第41話 自覚と再会
俺はイエローワイバーンが前戦った個体ではない事にすぐ、気付いた。
何故か。勘、だな。
あれだけのトラウマをぶち壊してなんの感慨もない、というのはさすがに可笑しい。
それに、かなり弱かった。
雷ブレスは使ってこなかったし落雷も3発しか撃ってない。命中率は0%では、外さなかったアイツとはとても思えなかった。
雷は特殊属性魔法だと、8年も前のことなのであまりおぼえてないが、多分そうだと聞いたことがある。
正式名称“雷鳴魔法”。
とんでもなく格好いい響きだ。
中二心を分かってやがる。
恐らく、アレを使える個体に偶々タイミング良く進化しやがったビッグワイバーンがさっき倒したイエローワイバーンの正体だ。
(どうする。このまま地上のヤツを狩り続けるか?レベルは一気に6もあがったが…。)
――――ゆけ。チノリ
(? ………まあ、検討するか。)
本物のイエローワイバーンの群れに突っ込む事を。
それはそうとして、今、誰かに囁かれたような?
……………
―――― ズ、ザザザ わ、たs……da
…ああ。やっぱり、そうか。
お前もちゃんと生きてたんだな。レイアン。
−−−
自覚したのはいつからだろうか?
確か、記憶の中で一番古いのはジークとの戦闘中…いや違う。ずっとだ。最初から居たんだ。
ここに来た日。
その日に見た夢は、レイアンがジークに殺される場面を、そう。俺がゲームをして、その時に殺したアイツが、それを見て藻掻き、苦しんでるその様を見て心底同情したね。
まあ、他人にされるよか今からそうなるのを回避する為に奮闘している俺の方が多少マシなんじゃなかろうか?
話が逸れた。
次に確認したのは、ジークと戦った後、事後処理で疲れて眠った時にこっちをホッとした顔で見詰めてくるレイアンの姿だったか。
なんて言われたかは忘れたけど話しかけられたんだよな。
次が、ちょっと間を開けてムートと試合したとき。
グラトニー・ガイアを受けて瀕死になって気絶した俺に『自分の眷属の躾くらいちゃんとしろ!まったく…』って。
驚くくらいの、美声だったぜ。
多分俺が生きてんのもアイツが助けてくれたからなんだろうな…。
そして、最近はあんまり出て来なかった…って、思ってたけどスイッチのon、of。
よくよく考えたらオンの時喋ってんの間違いなくレイアンだよな(笑)。
なんで気付かなかったんだろ。
今だって、語りかけてきてさ。
…ごめんよ。勝手にお前の器を奪っちまって。
本当に、ごめんなさい。
−−−
罪悪感を紛らわす為か、気付くと俺はイエローワイバーンの群れに単騎で突っ込んでいた。
全身を噛まれて偶に火球で火傷を負わされて火球の勢いで吹っ飛ばされて。その痛みが、贖罪になる気がして。
――――馬鹿が!反撃の1つでもしろ!
…………あ。
…そうだよな。
お前の身体だもんな。
ごめんな。勝手にケガしちまってさ。
ふん!って、聞こえた気がする。
まあ、許して貰えたみたいだし、頑張るしかないよな。
◇◆◇
とは言っても俺は魔力も吸血値ももう殆ど残ってない。
ひたすらに殴り続けても筋力値減ってるからそんなに倒せない。あれ?つんでる?
「ふぅ〜、トルネード・サイクロン!」
「「「ギャオオオオオオオ!?」」」
蹴散らし、邪魔者の作った壁に隙間が生じた瞬間そこを強引に突っ切って群れから抜け出す。
同時に火球が無数に飛んできて俺のHPが100を切った。
(頭おかしいだろっ…!)
地上に降りる寸前、ふと振り返ると大量の火球が容赦なく叩きつけられる本の数秒前だった。
思わず目をつむり、諦めかけたその時、
『あっぶな!ハイ・ヒール!』
「あぇ?うぐ、あああああっっ!?!?」
女子っぽい声と共に傷が言える感覚があり、瞼を開くと肉の焼ける痛みが襲いかかってきた。
イエローワイバーンが群れごとこっちに接近し、訳がわからず困惑しながら魔法を放とうとしてMPが全く残ってないことに気づく。
「は?は?うぇ?」
「ガァオオオオオオオ!!!」
『エリア・ヒール!レイアン様、ご無事ですか!?』
「うええ?えぇあ?」
目の前に、地竜と巨大粘体が俺の心配をしている。
え?なんで?
「ふぁ?本、物?いや、死ぬ前に見てる走馬灯?」
「ガァ…」
「ごふぅっ!? いってぇな。………てことは、夢じゃないのか。」
『はい、現実です。助けに来ましたよ、レイアン様。』
「この声、もしかしなくてもプルーか?」
『正解ですっ♪』
oh…
バナナっていうと思ったか?
いいませーん!
「あれ、さっきのワイバーンは?」
『100体程度のアレでしたらムートが殲滅しましたよ。』
「おお…」
どんだけ強くなったん…あ。そうか。
纏まってたから風ブレスで薙ぎ払えたんだな!(納得)
「ところで、なんでいきなりここに現れたんだ?」
『転移魔法です。』
「へぇー、そう…………ふあっ!?で、でも俺は敢えてスルーするぜ」
あまりに唐突で理解するのに時間がかかった。
「――――れぃぁーん……ぇんごぉー…たのむぅー…!」
小さく、チェシャの声が耳に入る。
――――えんご、とはイエローワイバーンの事だろうな
やけに饒舌じゃねえか。
…どういう?
――――チノリ…まあ、いい。つまり、ヤツを狩れって事だ
あ、あー。そう言うことね。
いや、分かってたよ?勿論。
―――― ………(ジトー)
お、おいおい。なんでそんな不審そうな雰囲気出すんだよ。
あっ!それより早く…アイツ、殺さなくちゃな。
「イエローワイバーンは俺がやる。プルーとムートは前衛と後衛をそれぞれ頼んだ。」
「ガァッ!」
『了解しました。』
リベンジマッチといこうじゃねえか!




