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Ⅲ 戦いの後



 「!……チィッ、痛いし重いし魔力はないし…ていうか軽く放った攻撃で骨3本も折ってくるとかあの吸血鬼何者なのよ…」


 心底疲れ切った表情で氷柱を伸ばしては消してを繰り返すミィリス。バッティのバフで一本分折れる骨の数が増えたのは言うまでもない。


 「ぅぐっ…ハッ!?み、ミィリスさんアイシャは!?」

 「るっさいわねえ!周りをよく見なさいよ!」

 「良かったぁ…大丈夫だったん…ぎぃっ!?」


 1つ向こう側の見える穴があき、全身に決して浅くはない傷が大量にできて凍りつかなければ失血死していた状態で無理に動いたせいでジークは痛みに呻く。


 「そこのグノス、彼はまだ助かるかもだけど、アイシャちゃん、駄目かもしれないわよ。」

 「えっ…?」

 「もうとっくに死んでても可笑しくないくらい吸血されてるし全身穴ぼこだらけよ?当たり前じゃない。貴方何見て大丈夫だと思ったのかわかる?荒い息遣いが今も聞こえてるからよね?」

 「………ぁ」


 顔面蒼白なジークを他所に意外とミィリスは余裕そうだ。恐らくこの移動速度なら間に合うと踏んでいるのだろう。魔法学園側もアイシャにならエクス・ハイポーションだとしても間違いなく使う。


 「まあ、安心なさい。私の速度なら…――行ける。」

 「!…ありがとう、ございます…!!」


 ◇◆◇



 予定通り二人が死ぬ前に魔法学園に到着し、すぐさま保健室に駆ける。

 エクス・ハイヒール・ポーションにより無事一命を取り留め、ジークも多少傷跡は残ったが完治した。

 冒険者になって活躍したら簡単に治せる部類なので安心である。


 「良かった…本当に、良かった…!ミィリス先輩、本当に、本当にありがとうございます!」

 「もう!わかったからどっか行きなさいよ鬱陶しい!うるさいのよあんた!」

 「うっ…すみません…」


 保健室で騒ぐのは小学生でも分かるものだ。

 …まあ、事態が事態なので誰も責めないとは思うが。


 数日後にはアイシャ、グノス共に普通に学園に通っている。


 ◇◆◇



 一方、アースガルド王城にて。


 「なに!?『凍結の魔女』ミィリスに『癒水(ゆすい)の聖女』アイシャ、『鬼神童』グノスに『英雄』ジークが霧の森に突如現れた吸血鬼に敗北した!?」

 「はい、吸血鬼もかなり追い詰めた様ですが、吸血鬼の眷属の支援もあり決着付かずといった所です。」

 「もう嫌じゃよわし…胃が痛い…」

 「俺も…こほん、私もです陛下。」

 「別に取り繕わんでもいいわ…はあ〜…。」


 頭とお腹を擦っている彼等…宰相と国王の姿は誰にも見られなかった。

 なにせメンツがメンツなのである。

 それを相手に生き延び、更にはどちらかと言えば傷的には英雄パーティーのほうが酷いのだ。


 当然また面倒事が増える。

 ご愁傷様だ。

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