第29話 三ヶ月後
…いよいよか。
村人と仲良くしたのは打算半分本心半分で、だ。
一ヶ月後にはワイバーンが来る。
その事を、伝えなくては。
「みんな、これから言うことを落ち着いて聞いて欲しい。」
広場に村人が全員集まっている。
ちなみに言うとチェシャと一緒にわざとワイバーンの群れを遠巻きに眺めたりできる位置に行ったりもした。
「…ワイバーンの群れがこちらに向かっている。それも、数百匹の、だ。」
村人の表情が一気に曇る。ざわざわと、それぞれが別々の反応を示しているが俺の言うことはちゃんと信じてくれている様だ。
「数日前、普段通り狩りに行った時に、偶々近くにいるワイバーンの群れをみた。この感じだと、一ヶ月以内には獣人村を襲撃するだろう。」
一応観測してみて襲ってくるか調べたが、獣人村に着々と近付いて来ていた。
とても見逃してくれる雰囲気じゃない。
「……だから、一緒に戦って欲しい。武器は用意した。」
「おいおい、そりゃあ…クソ、マジなんだろーなァ…。そりゃあ良いとしてだ。――実際のところ、どうなんだよ。勝機はあんのかァ?俺達はよォ、確かに人間よか多少強えがそんだけだ。大量のワイバーン相手に生き延びれる自信はねえぜ?」
コイツは…ああ、村で1番強いグレーウルフの獣人だ。
名前は確かハウリルだな。
「…俺は吸血鬼だ。」
「!?………だから、なんだってんだよ。」
「最悪俺が…単騎で突っ込む。」
「それをしてなんになるっつってんだよ!?」
「ワイバーンどもの血を吸えば回復できる。…限度はあるが。だから、最悪飲み続けてれば勝てる可能性は0.1%くらいならある。」
「……はぁー…クソが。どっちみちやるしかねえんだ。―――俺達は、人間と違って仲間を裏切ったりはしない。だから、お前を見捨てられねんだ。…そう断言されたからには。」
うう、泣けること言ってくれるぜ。
―――――……………。
?………。
「やるって事で、いいな?」
「「「「「おう!!!」」」」」
「! ……じゃあ、早速作戦会議だ。」
◇◆◇
「決戦は、一ヶ月後、か。」
村人の平均ステータスは300だ。得意ステータスだけで平均をみたら550。
ハッキリ言って予想以上。
作戦会議とは言ったけど比較的弱い人が弓術系のスキル取得を目標に訓練するってのと近接得意なヤツラが剣術体術やるだけ。
実際にワイバーンどもが来たときは…なぁ〜。
だって獣人さん達実戦経験とか皆無だからな…。
「………血は吸わないって、言っちまったからな…」
ぶっちゃけ言うと俺死にかけだし…。
勝てる気がしないんだが?
「………?」
今、誰かいたか?
「………気の所為か。」
気配はないしね。
(比較的弱めのワイバーンは後衛の麻痺矢部隊、恐らく群れの後方にいるであろうワイバーンどもは戦闘特化の野郎共が。近接系の奴はどうしようもない…か?う〜む。いや、動物の種類にもよるだろうが…イケるやつも多分、いるだろう。)
「はぁ〜、砂糖食べたい」
でも血しか消化できないから無理やんだよなぁ〜。
ちくせう…
「お?そろそろ夕方か。チェシャの家に帰るかの。」
「………やっぱ、血は吸うのかァ。――――こりゃあ、騙したって捉えられてもしょうがねえよなァ」




