第16話 日常を噛み締めて
労働のない、爽やかな朝。
触り心地最高な親友の面々。
5日間の地獄が終わりを告げ、綺麗な朝日が…
「…改めて景色悪いな。」
……見えなかった。
小鳥のさえずりなんか聞こえるかバーカ。
むしろ死を呼ぶ不幸の鳥の鳴き声しか聞こえんわ。
霧のせいで暗いしよぉ。
「う〜ん、暇だな。みんな集合っ!!!」
バッティが鼻歌歌いなかまらやってくる。
クロウが俺の影から顔を出してこてんって首を傾げる。
プルーがぽよんっ、てジャンプしてる。
「鬼ごっこしよ?」
「「「???」」」
おっと、いくら頭のいいもふもふでも鬼ごっこはわからんか。
いいだろう!説明してやる!
「えっとね、この中から鬼を一人決めて他は逃げるのよ。鬼が逃げる側をタッチしたらタッチされた側も鬼になるの。スキルも飛行も魔法もありだから頑張ろう!逃げていいのは霧の森!」
「キィッ!」「カァー!」「ぷるぷる!」
「じゃあ…じゃんけん無理だな。うん。ルーレットで。」
鬼はまさかのバッティ。…これ、クロウ捕まえるの無理じゃね?って?影魔法のみ禁止だから!
「じゃあ30秒待ってね!よーい始め!!!」
即背中の蝙蝠翼に魔力を流し、飛行補助をonにして飛ぶ。
「うおおおおおおお!」
ひゃっはぁああああー!!!
主だからって手加減する訳ねえだろおおおお!?!?
◇◆◇ 30秒経過
…そろそろ、はじま…?
「今、誰かいた…?」
……………ガサッ
「ん?…ぎゃあああ!?でたぁああ!?」
「キィイイイイ♪」
なんでこうなる!?
やべえめっちゃ早いよ!?
「う?…お前さてはバフ自分に使ってるなぁあ!?」
「キィッ!」
嫌だ嫌だ嫌だ!死にたくないよ!なんで!?なんでよりにもよって俺が最初なんだ!?
「ぎゃああああ!?…あ。」
「キィッ♪」
「………いや、見逃しt「キィーイ?」…あん。」
◇◆◇ 鬼一人増加
「でてこいおらぁああ!道連れにしてやるぅうう!!」
森の中高速で動き回る男が一人。
「カ、カァー…!」
その近くに探知結界に引っ掛ってやべえ殺されるって思ってる赤い首輪をつけた鴉が木の上から主人を見下ろしていた。
幸いにもゴキブリみたいな動きで下ばっか見てるせいで気付かれていない。
「ん?なんだ…ふむ。そ・こ・だああああ!」
「カァー!?!?」
一瞬で間合いを詰められクロウは悲鳴をあげて翼を羽ばたかせ上空に飛ぶ。
しかし負けず劣らず追いかけるレイアン。
「カァー!カァカァー!カァー!」
「逃げられると思うなクロウ!主人に勝てる眷属など存在しないのだぁー!!!ふふふ、ふはははは捕まえた暁にはテメエのもふもふをもふっぞごらああ!」
「カァー…!?カァー、カ「つーかまーえたー♪」カァー…カァアーーーー!?」
◇◆◇ 鬼一人増加+3時間経過
「見つからねえええ!?」
「キィイイイイー!?」
「カァアーーー!!!」
プルーはちっちゃい。
しかも身体が物理的に柔らかい上に変色も可能。
隠密、気配察知、気配隠蔽も取得しているだけでなく強力になった酸を使って溶かした物は再現可能。
ぶっちゃけると鬼は負け確定でも逃げは怪物並みのチート生物である。
「まさかプルーにこんな才能があったとは…よくよく考えたら斥候向きだな。」
「キィッ。」「カァー。」
永続魔法化もさせたのにまだ隠密、気配隠蔽に相殺されているらしい。
「う〜む。こりゃあ…手当たり次第だおめえら行くゾォ!ひゃっはぁああああああ!!!」
「キィッキィイイイイ!!!」
「カァアアーーー!!!」
どんどん言動がチンピラ化していく吸血鬼組。
そして結局最後までプルーは見つからず。
秘密にしたプルーだが実は最初からレイアンの首元に乗っかって寝ていたのは内緒だ。




