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第37話 プルーの大冒険③

予告1:ジーク視点はもうちょい後



 -転移遺跡10層(最終層)-



 私達は今、最終層のボス部屋前にいる。

 後輩も私も、もうMPを消費する魔法での回復しかできない。


 カエルの部屋からあとはマウンテンゴリラ、レッドワイバーン(112歳)と続く。


 そして、この部屋の中からは強大な“死”の魔力を感じるのだ。


 おそらく死霊賢者(リッチ)などの上位不死者(アンデッド)。かなり苦戦するだろう。


 「ぷるぷる(開けるよ)」

 「……ガァァァァ(わかった)」


 身体変化を使って触手を伸ばす。

 扉を音を立てて開いた瞬間、


 「「〜〜〜ッ!?!?」」


 ――――濃密な魔力と共に神霊賢者(エルダーリッチ)が姿をみせた。


 すぐさま後輩が大地魔術でグレーターウォールで巨大な壁を創り出し私がそこに樹木魔法で伸ばした木の根を硬質化、巨大化して巨壁にまとわりつかせる。


 「火炎魔法、エクスプロージョン。」


 生気の感じられない声…恐らく念話を使ったそれが聞こえた瞬間、本来とはかけ離れた威力の大爆発が私達の創り上げた防壁をいとも容易く粉砕し周囲一帯を黒焦げにして溶かしながら私達を吹き飛ばす。


 部屋の壁にぶつかってなんとか止まったのに次は超高温の熱風が後輩の鱗を貫通して肉を焼く。


 私は相性最悪の樹木魔法でなんとか防いだ。


 …根っこは燃えたけど。



 「ぷるぷるぅ(樹木魔法)!」

 「ガァオオオオオオ(ロックキャノン)!」

 「障壁(バリア)



 樹木魔法で生み出した木の根を硬質化させて操りズタズタに引き裂こうとする。

 後輩の岩の砲弾が木の根の後ろから迫るが、余りにも膨大な魔力により無色透明なはずの障壁がドス黒い紫色に変色し、それによりあっさりと攻撃を防がれる。


 打つ手なし。


 鑑定してみると魔力は


 神霊賢者:MP:105000/110000


 ……。


 「ぷるぷるぅううう!(にげろぉおおお!)」

 「ガ、ガァオオオオオオ!(ま、まてよせんぱーい!)」


 敵前逃亡。


 あまりにも唐突でエルダーリッチはポカンとしてボス部屋の出口付近に居た私達は運良く逃げ延びた。


 ……進化するしかない!


 今回の遺跡攻略で私はレベルマックスだ。

 レッドワイバーン(112歳)とゴリラで一気にレベルがあがった。


 === 進化先候補 ===

 ・ビッグリボンスライム


 ==================


 一択しかないじゃない。


 まあ、やるしかない。



 進化!



 青白い光が遺跡の通路を包み込む。



 === 進化情報 ===


 スキル:身体大変化 を取得しました。

 より自由に身体を操作できます。


 ========================


 …それだけ?


 と、思ったら妙に視線が高い。


 『ええっ!?……え?』


 どうやら念話が自由に使えるらしい。

 そして、身体が5mを優に超える巨体になっていた。


 本能が告げる。


 身体大変化により普段の50cmにまで戻り、ようやく気づいた。


 内包する魔力の量が桁違いなことに。



 ----- プルー ランクB+ -----


 種族:ビッグリボンスライム Lv:1/300

 状態:健康 空腹度:300/300


 HP:1100/1100

 MP:900/900

 筋力:770

 魔力:610

 敏捷:115

 防御:850

 知力:665

 精神力:455


 得意属性:治癒、樹木、火、水

 弱点属性:光、聖


 スキル:身体大変化、念話、跳躍Lv9、治癒魔法Lv2、樹木魔法Lv4、火魔法Lv1、水魔術 SP、吸収LvMAX、放出LvMAX

 耐性:火、物理(中)

