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第34話 クロウの主人探し①

長いです。めちゃ長いです。

まあでも①は読まなくても別に大丈夫です。…多分



 私はクロウ。

 始祖吸血鬼であるレイアン様に仕える忠実な部下である。


 先日、ワイバーンと戦争したが多勢に無勢。

 どうしようもなく私だけで百匹は殺したが全く勢い殺せず慌てて影に潜りそのまま影を泳いで逃げていった。


 ◇◆◇


 ワイバーンの気配を感じなくなるまで逃げた結果、人間の間でAランク魔境と呼ばれている『竜(龍)の巣』。


 そこに辿り着いた。後輩であるムートと同じくらいの強さを持つドラゴンや龍が大量に住み着き他の生物は一切住まない…いや、住めない広大な平原。

 ただし美味しい食べ物が沢山あるし竜の肉は美味いというのは一般常識だ。


 「グゥルゥ!」「ガァア。」「グルォン!」「ガォ。」

 「…カ、カァー…!」


 (やっちまったぁああ!?なんでよりにもよってこんな場所に出てきちまったんだよぉ!?しかもワイバーンども私に気付いて竜の巣の外周囲んでるじゃねえか!?クソ!クソ―――!影泳いで逃げても追いかけられていずれ餓死するしレイアン様弱体化してるしムートとプルーはなぜか気配が探れないし!?どうなってんだよぉおおおお!?)



 ……落ち着け、落ち着くんだ、私。

 幸い食べ物は大量にある。影から出てこっそりイチゴ(赤 ※色に種類があり1番美味しいのが赤)を食べて生き延びればなんとかなる!


 でも、強くなって少なくとも一回は進化しないと今の私じゃ戦力にならない!


 ワイバーンとの戦争を考えて火力を持たねば!

 それか、いっそのこと適当なドラゴン3体くらい連れて竜の巣から直接ワイバーンの群れに突っ込めば間違いなく戦い合うはず。

 最悪それでなんとかするしかない!



 よし、イチゴ発見!

 近くにドラゴンは…? す、少なくとも100m以内には居ないな。

 こっそり影から近付いて…


 「カァー、ぱくっ…カァー…!」


 お、美味しい!こんなに美味しい物は初めて食べた!

 じゃなくて、はやく潜って…よしよし。


 意外となんとかなるもんだな。


 「ガボボボボ!」

 「カァ?………カァアアアアアー!?」


 あ、あれは!?

 そうだ、こういう時こそレイアン様の新しい加護、万能鑑定(1/1)を使うんだ!


 万能鑑定!



 ----- 名称:アインガルズ ランクB+ -----


 種族:影龍 Lv:11/300

 状態:影泳 空腹度:89/300


 HP:900/900(+100)

 MP:1050/1050(+300)

 筋力:345

 魔力:950(+300)

 敏捷:520(+100)

 防御:400(+250)

 知力:700(+50)

 精神力:350/350(+50)


 得意属性:闇、影、火

 弱点属性:聖、光


 スキル:影魔法Lv8、闇魔法Lv1、火魔法Lv2、生命Lv1、龍鱗Lv5、俊足Lv1、隠密Lv2

 耐性:闇(小)、火(大)、毒(中)

 称号:『魔龍』:MP、魔力に+300の補正


 -------



 …………自分のは、確か無制限で見れるよね。



 ----- クロウ ランクC -----


 種族:影鴉 Lv:4/75

 状態:影泳 空腹度:250/300


 HP:375/375

 MP:280/280

 筋力:205

 魔力:255

 敏捷:305

 防御:190

 知力:335

 精神力:200


 得意属性:影、火、風、闇

 弱点属性:聖、光、水


 スキル:影魔法Lv9、火魔法Lv1、風魔術 SP、闇魔法Lv3

 耐性:闇、火(中)

 称号:『始祖吸血鬼の親友』


 -------




 「………カァアアアアア!?(逃げろぉおおおお!?)」



 やばい…くない。

 意外とやばくない。


 ステータス差は圧倒的だし勝ち目はないだろうが相手の影魔法は私のモノよりレベルが低い上に影の中の世界は藻掻けば藻掻くほど下に落ちていくし身体が大きいと重圧がかかって落ちる速度を倍にする。

 影魔法を使えない者がなにかの手違いで入れたとして地獄を見るだけだしあの影龍、まだ影の中で呼吸ができないらしい?わからないが。


 そして、この特徴を踏まえてみると、敏捷値では劣るが影の中では通用しない。影魔法は私がレベル上。

 身体は私の方が小さく、泳ぐことに適している。



 ……イケる。イケるぞ!


 今の所は大丈夫だ!追いつかれるどころかドンドン距離を離している!


 「カァ!」


 光の無い影の世界だがなんとなく何が何処にあるのかわかるものだ。

 そして、影鴉である私は龍にも速さだけなら勝てている!


