第31話 対立
ワイバーン達の平均ステ
レッサーワイバーン
HP:450
MP:200
筋力:230
魔力:155
敏捷:300
防御:160
知力:90
精神力:120
ワイバーン
HP:555
MP:305
筋力:320
魔力:310
敏捷:340
防御:210
知力:115
精神力:130
ビッグワイバーン
HP:675
MP:600
筋力:420
魔力:510
敏捷:425
防御:340
知力:170
精神力:140
………やばいな。作戦会議の日から3日しか経ってないのにもう意識が保たない…。
「く…そ…麻痺ネズミなら、いけるか?」
「い、や駄目だ。少なくとも、麻痺矢をこんな事には使えねえ…クソがぁ…!動物の血、なら…血染持ってんだ…家畜の吸血鬼化くらい、制御できる、はず…ああ!クソ!」
「2日、せめて2日だけでも保ってくれ…」
「ハァ…ハァ…や、ば…これマジで…死ぬ…」
「一口、だけ…一口だけなら…!」
顔を青くし、息も絶え絶えでレイアンはふらつきながら無意識に家畜小屋の方に向かう。
「もう、吸うしかねえ…一口飲めたら、もう我慢できる…弱体化してから一回も飲めてねえんだ…ちょっとくらい、いいじゃねえか…ぁぁ…そうだ、家畜一頭分くらい飲んでも別にいいだろ…?だって、食事、だし…別に人間から吸ってる訳でも、ない…」
言い訳のようにブツブツと呟きながら歩く姿はまるでゾンビのようだ。
「あァ?……なんだァ?アイツ…フラフラとォ…あっちなんか家畜小屋しか、ない…!」
「あと、少し…これで、血が、飲め…」
…?
「<ハウリング>――――ガァアオオオオオオ!!!」
「〜〜〜ッ!? いっ…ぎぃぁあああああああー!?!?がぁあああ!?うぐぅっ、うぉえ…う、がぁあああああ!?」
ハウリルの咆哮の特殊上位互換スキル、ハウリングが発動され、レイアンの脳を揺さぶる。
なんだこれ?!ふっざ、けんな!?あと少しだったのに!?クソがぁ!?
「おいテメェ、まさ「食事の邪魔を、するなぁ!」な!?」
「ストロングウィンドぉおおおお!!!」
「んにゃろぉ、ガァオオオオオオ!!!」
凶暴化したレイアンが強風をハウリルに叩きつける…が、命中から数秒後に放たれたハウリングに相殺されて時間稼ぎとしても不十分な結果だった。
今の内に、血を…!
「待てェ!テメェ、どっちの血を吸う気だァ!?」
「黙れええええ!オレの、邪魔をするなぁあ!」
風魔法のエアガンが複数、血を吸う事ができずマトモに回復できなかったなけなしのMPを使用して放たれる。
ついた!
家畜小屋の、扉!
バンッ!
「え?え?あ、レイアン…さん?どうかしまし「邪魔だ!」かふっ…!?」
「ハァー!ハァー!テメェ、マフラさんをどう…し…――――マフラさん!?」
何も考えずに吸血鬼特有の長く鋭い爪で羊の獣人の喉が引き裂かれ、鮮血が舞う。しかし、人の血は吸わず家畜の方に向かっていく。
牛の喉元に牙を突き立てる。
そして、4ヶ月振りに生き血を啜る。
味としては魔物と比べ物にならないほど美味いが特有の高揚感などはない。しかし、それでもオレの精神は満たされる。
「ぷはっ、最高…」
「テンメェエエエエ!マフラさんを、よくもォ!」
◇◆◇
「待て!誤解だ!」
「何が誤解だってんだァ!テメェはマフラさんをやりやがっただろうが!」
「クッソ!何言っても聞きやしねえ!こうなりゃ実力行使だ!」
殴り合う獣人と吸血鬼。
ただひたすらに狭い室内で変則的な攻撃を繰り出すハウリルから距離を取り、躱せる攻撃だけ避け続けていたレイアンだったが隙を突いて吹き飛ばされた木の扉を踏みつけて広い外に飛び出す。
マジでさぁ…本当ならもう少し速く血を吸えたからマフラさん?だっけ?の喉切り裂かなくてもすんだんだよねぇ。
「トルネード!トルネード!バーストブレイズ!」
「ガァオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
一撃目の竜巻はハウリルの肌を切り裂き、二撃目は上手く避けたが炸裂する極炎が竜巻に飲み込まれ合体して襲いかかる。
それをハウリングで勢いを弱めまたも回避してレイアンとの距離を詰めた。
ていうかぁ、今喧嘩してなかったら止血して他の獣人につきだして治療すれば助かると思うんですけどぉ?