 ユニークスキル:『絆のリボン』《全回復》《位置把握》

 称号:『始祖吸血鬼の親友』


 −−−−−−−



 後輩はその光景を眺めながら休んでいた。

 私もちょっと疲れたかも…



 ◇◆◇



 一休み終えて再び部屋に入り込む。


 『火魔法、ファイヤアロー、ファイヤボール、ファイヤウォール。』


 瞬間に不意打ちで大量の火を創り出し、上手く当てられた。


 「うぉ…フレイムストーム。」


 お返しとばかりに先程私が放った何倍もの火力を誇る灼熱が部屋を飲み込む…寸前、後輩が大地魔法のグレーターウォールで火を防いだ。


 そして、魔法の準備が整ったらしい後輩が風ブレスを牽制がてら放ち、油断していた神霊賢者に直撃する。


 そこまでダメージは無かったがマトモな攻撃が入ったのは素直に喜べるだろう。


 続けて後輩が大地魔法の岩砲弾(ロックキャノン)でエルダーリッチのマジックバリアごと穿ち抜き、エルダーリッチを吹き飛ばした。



 「ぐぉあっ」

 『樹木魔法』


 短く唱え、ぐんぐん生えてくる樹木を壁にこっそり完全無詠唱で放たれたクレイガン…最早ロックキャノンと大差ないそれが木の幹と対消滅する。



 「グルルルゥ…ガァオオオオオオオオオオオオン!」

 「マジックミラー」

 「グルォオンッ!?」

 『治癒魔法、ハイ・ヒール』


 後輩が放った風ブレスだが今度は反射されて大ダメージを受けた。


 回復させて前を見ると――――?


 「……………むずかしいな、これは。…………」

 『!? ムート、急げえっ!樹木魔法―――!』

 「ガァオオオオオオ!」


 ――――最上位の大海魔法を繰り出そうとしているエルダーリッチがいた。


 樹木魔法が圧倒的な質量に圧し潰される。

 ムートの風ブレスも最初こそ少しは前進できたが数秒後には同じく圧し潰された。


 グレーターウォールは分解されて更に潰される。

 火魔法は一部を水蒸気に変えることすら叶わず一瞬で消し潰される。

 鱗は大量に剥がれ落ちて数秒後には跡形もない。

 身体大変化によりできるだけ身体を大きくして10m前後まで来たが削られ、抉り取られて元に戻り、50cmにも満たない。


 ――――2体の意識が失われかけた時、樹木魔法で発生させた巨大樹にありったけの魔力を込めて超成長させたプルーがそれを硬質化、そして根で【吸収】を発動させて大海を吸い込ませる。


 まだ少し残っているようだが殆ど水はない。


 ヒタヒタ


 「ほう。耐え切るとはな。……鎌旋風!」

 『ぐああああっ!?』


 全身を切り裂かれる。

 ムートは意識を失う寸前だ。

 物理耐性のおかげで細かい傷しかついていないがこのまま身体を削り取られればスライムの構造上消滅してしまう。


 『樹木、魔法っっ!』

 「なに!?ぐぅ、ぉおおおおお…」


 巨大樹の根がエルダーリッチを締め付け、棘を生やして骨を貫く。

 フードコートは穴だらけでよりいっそうボロボロだ。


 そして、吸収を使用して膨大な魔力を奪い取る。


 MAXになったMPを使い、私達の身体を癒やし後輩が意識を取り戻した。


 次からは攻撃に回し、後輩に分ける。


 「バーニング・フレアストーム!」

 『樹木魔法、再生、再生再生再生!硬質化!耐性:火(大)付与!吸収補助っっっ!』

 「ガァオオオオオオ!」


 支援して根が焼き切れるのを防ぎ、更に後輩が圧縮してレイアン様のブラッディ・マルチ・レイに似たレーザー型の風ブレスを3秒間エルダーリッチの頭を狙って撃ち抜く。


 「ぐぎゃああああっ!ぜぇ、はぁ」


 息切れしている様子を見るに相当魔力が減っているようだ。


 「……腐食!」

 『…え?』


 渋々と言った声音で唱えられた魔法は巨大樹を簡単に溶かした。侵食、とも言える。


 嘘だ。こんな簡単に?

 冗談でしょ。これじゃあ、勝てる訳がないじゃない。


 「魔力が、もう三分の一しかない。やってくれたな。」

 「グルルル…ガァオオオオオオオオオオオオン!」

 『……しょうがないわね。』


 後輩が唸る。エルダーリッチを警戒しながら。

 後輩ですら魔力の流れを感じ取れるほどの“魔法”を感じて目を向けると既にムートはロックキャノンを作っていた。


 レイアン様が以前教えてくれた事をやっているようだ。

 回転と魔力を込めて、射出する際に速度をありったけ出す。


 覚悟は決まった。


 火魔法(バーニング・フレア)をロックキャノンに付与する。


 対して、相手の魔法は意外にも以前見たことがあるウォーターキャノンなるものだった。

 威力や大きさは桁違いだが。


 お互い準備が整い、射出される。


 そして、ぶつかり、視界が白く包まれて――――

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