 「カァアー!」


 === スキル ===

 俊足Lv1を獲得しました。

 =====



 はいはい!私の完全勝利!

 俊足ゲットした時点でもう追いつける訳がなかろう!

 ふはははは!



 ◇◆◇



 影龍という存在は『竜(龍)の巣』の中では5頭ほどいるらしい。


 これが三日間で得た情報の1つだ。


 そして、最重要なのが湖には現在幼体の水竜がいる。

 コイツなら影の中に引きずりこめば窒息死でなんとかなる!


 「クゥー、クゥー…」


 寝てるな。

 今の内にやるか。


 影魔法で影を創り出しそれを拡大して影潜りを水竜の首を触った状態で発動、そして風魔法で下に行くように水流?をつくる。


 「クゥー?クゥ…キュゥー!キュゥー!」


 声は出せているようだが呼吸はやはりできていないな。


 影に異物を取り込ませた以上“入り口”は閉じない。

 だから上に上がらないように私が抑え込む必要がある。


 「カァーーー!!!」

 「クゥーン!クゥーン!」


 抵抗し、水ブレスを放ったり引っ掻いたりしてくる。

 竜の爪なだけあってかなりダメージを受けたが賭けるしかない。


 「カァアアアアア!(大人しく沈めええええ!)」

 「クゥウーーーン!!!」


 今までに見た事がないほど巨大な水球が私の身体に直撃する。一気に上に吹き飛ばされるが影魔法の束縛影で水竜が上がってこれないようにする。


 「クゥー!クゥー!クゥー…」

 「カァアアアアア!」


 激しく藻掻き、下に沈みながらも束縛影を千切り取って上に向かって泳ごうとする。が、藻掻けば藻掻くほど沈むのがこの世界だ。


 ……あ、やべ、水ブレス下に向かって撃ちやがった。

 爆風?で上に進んだ幼水竜を影魔法の影重圧で抑え込む。


 「カァアアアアア!」

 「クゥウーーーン!!!」


 幼水竜の瞳から光が失くなる寸前、先程の巨大水球が私に襲いかかる…が、


 「カァー!(当たるかよ!)」

 「クゥー、ン………。」


 === レベルが上がりました。 ===

 影鴉:クロウのレベルが3上がりました。

 スキル:影魔法のレベルがMAXになりました。

 闇魔法Lv1を取得しました。

 =====


 おお。凄いな。レベルが一度に沢山あがる事なんてなかなか無いぞ。

 ていうか闇魔法か。派生進化っていうヤツかな?


 ………竜に、勝ったぞぉおおおおおおお!!!



 ◇◆◇




 「カァー(腹減った)」



 マジで腹減った。

 空腹度50切ってる。


 いやね。最近竜が私の存在になんとなーく気付いたみたいでピリついてるのね。

 そのせいで迂闊に外にも出れなくて3日に一回湖にでて水飲んでその近くに生えてるキノコを食べて生き延びてる。


 ていうか、ここに来てもう一ヶ月か。

 レイアン様なにしてるんだろうなぁ〜。



 「カァー?(あれ?竜がいない?)」


 何も考えずフラフラ影を泳いでたら竜も龍もいない場所に辿り着く。


 「カァー?!………カァー。(まさか竜の巣の外?!……いや、違うか。)」


 ………ん?一頭だけ気配が引っかかったぞ?

 加護で鑑定っと。


 ----- ガルドルグ ランクA- -----


 種族:闇竜 Lv:34/500

 状態:空腹 空腹度:32(300)


 HP:1650/1650

 MP:2050/2050

 筋力:925

 魔力:1100

 敏捷:345

 防御:805

 知力:700

 精神力:525


 得意属性:影、闇、邪

 弱点属性:光、聖


 スキル:邪魔法Lv4

 耐性:邪神気(小)

 称号:『邪竜』:常に空腹状態になり飢餓を味わう。


 -------



 …は?

 いや、なんだそのステータス。


 頭おかしいんじゃないのか?

 だいたいその邪竜って称号になんの意味があるんだよ。

 デメリットしかないじゃないか。


 ……勝ち目はないな。


 場所だけ覚えて帰るか。


 「グルルル」


 うるせえな。

 ええと、竜の巣の中心部から大体…1kmは離れてるか。

 方角は


 「ガォオオオオオオ」


 煩いって言ってるだろぉが!


 全く、ええと、方角だったか?

 西…だよな。うん。


 「グルォオオン」

 「カァアアア!………カァー?!?!?!(いい加減に黙れ…え?なんで、いんの?)」


 ………そう言えば、影の中も潜れるんだったな。



 「………カァアアアアアア!?(逃げろぉおおおおおお!?)」


 そういや前もこんな事あったなぁああ!?

 多分コイツ影龍の進化…いや竜は龍になれないんだったか?、いや違うそうじゃない!


 早く逃げろおお!