「うっらァアアアア!」
「がはっ!? てか、さっきから言ってるがマジで勘違い、誤解なんだって!血を吸ったのは家畜からだろ?!」
獣人さながらの筋力で3m弱の高さまで跳び、回転しながら蹴りをレイアンの右頬に命中させる。
それに対し、再び焦ったように早口で弁明をするレイアンだったが
「俺が言ってんのはソッチじゃねェ!テメェはマフラさんを殺りやがっただろーがァ!」
「………は?」
「聞いてやがんのかァ!お・ま・え、が!マフラさんを「貴様、そんな事でオレの至福の時間を邪魔したのか?」…は?」
論点がズレていた為に意味をなさなかった。
そして、吸血鬼になったせいで崩壊しかけている人間としての理性がその言葉に吹き飛ばされて吸血鬼の価値観がでキレてしまう。
これが、対立の瞬間だった。
「………そんな、事だとォ?」
「あぁ、そんな事だ。その程度の事でオレの、唯一の楽しみと言ってもいい時間を台無しにしたのかと聞いている。もう一度だけ問おう。貴様はそんな事でオレの邪魔をしたのか?」
「……ああ、そうだよ。そして、今決めた。――――テメェを殺すってなァ!」
言葉と共に鍛え上げられた剛腕が振るわれる。
そして、家畜の血を吸い魔力のみ一部回復したレイアンが魔力不足故に一時的にoffにしていた物魔障壁を瞬時に展開し、攻撃を防いで魔法を構築する。
「あァ?……まあいい。おりゃア!」
「舐めるなよ、人間。―――バースト・フレア!!」
思っていた感触と違い、間抜けな声を出しながら回し蹴りを放つ。が、依然として防御力も枚数も足りない障壁を一枚割っただけに終わり、代わりに懐かしの火魔法で肌を焼かれる。
「あがァッ…! 舐めんなァアア!!!」
「ぐっ! ダークボール!」
「っらァア!」
痛みに呻き声をあげながらも耐えて回し蹴りを喰らわせる。障壁を破壊し、尚勢いを殺さずにレイアンの腕に命中する。
そして、デバフ型である闇魔法の数少ない攻撃魔法であるダークボールが放たれたがそこに合わせられた拳に粉砕された。
「ダークスピア!」
「!? チッ、クソがァ!」
地面から突如生えた濃い紫色の棘を超人的な反射神経を駆使して高く後方に跳躍し、無事回避した。
「はぁー、はぁー、…クソ、魔力がもう殆ど…」
「余所見してんじゃァねェ!」
「がぁあっ!?」
息切れして愚痴を言うレイアンに一瞬で距離を詰めたハウリルが鳩尾に突きを放つ。
再生しかけの障壁を掻き集めて防いだようだがあっさりと割られた。
「ぅ…、あ…かはっ、けほっけほ!………チッ。――――混合魔法、殲滅炎ッ!!!」
「っなァ!?身体強化、間に合えェッ――――!」
風魔法のウィンドフィールドと火魔法のバーニング・フレアの混合魔法、殲滅炎は強化された火力と“フィールド”と名の付く魔法特有の射程を誇る代わりにかなり魔力を食う。
至近距離で炎を浴びれば火傷どころでは済まないが、直前に使用された獣人などが使える特殊魔法の身体強化により両腕がR-15になるだけで終わった。
「ぅがァアアアアアアア!?グッぅうう…はぁーっ、はぁーっ、テンメェ…やりやがったなァァァ!」
「蝙蝠化!――――キィイイイッ!」
身体強化された剛腕が繰り出され、回避できない速度のそれを蝙蝠化する事で咆哮をあげながらゴリ押しで回避した。
3匹になった黒い蝙蝠がバラバラな位置に向かって飛行する、が、その際に逃げ切れずに捉えられた2匹が突きと蹴りを受けて白い煙になる。
「キィイッ!――――っらぁああああああー!!!」
「ぐあッ!がァ…ウオオオオオオッッッ!!!」
ハウリルの頭がある若干上で蝙蝠化を解除し、振り向きかけの背中に向けてパンチを放った。
しかし、ハウリルはギリギリで受け身を取り着地に隙ができた所で思い切り息を吸い込みハウリングを放った。
「いぎいっぁああ!?ぎゃああああ!?うぐ…クソっ、がぁああああーー!!!」
「んなへなちょこパンチ食らうかよォッ―――!」
「ごはあっ!? ――――ファイヤ・フィールド!」
「うがァアアアアアアアアアアアア!?!?」
視界も確保できずに放ったパンチ…ハウリル曰くへなちょこパンチだが簡単に少し横にジャンプするだけで避け、無駄の無い動きで繰り出されたパンチは逆に諸に顔面に当たる。
が、レイアンが同時に準備していた火魔法で全身を焼く。
「あ゛あ゛あ゛あ゛、はぁーっ、はあーっ、すぅーっ、―――チッ。」
「クソ、がよォ、無駄っに、高威力な火魔法、使いやがってェ…ぜぇー、はぁー…」
お互いボロッボロで精一杯強がりあって睨み合う。
「な、にしてるの…?」
「「!?」」
――――そこに、やってきた少女にすら気付かず。




