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第24話 下等竜の下剋上



 ぷるぷる。ぷるぷる。


 プルーが城のまどまで身体を震わせながら窓際まできて、騒がしい外を不安そうに見つめる。


 「ガオオオオオオオオ!!!!!」

 「ストロングウィンド!!!!!」

 「「「ギャオオオオ!!!」」」


 プルーの視界の先では、

 ムートのブレスとレイアンのストロングウィンドで大量のレッサーワイバーンを吹き飛ばし、時間を稼いでいた。



 ◇◆◇ 数十分前






 南の森には本編には出てこなかったが千年樹が存在する。そして、そこには数百匹のワイバーンが生息していた。


 ワイバーンにも群れがある。

 5つある群れの中ではレッドワイバーンの率いるもの、ブルーワイバーンの率いるもの、イエローワイバーンの率いるものが代表的だ。


 ほか2つはできたばかりのものでヒカク長生きしたワイバーンが率いている。


 そして、過激派の下等赤竜組だが実力主義のその群れに運悪くブレスも吐けないほど魔力のない弱い弱いレッサーベビーワイバーンが生まれてしまった。


 その事実に不満を持ち、更に逃げ出したヤツに怒り狂ったレッドワイバーンは必死に居場所を探して現在は地竜になって霧の森の支配者の下に居ることが分かり、すぐさま千年樹に生息するワイバーン全員で挑んだのだ。


 そして、現在に至る。



 「はぁっ!はぁっ!クソ!きりがない!?どんだけいんだよぉっ!?」

 「グルォオオオン(大地の加護)!」

 「「「ギャオオオオオオ!?!?」」」


 鋭い棘のような姿を象る大地がそれぞれの個体を狙って高速で垂直に伸び、次の瞬間には鮮血が舞った。


 数十匹の捨て駒扱いなレッサーベビーワイバーンが肉盾にされ、抵抗叶わず死んだ。


 「ブレイズアロー(極炎の矢)!!!!!」

 「「ギャオオオオオオ!?!?」」


 今度も弱い個体を死なせて突き進んで行く。

 躊躇いが欠片もないそれは徐々に強い個体が溢れ、押し返せずに城に進んでいた。


 「クロウ!頼む!!!」

 「カァアアアーーー!!!!!」


 自信満々に影から現れ、レッサーベビーワイバーンを殲滅し始めたが――――。


 「カァー、カァー、………カァー」


 何十匹か殲滅した所で力尽きて影に潜って逃げた。


 「クソ!こんな時原作でレイアンが使ってた技が使えれば!」


 嘆きながらひたすらレッサーベビーワイバーン達を殲滅していく二人。バッティは念の為プルーと一緒にいる。


 「ガオオオオオ!」

 「「ギャオオオ!?」」


 ムートがクレイガンで数匹のレッサーベビーワイバーンを吹き飛ばした。


 ◇◆◇



 二時間後、そこには全身傷だらけで鱗をいくつか剥がされたムートと傷は再生するものの服が治らなくて顔を真っ赤にしているレイアンの姿があった。


 ――――勿論、大量のワイバーンと共に。



 「はあっ!はあっ!フーッ!…ベビーワイバーンどもは、無事殲滅できたな。」

 「グルルルゥ…」


 今も絶え間なくレッサーワイバーンに襲われている。

 段々とレイアンですら再生が追いつかなくなり、ムートに至ってはとんでもなくR−15である。


 そして、城まであと数百メートル程度の距離しかなかった。

 補足だがこの部隊はレッドワイバーンが率いている。


 「攻撃するのはいいけど服破るのやめてよぉお!?」


 悲痛な叫びも虚しくレッサーワイバーン達は容赦なく炎ブレスを一斉放射した。

 ムートはまだしもレイアンは大火傷で死にかけだ。


 「ぁああがああああー!?」


 (これは、勝てない)


 殲滅もできない。ムートと逃げるのが精一杯…か。

 ムートは最悪全回復できるから囮になって貰うしかない。

 ここまで追い詰められたのは初めてだ。

 再生能力が力技に負けるなんて、な。



 「トルネードぉおおおお!!!!!」

 「「「ギャオオオオオオ!?」」」



 今の一撃で結構削れた。

 …が、すぐにさっきよりちょっと強いのが押し寄せてくる。


 「ガオオオオオオオオ(マルチ・クレイガン)!」

 「「ギャオオオッッッ!?」」


 やば―――


 ドッゴォォォオオオン!!!


 「………かふっ。」


 最後の最後で特大サイズのブレスを放たれた。

 油断してたのもあって直撃だ。



 (や、ばい。息できない…?血が、溢れる…。止血、は可能。火傷は…治りにくい。身体は…歪だけど上半身と下半身が真っ二つだ。右手首が、潰れてる。止血、止血!…クソが、MP、殆どなくなった。)


 ………拙い。死ぬ。



 ――死ぬ、避けられない、のか?


 死にたくない…『誰か、助けて』…


 ―――いや、だ。


 ぃ…しき、が…


 ――――もう、いやだ。


 しに、たく…な…



 ――――……………。



















 「ぷるぷるぅ!」

 「――――はぁッッッ!」


 強く、深く呼吸する。


 「プルー、か。………ありがとう。」

 「ぷるぷるぅ♪」


 右手で、優しくプルーの頭?を撫でる。

 可愛いやつだ。


 「…ぁ。」

 「ぷる?――ぷるぷるぅっ!?」


 レッドワイバーン。

 赤く、最早竜と言っても過言ではないほど強く、大きな姿に慄きながらも、プルーを咥えているのを確認した。


 「ぅ…ぁ…、」


 俺の中では竜もワイバーンもトラウマだ。

 声が上手く出せない。


 「く…そ…」

 「ゴルルルゥオオオオ!」


 業火が俺の全身を焼き、必死で空を飛んで逃げた。

 逃げて、逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、両翼が燃え尽きた。

 着地の時に腕の骨を折った。再生能力が効果をあまり成していない。どうやら本当に限界のようだ。それでも、走った。走って走って、走り疲れて意識を手放す。




 「――――?」

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