第95話 対龍砲作成 海龍討伐 編 ②
遅くなりやした。
すんません。
「――――おーっしゃ、これくらいでいいかな。」
「やっとですか、ボス。」
「忍耐力ねえなぁ。」
「4時間も待たされたらそりゃあ飽きますよ」
「俺じゃないんだから寝たらいいのに」
「「「ボスが起きてるのに部下である俺たちが寝れる訳ないじゃないですか!!!」」」
「そ、そう?」
クラーケン討伐後、解体作業を終えた俺たちはそのままの足で4時間ほど移動した海で碇を下ろす。
「餌の準備…は終わったみたいだな。」
「「「「押忍!」」」」
「うん、なら早速撒くぞ。」
はぁ〜、何分くらい待たされるのかね。
◇◆◇ 10秒後
ザバァーンッ!!!
「へぁ?」
「ルォオオオオン!」
うっそだろ体感5秒しか経ってねえぞ!?
どんだけ鼻がいいんだよ!?
これこそが魔海域で血を垂らしてはならない理由。
空腹の海龍は凄まじい嗅覚でどこまでも追跡する。
捻れ曲がった禍々しい二本の角。
水竜の何倍の硬度を誇る鱗。
水龍の何倍もの細みな巨体。
龍のギラついた眼光がレイアンを睨みつける。
それを前にした、この鬼人は…
「おいおい…かっけええええええ!?」
な、何者だ!?
カッコ良すぎる!
想像の5倍くらいカッケェ!
ヤバい!兎に角やばい!
今の状態で邪神を相手にするのよりもヤバい!
……本気で、中二心を燻られていた。
「え?え?眷属にしたい!カイゼル飼っていい!?」
「ダメです、こんなデッカイの餌を用意できないでしょうが!」
「えーやだやだー!」
若干幼児退行しながら。
クソ!カイゼルのケチめ!
海龍の一頭や二頭、飼ってもいいだろうが!!!
「チッ、仕方ねえ。殺して燻製にするか。」
「うわっ、急に素に戻るじゃないですかボス。」
「いや、まあな。」
飾るしかねえ。
それくらいしかやれることがない。
「はーい、大砲…ってえええええええ!!!」
「「「大砲、撃てえええええええ!!!」」」
ヒューン、ドッガァァァン!!!
「ルァオオオオンッ!?」
ふふ、何故か無抵抗でやられた海龍さんやい。
この世は、弱肉強食なんだ。
悪く思うなよ!
「混合火炎魔法、エクスプロード・ファイヤボール」
「ルオオオオオッ!?」
てか、なんで防戦一方なんだ?
水流ブレスでも吐けばいいのに。
「ルァ…ルァアオオオオンッ!!!」
「言ったそばから…風壁」
そんなに使ってない風魔法。
しかし対水魔法になるとこれが中々優秀なのである。
「はぁ…相殺かよ、面倒くせえ。大人しく燻製になりやがれッ、グラビティ・ビームッッッ!」
「ルァアアアアアアアアアアッ!」
重力魔法が海龍の水流ブレスによってグチャグチャにされる。
うそん!?
お前バカかよ!?
なんで必殺技(自称)を巻き込んでんだよ!?
「頭イカれてんじゃねえのか!?」
「ガルァァァァァァッ!」
「クソがぁっ!つむじかぜええ!」
「グルルオォンッ!?」
ぜぇ…はぁ…へへっ、切り裂いていくぅ。
テメェがどれだけ風魔法に弱いかは思い知った。
ならさぁ…範囲継続攻撃判定の風属性魔法を撃てば勝てるよな?
「へへ…エアリアル・バレットォォ!」
「ルァオオオオ!?」
もう…終わりにしようか。
キミ、意外と打たれ弱いというか…いや、元々弱ってたね?
「エア・カッター」
「ルァァ…」
っしゃ!
勝った!
このクソ雑魚がよぉ!
「本当に雑魚い…というか、あれ?付けた覚えない傷があるな…しかも、かなり深い」
あれ?
俺の予想もしかして当たってた?
「それにしても、魔海域どころか世界中の海で海龍に敵う者なんて居ないはずだが…どうなってるんだ?」
………。
あ、今の俺は頭良いモードです。(その発言が既に頭悪い)
予想その1:この個体は幼体であり、故に親龍が餌取りに行っている間に水竜にボコされた。
これはかなり確率は高いが…如何せん、成体の可能性が高いためにぶち壊される。何せ成体とサイズがほぼ変わらないのだ。
予想その2:同種同士で争いあった結果深手を負った。
現状1番有り得そうなもの。しかし、海龍の鉤爪は鋭いが太さがないため傷と一致しない。
抉り方の問題の可能性もあるのでやはりこれか?
予想その3:この海龍が海底遺跡産の場合。
………ノーコメント。
◇◆◇ それから一週間後
「……材料集め、終わらない」
海龍。
コイツ自体は風魔法使ってたら意外と簡単に倒せる。
クラーケン。
テメェは駄目だ。
弱点という弱点がない上しぶと過ぎる。
両方同時狩り。
テメェだけは絶対に許さない。
繊細なMP管理に兎に角時間がかかる。
それだけじゃねえ、海龍も怪我をしている奴はほとんどいないせいでめっちゃ時間かかる。
クソがぁ…ふざけやがってぇ…!
「必ず…一ヶ月以内に終わらせてやるぅっ…!」
「ボス、ふざけた事言ってないでいい加減に一旦帰りますよ。」
「アッ、そうですネ。」
なんか最近カイゼルが怖い…?




