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第60話 近衛騎士団vs獣人村 ⑥

二章が…あと、少しで…ようやく終わる…!ガクッ




 「副団長、離れていろ。」

 「わかりました〜」

 「『司るは生命。女神の権能を勤勉なる使徒へ貸し与え、我々に害なす存在を討ち滅ぼし給え

 生命の蕾よ、枯れろ!』」

 「〜〜〜〜〜ッッッ!?」


 雑草が枯れる。

 木々が逞しさを失い、葉が落ちる。

 細々としたそれはやがて倒れ、レイアンに離れたほうがいいと伝えてくれる。


 (離れろ!全力でだ!魔法も惜しみなく使え!じゃなきゃそこの木みたいになるぞ!)

 「っっっるぅうお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ………」


 初動は、素早く翼を広げて後方に跳躍。

 術式を頭の中で描き魔力を流す。

 並行して両翼を全力ではためかせ、水魔法を勢いよく噴射。


 これはいつかの夏に水鉄砲で眷属たちと遊びたいと思ってバッティと練習した魔法なのだが、それを今の成長した魔力とMPで行使、太い水のビームがレイアンの身体を更に押し上げた。


 そして近距離転移(テレポート)を使用、それと同時に転移魔法の一瞬の光に包まれながら重力魔法も準備、術式の大まかな当たりはつけてチノリに託す。


 託されたチノリは全力でそれをこなし、転移終了と同時に重力魔法で自分を後方に飛ばすように重力負荷をかける。


 そしてレイアンは成功に気付き素早くチノリの補助をする。具体的には魔法の補助と同時になんとかあの騎士団長を吹き飛ばすために重力を放った。


 もっとも、どれも精度はお粗末で転移できた距離も80cmほど、重力魔法も普段よく使うグラビティ・ビームと比べたら天と地ほどの差があったが気にする暇もない。


 「ぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああああああああああぁぁぁっっっ!!!」

 「チッ!外したか!」

 「嘘でしょぉ〜、まさか、こんなに強いだなんて」


 咆哮をあげながらも自身が生き延びた事を実感するレイアン。


 そして、チノリは冷静に(あの技には気をつけた方がいいが射程は短い模様。恐らくクールタイムも存在する)などと言っていたが、

 実際は『やべえええええ俺これ逃げ切ったのまっっっじで天っっ才じゃあああん!?!?!?』ってくらいのテンションだった。


 「ハァ…ハァ…ゼェ…ハァ…グラビティ・ビーム!」

 「吸魔!」

 「もう一度離れていろ。今後こそ仕留める!」

 「は〜い、でも、無理はしない方がいいと思うよ〜」

 「っふぅーー、『司るは生命。女神の権能を勤勉なる使徒れ貸し与え、その深き慈悲を、威光を示し給え!!!

 刹那の地獄!』」

 「んなぁっ!?」


 一秒、その瞬間レイアンへと迫る不可視の死。

 されど、真っ直ぐにレイアンの元へ確実に向かっていた。


 (馬鹿な!?こんなチート技連発できるはずが…!?)

 『やるしかない、長距離転移だ!』

 (クソがぁあ!)



 チノリの補助、レイアンの全力を注いだ転移魔法。

 長距離転移はかなりのMPを使用する。


 現在はMPが残り55%しか残ってない。


 「長距離転移(テレポート)!」

 「吸魔…は使っちゃ駄目、かな〜」

 「当たれええええええ!!!」


 クソ、座標指定が間に合わねえ!

 MPは1%残して全部注ぎ込んでやらぁ!


 術式は!?


 『完了!』


 魔法陣書いてる暇はねえ!


 『ある!風魔法手伝え!』


 分かった!

 …術式左任せた!


 『もう終わったぞ!』


 魔力注いだ!

 発動しろ!


 俺は転移魔法の制御をしておく!


 『疾風魔法、旋風!』


 鋭い風が地面に荒く雑な魔法陣を刻み込む。

 そして、それのおかげで無事成功した。



 ◇◆◇



 「成功…だな。」


 (そうやな。)


 「転移魔法、レベルあがったぞ。」


 (うれしいな。)


 「それで………ここ、何処だ?」


 (霧の森の何処か、だな。)


 「冷静だな。」


 (バッキャローんな訳ねえだろうがアホじゃねえのかテメェ。)


 「声音が落ち着いているぞ」


 (声音もなにも心の声だよ)


 「屁理屈はいいからはやく」


 (うーんと…前にもこんな事があったから、か?)


 「だろうなぁ…」



 転移魔法を使うと現れる魔力の光。

 それが消えたときには恐らく霧の森にあるであろう、湖の近くに生えた木の下にいた。

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