘技相手に、押し負けてない…だと!?…フ、フハハハハ!!流石レイアンだ!それでこそ!』
舐めんなやスカーレット!!
こちとら始祖の吸血鬼だったんだぞ!
「……っ、……がはぁっ!」
……だとしても、ヤバイ。
両腕、燃え尽きた…!
再生、できるか!?
もう炭すら残ってねえぞ!?
「い゛っ゛…てえ、なァァァァッ!!!」
押し返せ!今んとこ拮抗してるんだ!
少しでも…っ!
(魔法はまだ使えるんだ!大海の威力増強になる魔法全部やれ!)
水魔法“水球” “激流” 火炎魔法“爆炎” “火炎ノ渦”
ユニークスキル〘血染〙 <操血><大血弾><血剣><血槍>
「う゛ぅ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっっっ!!!」
――――押し返した!
しかし、気の緩みのせいですぐに逆転、それどころか押し負け始めた。
(………どうする?正直、今は気分良いしこの一撃なら散ってもいいと思ってるけど)
………駄目に、決まってるよな。
これはあくまでもレイアンの身体なんだ。
俺のでは、決してない。
(とはいえ、今の状況で真っ向から押し返すには…)
――――やるしか、ない。
ぶっつけ本番だし試した事もないがやるしかない。
「……なぁ、スカーレット」
『………なんだ?』
「今の大海、形と勢いを操れるのは知ってるよな。」
『なんとなく、だがな。』
「大海は全方位殲滅型。もう利き腕の方の半身は炭になってるかそれすら燃え尽きてる。尚更それは覆せないよな。」
『………!? 何が言いたい!?』
そんなもん決まってるだろ。
まあ、これはあくまでも最悪のパターンの話しだが…
「俺と心中するかも知んねえな。ハハッ!」
『………簡単にはくれてやらないぞ?』
「承知の上だ。名付けるなら…」
そうだなぁ…どんなのがあるんだろ?
どうせならカッケェのがイイなぁ。
「名付けてオメガ・ブラッディ・ビーム!ルビふるなら極太紅血光線ってなァァァ!!!」
『う、おおおおおおおおおっ!?!?!?』
一点集中なら突破できんだよ。
まあ、さっきも言ったが最悪心中する事になるがなぁ!
笑えねえがお前とならいいや!
実際これしか突破する方法思いつかねえしよぉ!
「いっけえええええええええええ!!!」
『ぐぅぅ…うぎゃああああああッ!?』
龍炎を穿ち貫いた紅い光線は炎龍王スカーレットの肉体をも貫き、巨大な風穴を開けた。
そして、制御を失った龍炎は俺たちの身体を焼き尽くす。
「…………がはぁっ、ゴホッゲホッ!ぐ…」
『………運が悪かったな』
………しかし、炎龍王の肉体の面積としては小さい。
心臓や、魔石などの重要な部位を一切傷つける事が出来なかったのはやはり視界一面覆い尽くす龍炎でマトモに前が見えなかったせいだろう。
「………おわ、らねえ。終わらせねえ」
『…………再生するにしても、せめて喋るな』
「まだ…まだだ!!!」
こんなところで終われねえ。
終わりたくねえ。
「諦゛め゛る゛か゛よ゛お゛お゛お゛!」
吸血値は餓死しないために残す最低限の分しか残ってない。ので、再生は出来ない。
そのまま、咆哮と共に踏みしめようとした脚は…
「っ!?」
炭化しており、力を入れようとすると激痛と共に崩れ去った。
頭から転ぶ。全身が痛い
「……っ…、……ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」
肺も結構ヤバイ事は激痛が知らせている。
それでも、それでも…っ!
『……………もう「終゛わ゛れ゛る゛か゛よ゛!!!」…っ』
諦めない。
立ち上がる気力なら残っている。
魔力が尽きている訳でもないんだ。
それなら、やれる、はずだろうが!!!
《称号『死を超えた者』が発動しました。》
はっ…神とやらはみっともなく藻掻く俺の姿をまだ見ていたいらしい。
損失した四肢のみが再生する。
「第三ラウンドだァァァ!!!」
『………流石に驚いたよ。』
……今、イライラしてんだ。
ごめんよスカーレット。
死に際、どうせなら大人しく死を受け入れて『見事』とか言えればカッコ良かったんだけどなぁ…
何故か、残ってもねえはずの生存本能が出て来たんだ。
毎回毎回これの後は気分が悪くなる。
まるで精神汚染だ。はは、レイアンの封印似たようなのが俺にもあんのかな。
…笑えねえ
「悪いが…ぶっ飛ばす」
『上等だレイアン!』
右足に力と闘気を込めて駆け出す。
嗚呼クソみてえな性悪神よ、どうせさっきの感謝もオメェがやったんだろうが!!!
性悪神:やーだこっわぁい♪相変わらず釣れないんだからチノリくん




