Ⅱ 霧の森の調査
忘れてたお詫びの3話同時投稿
俺はジーク、こっちは幼馴染みのアイシャ。
んで、左に座っているのが決闘の後正気に戻ったグノスだ。どうやら決闘前の記憶は殆どないらしい。
そして、主席で合格したミィリス・クルスさん。
彼女が内のパーティーに入った。
凄いね。美人を前にしたら人って喋る事も目を合わせる事もできなくなるんだ。
役職は俺が前衛の攻めでグノスは前衛の盾役。
アイシャは回復兼水魔法の後衛。
ミィリスさんは超一流の氷魔法使いの後衛。
「うん。我ながら役職割り振りが完璧すぎる。」
偶々なんだけどね。
主席のミィリスさんの居て更に聖剣所持者である俺、範囲回復魔法に高位水魔法まで使えるアイシャに、貴族にしてかつて神童と言わしめたグノス。
しかも全員王都魔法学園の生徒。
最近荒れている上にマンティコア(新種の魔物)の存在まで確認された霧の森の調査に向かうには十分な人材だと思う。
「あの…ジーク、そろそろ時間だよ。」
「あぇ?アイシャか。わかった、ミィリスさん呼んでくるね!」
あ、相変わらず気配が読めないなぁ〜、あはは…。
グノスは既に霧の森前に到着してるみたいだね。
食堂からでてミィリスさんを探していると、アイシャにもう見つけたと念話で連絡があった。
「いつの間に念話なんか覚えたんだ…?」
その才能に軽く呆れながらも早速進行方向を変えた。
◇◆◇
「ここが、霧の森か…」
「雰囲気あるなぁ。」
「…うん。」
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと入るわよ…ん?これ、探知結界?それも、かなり高度な…」
え?そんなのあるの?
全然気づかなかったんだけど。
「な、んか…見られてる?」
「そうね。この探知結界なら術者が森全域の様子を確認できても可笑しくはないわ。」
「「???」」
魔法に関してはそこまで分からないんだよなぁ…。
一応得意属性の魔法は全部使えるけど最近伸びが悪くなってきたし。
「?…この魔力、既視感が…これは…グノス、かしら?」
「へぁ?」
「貴方に掛けられた術式にある魔力の質からして…多分、この結界を作った何者かは貴方になんらかの魔法をかけているわ。具体的には分からないけどね。」
「そ、そうなんだ…」
やばい全然会話に入っていけない。
な、なんか喋らないと…!
「「グルルルゥー…」」
「「「!」」」
魔物の鳴き声だ!
俺はすぐさま背中の聖剣を引き抜き、構える。
アイシャもグノスも同様に。
「アイスショット。」
「「グルゥオンッ!?」」
「マルチ・アイスショット!」
「「ギャインッ!?」」
「アイスソード!」
…出番なくアースガルド王国最難関校の主席1人に獣型の魔物は殲滅された。
「嘘…」
「つ、強…」
「まじかー…流石主席だなぁ…」
「何してんのよ。さっさと進むわよ。…城がある。」
「「「!」」」
見上げるとかなりの大きさの城がある。
あれだけサイズもあるのにここまで近付かないと気付けないなんて…
◇◆◇
しばらく進むとブラッディベアに出会った。
どうやら俺にある通常自分しか見れないステータスと呼ばれる物を鑑定できる、万能鑑定なるスキルを使用して名称を確認した。
「ガオオオオオ!」
「チッ、また面倒なのが来たわね!…フローズン!」
間髪入れずにミィリスさんがブラッディベアの足元を凍せて動きを止めた。
俺はその隙に横薙ぎに聖剣を振るい、弱点属性での攻撃で大ダメージをあたえる。
「ウォーター・マルチ・バレット!」
「グルゥオオオオオ!?」
大量の水球に高速で全身に穴を空けられ、悲鳴と共にブラッディベアは動かなくなった。
本来苦戦するはずのブラッディベア戦だが、このブラッディベアはゲームにて出てくるモノの息子であり、ボスは2年前にレイアンが殺している為この個体は弱い。
その上本編ではハーレムルートでしかこの時点で味方にならないミィリス・クリスがいる為楽勝だった。
しかも、諜報部員が調査隊に紛れ込んだせいでマンティコアは討伐されている。
レイアン城までの障害はもう実質ないのだ。
「はぁ…余計な所で魔力使っちゃったわね。」
「そう、ですね。」
「俺出番なかったんだけど。」
実は俺もイメージしてるほどの事はできんかった。
女性陣逞し過ぎだろっ!?
「…着いたな。」
「やけに静かね。配下も従者もいないのかしら?」
「確かにこれだけの城の掃除は大変だな。俺んちの3倍は要りそうだぞ。」
「…その代わりに、強力な気配が5つある。」
「「「………」」」
黙るしかない。
恐らく、その中でも1人、人型の“それ”は一番の規格外だ。
ミィリスさんの2倍くらい存在感がある。…若干盛った。
「入るぞ。」
「そうね。モタモタしてても仕方ないわ!」
「「…うん。」」
不気味な音を立ててドアが開き、城を探索する。
…と言っても、最上階に居るのは嫌でも分からされている為階段を探すだけなのだけれどもね。
「…来たか。侵入者ども。」
「「「〜〜〜ッ!?」」」
豪華な装飾の施されたドアを勢いよく開け放つ…までは良かったが、瞬間、途轍もない強烈な殺気と威圧感が放たれる。
黒い髪、赤い目、整った顔立ち。血色は人間に近いがナニカ違う。
漂う覇気も人間とは到底思えず隠さず放っているあたり敵である事は間違いない。
そして、薄い赤色の毛をした蝙蝠や漆黒の鴉、場違い感凄まじい可愛らしいスライムまでいるがいずれも強者だ。
「お、前…何者だっ!」
「貴様らから話せ、と、言いたい所だが生憎既に素性は知っている。王都魔法学園の者だな。」
「貴方…その目、吸血鬼ね…?」
「ああ、そうだが?それがどうかしたのか。」
「な、なぜだ?何故俺を操った!吸血鬼!」
まじかよ…魔族の中でも希少な種族、吸血鬼だと?
しかも、レッサーヴァンパイアじゃない、正式な吸血鬼。勝てるのか…?
グノスの問いかけに一瞬間を開けて吸血鬼が答える。
「…貴様、何処かで見たことがあると思ったがあの時の子供か。そうだな、何故か…答えはただの遊びだな。」
「遊び…?遊びで俺を操ったのか!?ふざけるな!俺がどれだ、ぐぎゃっ!?」
「五月蝿いぞ。それに私は貴様如きを操った訳ではない。私はただ貴様の脳を多少、魔法で一時的に弄っただけだ。文句を言われるほどではないわ。」
叫ぶグノスが唐突に吹き飛ばされる。
(…風魔法、か?それとも無属性魔法か?)
「…もういい。さっさとかかってこい小娘が。会話の最中に高位魔法の準備とはなかなか良い性格をしているではないか。」
「チッ、バレてるって訳ね。…後悔させてやるわ。フローズンブリザード!!!」




