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第10話 調査隊が来た


 ――――!


 結界内…つまり、霧の森に侵入者が現れた。

 ゼノスが約束通り来なくなって3ヶ月。


 …遂に主人公チームの前座、学園の者達が来たか。

 よし、探知結界を通じて現場を覗き見るか。


‥‥‥‥


 「?なんだ、今何か変な感じしなかったか?」

 「う〜ん、気の所為だろ。」

 「もしかしたら魔物が近くに居るのかも知れんぞ。注意しろ!」

 「「へいへい」」


 はぁ〜良かったまだ俺の存在は知られてなさそうだな。

 てか、俺のお粗末な探知結界も見破れないとかコイツラ大丈夫か?呆気なく魔物にやられたりしないかな…。

 流石に元人間としてそれは申し訳ないんですけど…。


 「クェー」

 「うわぁっ!?…って、なんだよ。ただのドードーか。驚かせんなよな…」

 「や〜いビビリ〜」

 「気を抜くな仮にもFランクの魔物だ。いくら我々がCランクでも不意打ちをされては負けるやも知れんのだぞ。」

 「「へいへい」」


 結局ドードーは瞬殺され、再び奴等は歩みを進めた。


 「…マジで何もねえな。特に魔物にスタンピードの兆しがある訳でも苛立ってる訳でもない…」

 「もう疲れた…帰りたい…」

 「警戒がお粗末だぞ!この状態で同ランクの魔物に襲われたらどうする!?」

 「わかったわぁーった!全く…いくらC+の魔境とはいえそんなにホイホイでる訳…な、い…」

 「んぁ?どぅ…し…」

 「何者だっ!」

 「ゴォオオオァアアアアア!」

 「「「〜〜〜ッ!?」」」


 お?あれ、倒し損ねたマンティコアか。

 うるさいな。殺す…のは流石に不味いか。

 いきなり現れた吸血鬼がマンティコアを殺しても次はお前だって言われたんだと思うよな。

 しかも俺目つき悪いし。


 「!、!…」

 「ありゃあ…ナニモンだ…」

 「…近年目撃報告が多数寄せられた、未確認Bランク魔物…マンティコアだ、な。」

 「ガオオオオオ!」


 唸るマンティコアを見据え、獲物を素早く構える王都魔法学園の調査隊。


 「ガルルゥー!」

 「「「エアガン!!!」」」

 「ギャインッ!?」


 統制の取れたエアガンで飛び掛ってくるマンティコアを吹き飛ばす。

 短く悲鳴をあげるヤツだがそこまでのダメージはないらしい。

 てか、あったとしても治ってる。


 「打撲痕が…癒えた、だと!?」

 「再生能力か…厄介な…」

 「これ、逃げて報告したほうが良くね?」

 「ごもっとも…だが、そう易易と逃してはくれなさそうだ。」

 「グルオオオオン!」


 喋りながらも後退していると向こうの方もじりじりとにじり寄ってきている。

 このままではいつマンティコアが飽きて侵入者に飛び掛ってもおかしくはない。


 すると、この中で一番柄の悪そうなやる気なさ男がマンティコアを斬りつけ、即座にファイヤで傷口を燃やした。


 (???)


 「お?やりぃ♪予想通り再生止まったか♪」

 「はぁ〜、相変わらずの発想力だな。ジョン。」

 「ふむ…ヒュドラの特性が再生能力の秘訣か?」


 (!?)


 !?、!?!?、え…ゲーム知識持ってる俺でも分からなかった事平然と…!?

 いや、違う。コイツラの頭が偶々柔軟だっただけだ。

 うん。そう考える事にしよう。


 「ガ、ガオウ!?グルル…キャインッ!?」

 「ファイヤ!スラッシュ!ファイヤ!スラッシュ!」

 「エアカッター!ファイヤ!エアカッター!ファイヤ」

 「マルチエアカッター!バーニング!」

 「!、!…ギャ、ギャオオォォ………。」


 マンティコアは数分後には息絶えていた。

 嘘じゃん…あんなあっさり倒すの…?

 仮にも俺達(プレイヤー)が一番苦戦した相手だよ…?

 まさか、ゲームでもこの仕様だったり…は、ははは。


 「笑えねえよ、ちくしょうっ!!!俺の3時間を返せええええ!」


 玉座から転がり落ちて号泣する霧の森の支配者(笑)。

 これでいいのかよ…


‥‥‥‥


 「なに!?それは本当か!…本当、なんだろうな。まさか、村民の戯言ではなく本当にマンティコアが実在するとは…」

 「は、はい!国王陛下!」

 「面をあげよ…はぁ…まさか、高い再生能力を持ち毒牙のある蛇の尾、獅子の頭と胴体…そのような化け物がなぁ…しかし、それにしてもよく生き残って報告してくれた。大儀である!」

 「い、いえ…ですが、恐らく再生能力はヒュドラの特性かと…蛇の部分を見て思いついたのですがBランク魔物のヒュドラは傷口を焼けば再生が止まります。同じ方法で打ち破った事も鑑みて…」

 「そうか…」


 調査隊の中で一番真面目なやつが国王と会話している。

 コイツ実は調査隊として潜り込んだ王家の諜報部員である。

 そこまで仕事はしていないのだが今回やっとそれらしい功績を残した。


 「『禁忌の魔女』ミネルヴァ、やつが動き出したのか」


 1人になった国王の漏らした嘆きは独り言である。

 何故かその背後にまだ1人、いたのだが。



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