第65話 近衛騎士vs獣人村 最終戦 中編
よっしゃあああストックではジーク君編まで行ったぜえええええ!!!!!
「エクスプロード!」
「『司るは生命!我らが女神よ、我らに仇なす存在の悉くを穿ち抜き給え! 死滅の砲弾!』」
「近距離転移!」
爆発をものともせずに即死攻撃を放つバルバロト。
しかし、“砲弾”という名前でなんとなく横によければいいんだな。と勘付かれてしまい、難なく避けられる。
「っっっふぅーーー!」
「退魔ノ光!穿ち抜け“光線”!」
「光届カヌ闇ノ世界!重力魔法!」
「クソ、最早光の剣は効かぬか!なら、せめて!」
属性剣を投げつけ、重力魔法を最大出力の光属性魔力で相殺、剣がその場で砕け散った。
「クソ…あと、2発くらいが限界か…?『司るは生命。女神の権能を勤勉なる使徒へ貸し与え、その深き慈悲を、威光を示し給え、 刹那の地獄!』……残り一発、どうだ?!」
「…転移魔法の余力は…なさそうだ。一か八か―――無魔法“固定”!」
固定――――できない。捉えられない。
転移魔法には一回MP300くらい持っていかれる。近距離で…だ。
くらい、なのはスキルレベルがあがったら消費MPが下がる場合があるから。
今、俺のレベルは一週間念入りにレベ上げしてそれでも14だ。
MPは現在2000くらいだったのが2500くらいになっている。
それでも、あまりにも多すぎる。
「ふぅうううっ」
覚悟は、決まった。
なあに。やる事は簡単だ。
向こうが固定できないなら自分の使った方を固定してやればいい。
「闇魔法オリジナル“喰ライ尽クス闇”、結界魔法オリジナル“オールバリア”、無魔法“固定”。」
「5属性混同魔法オリジナル“オールダークネスバリア”」
おいおい。かっこういいが固定要素どこいったよ。
…はぁ。まあ、即席で俺に名付けろって言われてもそれ以上は中々難しいし。
制御はレイアン、魔力流すのは俺、抵抗すんのは二人でだ。怖くねえ。
怖くねえから、やってやる。
権能だろーがなんだろーが防ぎ切る。
ぶっちゃけこの3つの魔法やるんだったら転移魔法の方がMP消費少ないけども。
………失敗すんだよね。
ほら、MP300必要で、今の俺が500くらいあるんだ。
制御にはMPは使わない。魔力が高いと制御が楽になる。
…代わりに、精神力を少し削られる。
魔法って集中しなきゃ使えないの。
この世界なら常識。
だから、さ?
あとはわかるだろ?
転移魔法は制御すんのにMPと精神力合わせたら800は使うんだわ。
弱気は辞めだ。
目にもの見せてやる。
吸血鬼がどれだけ恐ろしいか死ぬまでに考えてやがれこのクソヤローが!
「うお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!!」
ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!
電気で痺れるみたいな音が一瞬止まって、より一層耳障りな甲高い音が響くと、闇魔法の制御負担が2倍になるが代わりに並列作業がやり易く…いや、やらなくて良くなる。
闇魔法を何回も何回も何回も使って掻き集めるが外側がまるで消滅したかのように反応を消すためにイライラさせられる。
闇魔法のレベルや結界魔法のレベルがあがる音がする。
ぶっちゃけ邪魔だが精神安定に使えるので消さない。
魔力が、MPが、精神力が底をつく。
感覚でわかる。
この眠気は霧の森全域に探知結界を張った時と似た…同じやつだ。
――――不味い。ここで意識を失えば間違いなく死ぬ。
レイアンがしばらく使っていなかったラグ会話をする。
つぎの瞬間、全身を痛みが駆け巡る。
これが、不幸中の幸いってヤツか。
身体が朽ちてより意識が遠のくタイプじゃなくて激痛と共に死ぬタイプなのは良かった。
意識だけは保てる。
見れば、権能の効果はもう尽きる寸前じゃないか。
ここを耐えれば。ここさえ耐え抜けばなんとかなるんだ。
「あきら、めるなッッッ!!!」
踏ん張れ!
やれる!俺ならやれる!
「まだ…まだ、だっ…!終わらない…終われない!終わってたまるものか!」
身体が崩れる。〘血染〙の止血は効果がない。
吸血値は魔力が消えたときの最終手段だ。
無駄には使えない。
――――「嗚呼、俺達は死ぬのか。」
……………、諦める事だけは、せめて。
《称号『運命の反逆者』が発動しました。一度だけ“死”に抗います。》
………ぇ?
10秒待ってみる。
…が、終焉は訪れない。
「…は、はは。」
幻聴じゃ、なかったのか。
一方でバルバロトも、転移魔法を使わなかった(転移魔法について詳しく理解はしてない)事で、確実に仕留めきれたと思っていたので吃驚していた。
そのため、無防備なレイアンに攻撃を仕掛ける余裕…というか、そもそもその考えに至らなかった。
「――――っ!? そう、か…この状況で生きていたのか。」
バルバロトの声が聞こえる。
………魔法で、止めを刺すか。
「……クソ。私も、いや、俺も賭けるしかない。この一撃に。『司るは生命ッ!代償は我が命をッ!愛する女神よ!我が命をもってこの吸血鬼を穿ち抜け!
生命の弩弓ッッ!!!』―――かはっ」
「闇よ、大いなる闇よッ!我の呼びかけに応じ、全てを覆い尽くせッ!固有結界“ダークネスフィールド”ッッ!!!――――ぅっ、ぐ…そし、て…ダークネスランス…ぁ」
向かい来る“死”をオリジナルの結界で相殺…とまでは行かなかった。が、剣でいえば鍔迫り合いになっているようなその一瞬の間に固有結界によって強化された闇槍が、首飾りによって一度だけ復活という効果が発動し終わると同時に命中、見事に心臓を穿ち抜き、本当に絶命させた。
一方のレイアンも魔力切れで、仕留めきれたのを確認して安心したのもあり意識を手放す。
『生命の騎士バルバロト』vs『紅き大海のレイアン』
勝者は、レイアンだった。
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犬耳のようなものを生やした男、もといハウリルは無様に地に這いつくばり、意識を失っていた。
対してウサギ耳と呼ばれている異世界人は、魔力は相当使わされたようだが、打撃を腹に一発貰って血反吐を吐いただけで骨の一本も折られていない。
装備は…魔道具を一つ消費させられただけだった。
「……単純な技術で負けるなんて、随分と久しぶりだわ。この獣人、何者なのかしら?」
ハウリル相手に技量で勝てるものなんてそうそういない。
むしろ勝てたのなら誇っていい。
無敗伝説を覆したのだから。
…まあ、最も本人は戦闘中相手をイライラさせる間延びした声すら忘れるほどに不機嫌だが。
「……レイアンの方は多分、団長が片付けてくれただろうけど。ジーク君は確かハーレムルート入ってたわよね〜」
思い出す。
ミィリスを連れていたのは3年なので良いとして現在ヒロインがチート斥候女含めて5人だったはず。
「あのスピードなら間違いなくそうよね〜、うん。」
「……あれ、そういえば〜、なんで、レイアンが生きているのかしら〜?」
ある一つの疑問。
そして、思い返せば転移魔法まで使っていた。
「………もしかして、私とおんなじ転生者なのかな?」
ほぼ確信めいたそれが、もぬけの殻の獣人村に響く。