 「ガォオオオオオオ!」

 「カァー?カァー!?(少しは離れられたか?って速えええええ!?)」


 すんごい早いじゃん泳ぐの!?

 尻尾ニョロニョロさせてんじゃねえよカッコいいけど怖いよ!?


 なにか、なにか無いか!?

 クソ…! 


 「グルォオオン!」

 「カァ…?」


 なんだ、アイツ。

 なんか、黒いオーラに包まれてる?

 いや、アイツが放ってるんじゃない…のか?


 なんか苦しんでるように見えるな。


 「グルルル!?グルォオオン!」

 「! カァー!」


 明らかにスピードが落ちた!

 今なら逃げ切れる!


 全力ダッシュだぁああああ!!!




 ◇◆◇




 はぁ、はぁ、逃げ、切れたか。


 クソ!クソ!


 屈辱だ。

 何も出来ずに逃げるしかないなんて!


 早く、強くなって絶対ぶち殺してやる!



 ……そうだ。


 影収納で保管して置いた幼水竜の死体の肉を影を操って持ってくる。


 …食べるか。


 もぐもぐ、むしゃむしゃ。

 (と、言いつつ実際はバリバリボキボキブシャアッって感じ)


 === 称号 ===

 『竜喰らい』を獲得しました。

 効果:空腹度が0になっても1時間の間生き延びられます。

 HPを+100します。

 =====


 美味い!

 めちゃめちゃ美味しいな!


 ……ていうか、凄い有能な称号手に入れたな。


 さっさと食っとけば良かった。


 まあそれは置いといて、と。

 影龍、か…。


 勝てるかな?

 少なくとも1番最初に出会った個体ならまだなんとかなるか。


 どうする?勝てる事に賭けて挑むか?


 …………やる、しかないよな。

 ただ強くなりたいんじゃない。それだけじゃなくて私には時間制限があるんだ。



 やって、みせる。



 ◇◆◇


 三ヶ月後



 === 取得スキル ===

 大物殺し(ジャイアントキリング):強者との戦闘時全ステータス1.5倍。逆に自分より弱い者と戦う時は状態異常弱体化発動。一対一の時のみ発動する。

 威圧Lv1:相手に恐怖心を確立で植え付ける。

 漆黒のパッシブ:敏捷値+300、筋力値+100


 =====


 === 取得称号 ===

 『竜の天敵』:竜、又は龍に与えるダメージ2倍。


 =====


 上昇レベル:14


 ◇◆◇



 「ガァボボボボボボボボボ!」


 (…運よく最初と同じ個体に出会えたな。)



 影龍のステータスは3ヶ月経った今も変わっていなかった。まあ最もそれを確認しなくても名前で解るのだが。



 影龍が身体をニョロニョロくねらせて近づいてくる。


 ある程度タイミングを測ったところで…


 「カァー!(束縛影!)」

 「ガボッ!?」

 「カァ、カァー!(そして、影飲玉(かげのみたま)!)」


 影を飲み込む光の届かない黒き玉を発生させ、影龍をそっちに無理矢理引き摺り込む。

 吸い寄せられて鳴き声もろくにあげられずにただこちらを睨んでくる影龍に向けて闇魔法のダークボールを連続でMPの続く限り撃ち込み、一気にHPを削る。


 影龍アインガルズ:HP:785/1000


 (よし!結構削れたぞ!)


 レイアン様が言っていたがっつぽーずを内心でキメながらダークボールの爆発で仰け反る影龍を観察する。


 (影飲玉の耐久値はもう三分の一程度しかないな、すぐ壊されるだろう。でも、意外と耐性が機能してないのかそこそこダメージ通ってるな。攻撃力高くなってるのは多分大物殺しの効果か。同じ所に命中したからかそこの鱗がボロボロだ。そこなら防御貫通しやすいんじゃないか?

 まあ、取り敢えずそこを狙うか。)


 「カァー(開放、収縮)」


 影飲玉で吸い込まれた影を開放し、まわりの影ごと収縮する。


 「ガァボボォォ!」

 「カァアッ! ……カァー!(圧縮!)」


 危険を察知した影龍の尻尾による薙ぎ払いが直撃し、吹き飛ばされながらも準備していた闇魔法で収縮した影を更に圧縮する。


 そして、その影の球を前方に向けてダークボールを付与して射出した。


 「カァアアアアアアア!!!」

 「ガボッ!ガァア――――!」


 放たれるのとほぼ同時に影飲玉を破壊した影龍が急いで影の世界から脱出しようと“ゲート”を開く。


 そして圧縮と収縮が解除されて大爆発を引き起こし



 「ガァッ、ォォォォォォ…」


 ――――影龍の身体を巻き込んで絶命させた。



 「カァ、カァー…!」


 実は薙ぎ払い一発で危うく気絶させられていたかも知れないクロウが安堵して『竜の天敵』を取得していた幸運に今更気付いた。



 そして、これが彼が真っ向勝負で竜に勝てた初めての戦いである。

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